化石名 コノドント
  地層名 一重ヶ根層  対象時代 オルドビス紀
   概 要
   古生代カンブリア紀から中生代三畳紀まで生存した海生の化石動物の何らかの器官を代表する部分化石とされ、その正体は長らく謎のままであった。発見された当初は魚の歯に似ていることから、ラテン語で「円錐状の歯」を意味するコノドントと命名された。主成分はリン酸カルシウム(Ca3(PO4)2)からなり、0.2~1mm程度の大きさで、円錐状の形をしたものや縦長の土台の上にとがった突起が並ぶものなどいろいろな形状を持つ。古生代のオルドビス紀から三畳紀までの約3億年の期間で形態が多様化するため、その期間で最も精度の高い示準化石として利用されている。岐阜県内においては日本最古の化石としてオルドビス紀後期を示すコノドントが飛騨外縁帯構成岩類の一重ヶ根層から見出されている。
 
一重ヶ根層中から産出したオルドビス紀のコノドント化石(写真内のスケールは0.1mm)
束田・小池(1997)のFig.4を転載:© 日本地質学会
 
  ジオ点描
   「円錐状の歯」の持ち主の全体を示す化石として、ヤツメウナギなどと類縁のクリダグナサスと呼ばれる細長い体をもつ原始的脊椎動物が1983(昭58)年にスコットランドで発見された。その口の奥まったところに規則正しく並んでいる「歯」が捕食や消化にかかわる器官の機能を果たしていたという考えが出され、それがコノドントの正体として有力な説となっている。
コノドント動物の復元画(体長は約4cmと推定され、コノドントが口の奥に「歯」のように並んでいる) (岐阜県博物館所蔵、画:小田 隆)
  文 献 束田和弘(1997)岐阜県上宝村一重ヶ根地域の古生界の層序と構造.地質学雑誌,103巻,658-668頁.
示準化石
地質時代を特定できる化石のことで、標準化石ともいう。こうした化石となる条件には、個体数が多いこと、地理的な分布が広いこと、特定の形態をもった状態での生存期間が短いことなどが挙げられ、一般には同一系統内では分類単位が大きいほど特定できる時間の幅が長くなる。こうした化石が含まれることで、離れた地域の間で地層の対比と時間の同定が可能となり、「地層同定の法則」が成り立つ。
飛騨外縁帯構成岩類
飛騨外縁帯は、飛騨帯の南側を取りまくように幅数~30kmほどで細長く分布する地質帯である。岐阜県地域では飛騨山脈の槍ヶ岳(標高3180m)付近から高山市の奥飛騨温泉郷、丹生川町北部~国府町地域、清見町楢谷(ならだに)、郡上市白鳥町石徹白(いとしろ)などに断片的に配列して露出している。そこを構成している岩石はかなり変化に富み、古生代に形成された非変成の砕屑岩類や火山岩類、結晶片岩などからなる変成岩類、超苦鉄質岩(U)から変化した蛇紋岩と呼ばれる岩石などである。これらの岩石は、飛騨帯構成岩類を一部に含めた当時の大陸(中朝地塊と呼ばれる)の東縁で形成された陸棚や浅海性の堆積物および火山砕屑物が中生代ジュラ紀中ごろまでに大規模な横ずれ運動をともなって飛騨帯構成岩類と接するようになり、その過程でもたらされた変成岩類や超苦鉄質岩を断片的にともなって形成されたと考えられている。ただし、飛騨外縁帯と飛騨帯との間には、富山県地域や新潟県地域などにおいて宇奈月帯あるいは蓮華帯と呼ばれる変成岩類で構成された地帯が分布しており、岐阜県地域においてもそれらとよく似た性質の岩石が断片的に分布するが、よくわかっていない点もあるため、ここではすべて飛騨外縁帯の構成岩類として扱う。

一重ヶ根層
奥飛騨温泉郷地域に分布する飛騨外縁帯構成岩類の一つで、一重ヶ根地区の岩坪谷下流部、その東方山腹、一法水(いっぽうすい)地区の東方山腹に分布する。層厚は500m以上で、おもに流紋岩質の凝灰岩、凝灰質砂岩および泥岩などからなる。シルル紀を示す三葉虫や放散虫の化石を含み、さらには現時点で日本最古の時期を示すコノドント化石(オルドビス紀後期)が発見されている。


地質年代
一重ヶ根層
奥飛騨温泉郷地域に分布する飛騨外縁帯構成岩類の一つで、一重ヶ根地区の岩坪谷下流部、その東方山腹、一法水(いっぽうすい)地区の東方山腹に分布する。層厚は500m以上で、おもに流紋岩質の凝灰岩、凝灰質砂岩および泥岩などからなる。シルル紀を示す三葉虫や放散虫の化石を含み、さらには現時点で日本最古の時期を示すコノドント化石(オルドビス紀後期)が発見されている。