化石名 貝形虫 かいけいちゅう
  地層名 吉城層   対象時代 デボン紀
    概 要
   淡水から海水までどの水域にも広く生息し、ほとんどの種が底生生活をする微化石である。古生代オルドビス紀前期(約5億年前)から生息しており、炭酸カルシウム(CaCO₃)からなる固い背甲(はいこう)が地層中に多く残されいる。多様性に富むことで古生代以降の地層の時代決定や対比を行う示準化石としても、過去の水域の環境の復元における示相化石としてもともに重要な役割を担っている。岐阜県地域では飛騨外縁帯構成岩類の吉城層から日本最古となるオルドビス紀を示すものが発見されたとして話題となったが、その後その化石はそれより若いデボン紀のものと考えられるようになっている。
 
長野市内のため池で採集された現生貝形虫Cypridopsis vidua(殻の長径は約0.6mm)  (山田 桂氏提供) 
  ジオ点描
   貝形虫は節足動物の甲殻類に属し、二枚貝のような炭酸カルシウムを多く含む固い背甲とミジンコに似た体部や付属肢をもつ体長0.5~1mmほどのきわめて小さな動物である。「カイミジンコ」とも呼ばれるが、ミジンコとは同じ甲殻類に属するが別の仲間(目)の動物である。発光生物としてよく知られるウミホタルは現生の貝形虫であり、かなり大きく3㎜ほどある。
 
  文 献  
示準化石
地質時代を特定できる化石のことで、標準化石ともいう。こうした化石となる条件には、個体数が多いこと、地理的な分布が広いこと、特定の形態をもった状態での生存期間が短いことなどが挙げられ、一般には同一系統内では分類単位が大きいほど特定できる時間の幅が長くなる。こうした化石が含まれることで、離れた地域の間で地層の対比と時間の同定が可能となり、「地層同定の法則」が成り立つ。
示相化石
すべての生物は環境に適応して生活していたはずであるから、すべての化石はその生息環境を示すが、それらの中で生息条件が限定されていること、現生種との関係から生息環境の推察が可能であること、現地性のものであることなどの条件を持ち、それが含まれる地層の堆積環境を明確に示す化石を指す。
飛騨外縁帯構成岩類
飛騨外縁帯は、飛騨帯の南側を取りまくように幅数~30kmほどで細長く分布する地質帯である。岐阜県地域では飛騨山脈の槍ヶ岳(標高3180m)付近から高山市の奥飛騨温泉郷、丹生川町北部~国府町地域、清見町楢谷(ならだに)、郡上市白鳥町石徹白(いとしろ)などに断片的に配列して露出している。そこを構成している岩石はかなり変化に富み、古生代に形成された非変成の砕屑岩類や火山岩類、結晶片岩などからなる変成岩類、超苦鉄質岩(U)から変化した蛇紋岩と呼ばれる岩石などである。これらの岩石は、飛騨帯構成岩類を一部に含めた当時の大陸(中朝地塊と呼ばれる)の東縁で形成された陸棚や浅海性の堆積物および火山砕屑物が中生代ジュラ紀中ごろまでに大規模な横ずれ運動をともなって飛騨帯構成岩類と接するようになり、その過程でもたらされた変成岩類や超苦鉄質岩を断片的にともなって形成されたと考えられている。ただし、飛騨外縁帯と飛騨帯との間には、富山県地域や新潟県地域などにおいて宇奈月帯あるいは蓮華帯と呼ばれる変成岩類で構成された地帯が分布しており、岐阜県地域においてもそれらとよく似た性質の岩石が断片的に分布するが、よくわかっていない点もあるため、ここではすべて飛騨外縁帯の構成岩類として扱う。
吉城層
奥飛騨温泉郷地域に分布する飛騨外縁帯構成岩類の一つで、福地地区のオソブ谷支谷一の谷最下流部において福地層の南側に帯状に分布する。層厚は約60mで、おもに流紋岩質な凝灰質砕屑岩および砕屑岩からなる。放散虫、スコレコドントと呼ばれる環形動物の顎内器官、海綿骨針の微化石を含む。当初、オルドビス紀を示す貝形虫の化石が発見されたとして日本最古の地層とされていたが、現時点ではそれより若く、福地層とほぼ同時代の堆積物として扱われており、それとは堆積環境の違い(深海・半深海成)を表わしていると考えられている。

地質年代
吉城層
奥飛騨温泉郷地域に分布する飛騨外縁帯構成岩類の一つで、福地地区のオソブ谷支谷一の谷最下流部において福地層の南側に帯状に分布する。層厚は約60mで、おもに流紋岩質な凝灰質砕屑岩および砕屑岩からなる。放散虫、スコレコドントと呼ばれる環形動物の顎内器官、海綿骨針の微化石を含む。当初、オルドビス紀を示す貝形虫の化石が発見されたとして日本最古の地層とされていたが、現時点ではそれより若く、福地層とほぼ同時代の堆積物として扱われており、それとは堆積環境の違い(深海・半深海成)を表わしていると考えられている。