化石名 小型哺乳動物化石群 こがたほにゅうどうぶつかせきぐん
  地層名 瑞浪層群中村累層
(可児市土田 木曽川河床)
 対象時代 新第三紀中新世
   概 要
   中生代は恐竜に代表される爬虫類が繁栄した時代であったのに対して、新生代は哺乳類が急速に繁栄した時代である。それらは化石で示されることになるが、日本では哺乳動物化石の産出が少なく、とりわけ第三紀においてはきわめて少なかった。その中でも小型哺乳動物については、1980年代になって日本で最初となる産出が可児市の木曽川河床に露出する中村累層からあった。産出する歯や顎の骨はいずれも小型であるために発見しにくく、これまでに30点ほどの化石が見つかっている。それらを外国で見つかっている化石と比較研究することで、齧歯目(げっしもく)のビーバー科・エオミス科、ウサギ目のナキウサギ科、食虫目のプレシオソレックス科に分類されている。
 
可児市土田の木曽川左岸河床において中村累層から産出したビーバーの下顎骨に付いた切歯(左)と臼歯(右)(美濃加茂市民ミュージアム展示物)
(撮影:鹿野勘次)
 
  ジオ点描
   齧歯目は別名ネズミ目ともいい、地球上で最も種類の多い哺乳類で、その約半分にあたる約2400種を占めている。リス科、ビーバー科、ネズミ科など29科に分けられている。“齧”は「かじる」という意味で、かじるための歯と顎をもち、上下1対で4本の門歯が生えており、犬歯を持たないことを特徴としている。門歯は常に伸び続けているが、物をかじることで次第に削れてゆくことで長さを保っている。 
可児市土田の木曽川左岸河床において中村累層から産出したビーバーの切歯(左2つ)と下顎骨(右)
(提供:美濃加茂市民ミュージアム、撮影:鹿野勘次)
 
  文 献 冨田幸光(1999)岐阜県可児市産の小型哺乳類化石-日本初の第三紀小型哺乳動物群-.国立科学博物館ニュース,367号,20-23頁.  





地質年代
瑞浪層群
新第三紀の中新世に西南日本の古瀬戸内海と呼ばれる海に堆積した地層群の一つで、岐阜県の中濃地方から東濃地方へかけての可児・瑞浪・岩村の3地域に分かれて分布する。可児地域では下位から蜂屋累層、中村累層、平牧累層に、瑞浪地域では同じく土岐夾炭累層、本郷累層、明世累層、生俵累層に、岩村地域では同じく阿木累層、遠山累層にそれぞれ区分されている。これらは、大きくみると淡水域から汽水域、海域へと堆積環境が変化していったが、設楽層群などの他地域に分布する地層群に比べると浅海性の傾向がみられる。
中村累層
可児地域に分布する瑞浪層群のうち中部層を構成し、御嵩町・可児市・美濃加茂市南部に広く分布する。層厚は約120mで、礫岩や凝灰質砂岩・シルト岩互層からなる下部層と褐炭層をはさむ凝灰質砂岩・シルト岩からなる上部層とに分けられている。哺乳動物化石としてサイ、バク、シカなどが産出したことで知られており、湖沼性の貝類化石や寒冷性の植物化石も多く含まれる。御嵩亜炭鉱群はこの褐炭層を採掘していた。