化石名 三葉虫 さんようちゅう
  地層名 福地層  対象時代 オルドビス紀~デボン紀
   概 要
    古生代の最初期(カンブリア紀)から終期(ペルム紀)まで生息し、地球上で爆発的に生物が増えた古生代を代表する無脊椎動物であり、中生代を通じて生息したアンモナイトと双璧をなす有名な示準化石である。節足動物に属し、多くは3~5cmの体長で、体は扁平で多くの体節からなり、縦方向にも頭・胸・尾の3つに区分されるが、胴体(胸)部分が中央の盛り上がった部分「中葉あるいは軸部」と左右の薄い部分「側葉あるいは肋部」の3つ、すなわち「側葉・中葉・側葉」の三つの「葉」からなることが三葉虫の語源となっている。かなり有名な化石ではあるが、日本ではそれほど頻繁に産出するわけではなく、岐阜県地域では飛騨外縁帯構成岩類一重ヶ根層(オルドビス紀~シルル紀)や福地層(デボン紀)などから発見されている。なお“生きた化石”といわれるカブトガニは三葉虫の形態的な特徴とほとんど変わっておらず、比較的近縁な生物だと考えられている。
 
福地層から産出した三葉虫プロエタス フクジエンシス(頭部が欠けている)
(提供:小野輝雄、撮影:棚瀬充史)
 
  ジオ点描
   古生代になって大量に増えた生物群の中で、三葉虫は視力をもったことで捕食されないように敵を察知して逃げ、硬い殻をもったことで身を守る術を身につけた最初の動物の一つとされている。それにより古生代の最初期から末期までの長期にわたり繁栄することができたと考えられている。それでもペルム紀末期に起こった生物史上最大の大量絶滅とともに姿を消していった。
丸まった防御姿勢をとるPhacopidae科の三葉虫
(左右20mm;デボン紀、モロッコ産)
(撮影:棚瀬充史)
  文 献
アンモナイト
古生代から中生代白亜紀末まで海洋に広く分布し繁栄した生物であり、岐阜県地域では手取層群から産出するものが知られているが、繁栄時期からすれば美濃帯堆積岩類の中から産出してもおかしくない。ところがその産出例はわめて少なく、1例の報告しかない。郡上市大和町の長良川河床に露出している砂岩泥岩互層の細粒砂岩部から発見されたもので、ジュラ紀中期を示すKeppleriteと呼ばれるアンモナイトであり、北方系の要素があるとされている。
示準化石
地質時代を特定できる化石のことで、標準化石ともいう。こうした化石となる条件には、個体数が多いこと、地理的な分布が広いこと、特定の形態をもった状態での生存期間が短いことなどが挙げられ、一般には同一系統内では分類単位が大きいほど特定できる時間の幅が長くなる。こうした化石が含まれることで、離れた地域の間で地層の対比と時間の同定が可能となり、「地層同定の法則」が成り立つ。
飛騨外縁帯構成岩類
飛騨外縁帯は、飛騨帯の南側を取りまくように幅数~30kmほどで細長く分布する地質帯である。岐阜県地域では飛騨山脈の槍ヶ岳(標高3180m)付近から高山市の奥飛騨温泉郷、丹生川町北部~国府町地域、清見町楢谷(ならだに)、郡上市白鳥町石徹白(いとしろ)などに断片的に配列して露出している。そこを構成している岩石はかなり変化に富み、古生代に形成された非変成の砕屑岩類や火山岩類、結晶片岩などからなる変成岩類、超苦鉄質岩(U)から変化した蛇紋岩と呼ばれる岩石などである。これらの岩石は、飛騨帯構成岩類を一部に含めた当時の大陸(中朝地塊と呼ばれる)の東縁で形成された陸棚や浅海性の堆積物および火山砕屑物が中生代ジュラ紀中ごろまでに大規模な横ずれ運動をともなって飛騨帯構成岩類と接するようになり、その過程でもたらされた変成岩類や超苦鉄質岩を断片的にともなって形成されたと考えられている。ただし、飛騨外縁帯と飛騨帯との間には、富山県地域や新潟県地域などにおいて宇奈月帯あるいは蓮華帯と呼ばれる変成岩類で構成された地帯が分布しており、岐阜県地域においてもそれらとよく似た性質の岩石が断片的に分布するが、よくわかっていない点もあるため、ここではすべて飛騨外縁帯の構成岩類として扱う。
一重ヶ根層
奥飛騨温泉郷地域に分布する飛騨外縁帯構成岩類の一つで、一重ヶ根地区の岩坪谷下流部、その東方山腹、一法水(いっぽうすい)地区の東方山腹に分布する。層厚は500m以上で、おもに流紋岩質の凝灰岩、凝灰質砂岩および泥岩などからなる。シルル紀を示す三葉虫や放散虫の化石を含み、さらには現時点で日本最古の時期を示すコノドント化石(オルドビス紀後期)が発見されている。
福地層
奥飛騨温泉郷地域に分布する飛騨外縁帯構成岩類の一つで、福地地区のオソブ谷支谷一の谷下流部を中心に一の谷層の南東側に北東~南西方向に断層に囲まれて帯状に分布する。おもに石灰岩あるいは石灰質泥岩を主体とする浅海成の堆積物からなリ、層厚は270m以上である。ファボシテス(ハチノスサンゴ)をはじめとしてサンゴ類、腕足類、三葉虫、貝形虫、コノドント、放散虫などきわめて多くの化石を産し、福地層を中心に分布一帯が国指定の天然記念物「福地の化石産地」となっている。時代決定できる化石はすべてデボン紀のものであり、日本におけるデボン紀層を代表する地層となっている。
地質年代
福地層
奥飛騨温泉郷地域に分布する飛騨外縁帯構成岩類の一つで、福地地区のオソブ谷支谷一の谷下流部を中心に一の谷層の南東側に北東~南西方向に断層に囲まれて帯状に分布する。おもに石灰岩あるいは石灰質泥岩を主体とする浅海成の堆積物からなリ、層厚は270m以上である。ファボシテス(ハチノスサンゴ)をはじめとしてサンゴ類、腕足類、三葉虫、貝形虫、コノドント、放散虫などきわめて多くの化石を産し、福地層を中心に分布一帯が国指定の天然記念物「福地の化石産地」となっている。時代決定できる化石はすべてデボン紀のものであり、日本におけるデボン紀層を代表する地層となっている。