化石名 木曽川化石林 きそがわかせきりん
  地層名 瑞浪層群
(美濃加茂市御門(みかど)町 木曽川河床)
 対象時代 新第三紀中新世前期
(約1900万年前)
   概 要
   生育していた状態のままで地層中に埋もれて散在している樹木の化石を「化石林」といい、水辺に生育していた森林が比較的短期間に土砂に埋もれたり、火山活動にともなう火山灰に埋もれたりしてできたものである。1994(平6)年夏の異常渇水により木曽川の水位が極端に低下したことで、太田橋下流の木曽川河床から合計425本の化石林が立ったままの状態で発見された。含まれている地層は瑞浪層群の中村累層で、樹径が1cmから1mほど、高さが最大で約50cmであり、その規模は日本でも最大級と考えられている。化石樹木のおもな種類は温暖な地域だけに生息するアオギリ科の仲間で、現在の日本には分布していない。確認された樹木の中での最高樹齢は112年で、全体で見ると樹齢20年以内の木が多いとされている。発見された化石林のうち木曽川右岸(北岸)の河原が「化石林公園」として整備され、地層中に埋まった自然な状態の化石林を見ることができる。ちなみに、この場所は“中山道の三大難所”の一つとされ、中山道が木曽川を渡る「太田の渡し」と呼ばれる場所にあたる。
 
1994年夏の異常活水時に木曽川南岸に出現した化石林
(撮影:鹿野勘次)
 
  ジオ点描
   化石林は地質時代の森林が直立してそのまま地層中に残されたものであり、生息していた場所にあった現地性の化石ということになる。これに対して化石の多くは生息していた場所から流されてきて堆積した異地性のものであり、その生息域から離れてしまうために古環境を推定するうえでは直接的な役割は果たせない。すなわち化石林は現地性のかなり有効な示相化石となる。
 
  文 献  
示相化石
すべての生物は環境に適応して生活していたはずであるから、すべての化石はその生息環境を示すが、それらの中で生息条件が限定されていること、現生種との関係から生息環境の推察が可能であること、現地性のものであることなどの条件を持ち、それが含まれる地層の堆積環境を明確に示す化石を指す。
中村累層
可児地域に分布する瑞浪層群のうち中部層を構成し、御嵩町・可児市・美濃加茂市南部に広く分布する。層厚は約120mで、礫岩や凝灰質砂岩・シルト岩互層からなる下部層と褐炭層をはさむ凝灰質砂岩・シルト岩からなる上部層とに分けられている。哺乳動物化石としてサイ、バク、シカなどが産出したことで知られており、湖沼性の貝類化石や寒冷性の植物化石も多く含まれる。御嵩亜炭鉱群はこの褐炭層を採掘していた。



地質年代
瑞浪層群
新第三紀の中新世に西南日本の古瀬戸内海と呼ばれる海に堆積した地層群の一つで、岐阜県の中濃地方から東濃地方へかけての可児・瑞浪・岩村の3地域に分かれて分布する。可児地域では下位から蜂屋累層、中村累層、平牧累層に、瑞浪地域では同じく土岐夾炭累層、本郷累層、明世累層、生俵累層に、岩村地域では同じく阿木累層、遠山累層にそれぞれ区分されている。これらは、大きくみると淡水域から汽水域、海域へと堆積環境が変化していったが、設楽層群などの他地域に分布する地層群に比べると浅海性の傾向がみられる。