対象物 本郷の河岸段丘 ほんごうのかがんだんきゅう
  場所 高山市上宝(かみたから)町本郷
   概 要
   飛騨山脈から流れ出す高原川の流域においては河岸段丘が各所に残されているが、谷幅の比較的広い高山市上宝町長倉付近から飛騨市神岡町船津付近までの区間では何段にもわたる明瞭な段丘地形が確認できる。とりわけ上宝町本郷周辺では5段に及ぶ段丘面が見られ、それらは高い方から本郷面、宮原面、中越(なかこせ)面、坂巻面、見座(みざ)面と呼ばれている。これらのうち本郷面が最も広い段丘面をなし、そこに集落や旧上宝村役場(現高山市上宝支所)などの公共施設が多く集まり、この地域の生活の中心となっている。これらの段丘は、焼岳火山群から供給された火山泥流堆積物などの堆積物で構成されていたり、それらを削って作られており、上流での焼岳火山群の活動と強く関連して形成されている。とりわけこの火山活動のうち約3万年前にあった白谷山火山の活動により長野県側を流れる梓川が現在のように松本方面へ流路を取るようになり、それまでは当時の梓川は高原川上流の平湯川へと流れ込んでおり、現在よりも高原川の流量がかなり多ったと考えられ、それが高原川沿いに多くの段丘を形成していることに強く関与していると考えられている。
 
上宝町本郷付近の河岸段丘
(撮影:鹿野勘次)
 
  ジオ点描
【坂下の河岸段丘と共通】 河岸段丘が形成される要因については、氷河期と間氷期において海水面が変化することで河口の位置が変化し、その上流域において浸食場と堆積場が変化すること、氷河期と間氷期において山間部での土砂供給量に差があることなどの汎世界的な要因のほかに、個別の河川沿いにおける要因があるとされている。ただし、それらと複数段の形成をきちんと説明できているわけではない。
 
  文 献 磯  望・山川克己・米澤 宏・松原敏子(1980)岐阜県高原川流域における土石流による岩屑供給と沖積錐の成長速度.地理学評論,53巻,699-720頁.
焼岳火山群
飛騨山脈の南部にあって、焼岳火山を主峰とする複数の火山体の集まりであり、乗鞍火山帯の中で最近1万年間では最も活発な活動を続けている。形成時期により約12万~7万年前の旧期焼岳火山群と約3万年前以降の新期焼岳火山群に大別され、前者には岩坪山・大棚火山、割谷山火山が、後者には白谷山火山、アカンダナ火山、焼岳火山がそれぞれ該当する。全体に斜長石と角閃石の斑晶が目立つ安山岩質~デイサイト質の溶岩ドーム、厚い溶岩流、泥流堆積物、火砕流堆積物からなり、火砕流堆積物はすべて溶岩ドームの破壊によってできたblock and ash flow堆積物であり、激しい爆発的な噴火活動をほとんど行なっていない。
白谷山火山
焼岳火山群の新期焼岳火山群に属する火山体で、焼岳(標高2455m)の南西方2.5kmほどにある白谷山(標高2188m)およびその周辺を噴出中心とする火山である。溶岩ドームとその周辺山麓の土石流堆積物や火砕流堆積物からなる。



地質年代