名  称 大隅石 おおすみせき
  場 所 飛騨市河合町月ヶ瀬  形成時期 第四紀更新世
(約200万年前?)
   概 要
   鹿児島県の大隅半島にある垂水(たるみず)市咲花平(さっかびら)で第二次大戦前に発見されていたが、1953(昭28)年に世界で初めて論文発表され、1956(昭31)年に正式に新種記載され、原産地に因んで命名された鉱物である。濃青色~黒色を呈するガラス光沢のある六角短柱状結晶をなし、泥岩を起源とする熱変成岩に見られる菫青石によく似た色合いを示し、当初は菫青石と間違われていた。K、Na、Ca、Fe、Mg、Alを含む珪酸塩鉱物で、元素の置換などにより組成の異なる20種類を越える大隅石グループを形成している。日本で発見命名され、美しい紫色を呈することで知られる杉石(すぎせき)もこの仲間である。高温低圧条件下で形成されたと考えられており、通常は数mm程度の大きさで、おもに流紋岩やデイサイトなどの珪長質火山岩中の孔隙や石基に出現する。岐阜県においては飛騨市河合町月ヶ瀬において新鮮なデイサイト(時代不明)の中の空隙に晶出しており、最大で6mmに達し、我が国有数の大きさである。
 
飛騨市河合町月ヶ瀬に分布するデイサイト中に含まれる大隅石(結晶の大きさは約3mm)
(撮影:棚瀬充史)
 
  ジオ点描
   大部分の鉱物は地球が作り出した無機化合物であり、理屈の上ではいろいろな元素の組み合わせにより無数の鉱物が存在しそうである。しかし、実際に地球の表面付近に存在する元素のうち体積にして約95%が酸素(O)と珪素(Si)であるため、それらが作る珪酸(SiO₂)に他の元素が結びついた珪酸塩化合物、すなわち珪酸塩鉱物が圧倒的多数を占めている。
 
  文 献 遠藤俊祐(2006)岐阜県月ヶ瀬産大隅石.地学研究,55巻,1号,21-25頁.
楢峠層
飛騨市河合町北西部および白川村北部の県境稜線部に飛騨帯構成岩類の飛騨変成岩類を覆って分布し、層厚300~400mで、おもに安山岩質ないしデイサイト質の溶岩からなり、同質の凝灰角礫岩をともなう。その岩相の類似性から、北陸層群の岩稲(いわいね)累層と呼ばれる地層群の仲間と考えられているが、詳細は不明である。なお、その東方にあたる飛騨市宮川町塩屋付近には、塩屋層と呼ばれる礫岩および凝灰岩からなる地層が限られた範囲で分布する。比較的若い時代の地層と考えられているようであるが、ここでは便宜的にここに含めて扱う。




地質年代
地質年代