断層名 牧ヶ洞断層(概説) まきがほらだんそう
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場所 高山市清見(きよみ)町牧ヶ洞
概要    高山市上切町(かみぎりちょう)付近から清見(きよみ)町牧ヶ洞,大倉滝北方,松ノ木峠を経て、荘川町六厩(むまい)南方の軽岡峠付近に達し、全体として北東~南西方向に延びる長さ約25kmの右横ずれ活断層である。ほぼ全域にわたって尾根や谷の系統的な右ずれ屈曲地形が認められ、ほぼ中央部に位置する川上川支谷の大倉谷付近やその西方の小鳥(おどり)川支谷の水洞では最大でも700~900mに達する右屈曲を示す。中部縦貫自動車道の高山西ICの西方にある岐阜県畜産研究所付近では、開析された扇状地斜面の南端付近を断層が通り、その南東側が隆起したことで比高20~30mの小高い山列として撓曲崖が形成されている。その南西延長上では東海北陸自動車道の建設工事で断層が露出したとの報告がある。大倉滝北方においても大きく右ずれ屈曲した大倉谷の谷底を埋積する堆積物が南東側で高まりつつ、右横ずれしたことを示す変位地形が数百mにわたって残されている。ここで2001(平12)年に行われたトレンチ調査によれば,最新の活動時期は4,700年前以降300年前以前で,それ以前の活動は11,000年前から5,900年前までの間にあり、断層の活動間隔は3,600~4,300年と推定されている。それらと地形変位量から得られた平均変位速度は1,000年あたり70cm程度と見積もられており、活動度はB級(10cm~1m/1,000年)ということになる。
ジオ点描    飛騨古川付近から旧荘川村へかけての地域に分布する「国府(こくふ)断層帯」と呼ばれる断層群は、30年以内の地震発生確率が最大5%にも達して、かなり高いことで注目されている。それらのうち牧ヶ洞断層は、延長距離が最も長く、トレンチ調査など比較的詳しい活動履歴や活動度が明らかにされており、断層帯の中心をなしている断層と考えてよい。
文献
  • 岡田篤正・東郷正美・八木浩司・堤 浩之(2008)1:25,000都市圏活断層図 高山周辺の活断層「高山東部」「高山西部」「高山南西部」解説書.国土地理院技術資料D・1-No.519.
  • 写真 清見町牧ヶ洞の県畜産研究所でみられる牧ヶ洞断層南側の山列
    (撮影:中田裕一)
    写真 準備中
    撓曲
    軟らかい地層が厚く地表面を覆っている場合に、その下位にある基盤が断層によりずれても、そのずれが地表まで達せず、撓(たわ)むことでそれを反映させる現象である。
    大倉滝
    せせらぎ街道は高山と郡上八幡を結ぶ全長約70kmにわたる道路の愛称であり、分水嶺の西ウレ峠より北側の川上(かわかみ)川沿いに渓谷が形成され、紅葉狩りの名所としても知られることから、そこに限って呼ぶことのほうが多い。そのほぼ全域が濃飛流紋岩の溶結凝灰岩と花崗閃緑斑岩Ⅱからなり、とりわけ清見町坂下にある「森林公園」では、川上川に流れ込む支谷が堅固な岩石を削って流れ下り、大倉滝(落差約30m)を中心に“百滝”といわれるほど多くの滝と奇岩からなる渓流景勝地になっている。



    地質年代