化石名 ウソシジミ・オオキララガイ・ホタテガイ
  地層名 瑞浪層群明世累層
(瑞浪市松ヶ瀬町 土岐川河川敷)
 対象時代 新第三紀中新世
   概 要
   瑞浪層群の明世累層には多種類の二枚貝化石がかなり豊富に含まれており、それらは分布域の各所で確認できるが、とりわけ瑞浪市松ヶ瀬町の土岐川河川敷は瑞浪化石博物館の野外学習地として同館の受付で立入届を提出すれば採集・観察ができる。そこには二枚貝化石以外にもビカリアなどの巻貝、サメの歯、球顆、葉などのいろいろな化石が含まれている。比較的多く含まれている二枚貝化石についても見つけやすい種類をあげると、殻径が1~2cmと小型で薄く、表面に薄い横すじ(成長輪脈)があるウソシジミ、殻径が3~5cmとやや大型で、表面に網目模様があり、貝殻の内面に真珠光沢があり輝いているオオキララガイ、丸みのある扇型をして殻径が5~8cmと大型で、クリーム色で表面に10本ほどの放射状の縦すじがあるホタテガイなどである。
 
瑞浪市松ヶ瀬町の土岐川河川敷における明世累層から産出したウソシジミ群集
(撮影:鹿野勘次)
 
  ジオ点描
   シジミ、ハマグリ、ホタテガイなどと言われると現在の食卓にのぼる貝類として馴染みがある。それらに“ウソ”とか“エゾ”とかが付いて呼ばれても、おおよそ食卓上に並ぶ貝類と同じ仲間であろうし、実物もそれらに近い。中生代までの貝類とは違って、やはり中新世ぐらいになると姿かたちは現代とそれほど異なるようなことはないようである。おそらくそれらは食用としても美味であったのであろう。
瑞浪市松ヶ瀬町の土岐川河川敷における明世累層から産出したオオキララガイの内部(真珠光沢)
(撮影:鹿野勘次)
 
  文 献
瑞浪市化石博物館
瑞浪市周辺に分布する瑞浪層群から産出した化石を中心に収蔵・展示・研究を行っている施設である。1971(昭46)年に始まった中央自動車道の建設工事にともなって瑞浪層群が大規模に掘削され、保存のよい貴重な化石が大量に産出したことで、それらを整理して展示する施設として設置された。収蔵・展示だけでなく、化石に関する優れた研究をすすめ、成果を公表している機関として貴重な役割を果たしている。
ビカリア
殻長10cmほどの円錐形の巻貝で、殻の表面には太い螺旋状の螺肋や角状突起があり、マングローブの生い茂る熱帯~亜熱帯気候の海に生息していたと考えられている化石種である。貝殻の中が珪酸(メノウ)に満たされ、貝殻がなくなって、内部だけが残されたた化石(内型化石)を「月のおさがり」と呼んでいる。新生代第三紀の始新世から中新世にかけての地層から産出し、岐阜県地域では瑞浪層群から産出する貝化石の代表としてよく知られている。瑞浪市化石博物館にはそのみごとな標本が数多く展示されている。



地質年代
瑞浪層群
新第三紀の中新世に西南日本の古瀬戸内海と呼ばれる海に堆積した地層群の一つで、岐阜県の中濃地方から東濃地方へかけての可児・瑞浪・岩村の3地域に分かれて分布する。可児地域では下位から蜂屋累層、中村累層、平牧累層に、瑞浪地域では同じく土岐夾炭累層、本郷累層、明世累層、生俵累層に、岩村地域では同じく阿木累層、遠山累層にそれぞれ区分されている。これらは、大きくみると淡水域から汽水域、海域へと堆積環境が変化していったが、設楽層群などの他地域に分布する地層群に比べると浅海性の傾向がみられる。
明世累層
瑞浪地域に分布する瑞浪層群のうち中部層を構成し、瑞浪地域の全域にわたり層厚200~250mで分布する海成層で、分布域の中心部と周縁部で岩相が大きく異なる。中心部では全体に凝灰質で、無層理の泥質細粒砂岩、シルト岩~細粒砂岩、軽石質凝灰岩と細粒凝灰岩~凝灰質泥岩の互層などが漸移的に積み重なり、周縁部では礫岩を含む砂岩、砂岩泥岩互層などからなる。大型哺乳類化石としてデスモスチルスやパレオパラドキシアが、周縁部の宿洞(しゅくぼら)相と呼ばれる砂岩層には大型有孔虫化石のミオジプシナがそれぞれ含まれることで知られ、全体に300種を超える貝類化石が産出する。