化石名 層孔虫 そうこうちゅう
  地層名 福地層  対象時代 デボン紀
   概 要
   古生代中生代それぞれの時代に繁栄した海生動物で、古生代末に一旦絶滅したが、中生代の三畳紀に再び出現し、ジュラ紀に繁栄して白亜紀末に絶滅した。樹状または塊状の群体をなし、石灰質の骨格がピラー(支柱)とラミナ(葉理)の2要素からなる縦横の明確な構造をもち、それらの配列や密度などにより属種が区別され、示準化石になっている場合もある。化石礁を構成する最も重要な造礁生物の一つとして知られ、“ストロマトポロイド類”とも呼ばれている。絶滅種であることから不明なことも多く、海綿動物に含める意見と腔腸動物とみなす意見があり、分類上の位置がまだ明確にされていない。日本でも各時期の堆積物中に多数発見されており、岐阜県地域では飛騨外縁帯構成岩類の福地層(デボン紀)から産出するものが知られている。
 
福地層に含まれる層孔虫
(撮影:三宅幸雄)
 
  ジオ点描
   層孔虫という生物はあまり馴染みのない、名前も聞いたことがない生物であるかもしれない。絶滅種であることから分類上の位置づけも含めて実際にどのような生物であるかもわかっていない。ところが時代決定に有効な示準化石としての価値があり、造礁生物としての示相化石の役割ももつ。かつてのコノドントが正体不明の生物であったが、古生代と中生代の重要な示準化石であったこととよく似ている。
  文 献 森  啓(1987)古生代層孔虫研究史と分類上の問題点.地学雑誌, 96巻,392-402頁.
飛騨外縁帯構成岩類
飛騨外縁帯は、飛騨帯の南側を取りまくように幅数~30kmほどで細長く分布する地質帯である。岐阜県地域では飛騨山脈の槍ヶ岳(標高3180m)付近から高山市の奥飛騨温泉郷、丹生川町北部~国府町地域、清見町楢谷(ならだに)、郡上市白鳥町石徹白(いとしろ)などに断片的に配列して露出している。そこを構成している岩石はかなり変化に富み、古生代に形成された非変成の砕屑岩類や火山岩類、結晶片岩などからなる変成岩類、超苦鉄質岩(U)から変化した蛇紋岩と呼ばれる岩石などである。これらの岩石は、飛騨帯構成岩類を一部に含めた当時の大陸(中朝地塊と呼ばれる)の東縁で形成された陸棚や浅海性の堆積物および火山砕屑物が中生代ジュラ紀中ごろまでに大規模な横ずれ運動をともなって飛騨帯構成岩類と接するようになり、その過程でもたらされた変成岩類や超苦鉄質岩を断片的にともなって形成されたと考えられている。ただし、飛騨外縁帯と飛騨帯との間には、富山県地域や新潟県地域などにおいて宇奈月帯あるいは蓮華帯と呼ばれる変成岩類で構成された地帯が分布しており、岐阜県地域においてもそれらとよく似た性質の岩石が断片的に分布するが、よくわかっていない点もあるため、ここではすべて飛騨外縁帯の構成岩類として扱う。
福地層
奥飛騨温泉郷地域に分布する飛騨外縁帯構成岩類の一つで、福地地区のオソブ谷支谷一の谷下流部を中心に一の谷層の南東側に北東~南西方向に断層に囲まれて帯状に分布する。おもに石灰岩あるいは石灰質泥岩を主体とする浅海成の堆積物からなリ、層厚は270m以上である。ファボシテス(ハチノスサンゴ)をはじめとしてサンゴ類、腕足類、三葉虫、貝形虫、コノドント、放散虫などきわめて多くの化石を産し、福地層を中心に分布一帯が国指定の天然記念物「福地の化石産地」となっている。時代決定できる化石はすべてデボン紀のものであり、日本におけるデボン紀層を代表する地層となっている。
示準化石
地質時代を特定できる化石のことで、標準化石ともいう。こうした化石となる条件には、個体数が多いこと、地理的な分布が広いこと、特定の形態をもった状態での生存期間が短いことなどが挙げられ、一般には同一系統内では分類単位が大きいほど特定できる時間の幅が長くなる。こうした化石が含まれることで、離れた地域の間で地層の対比と時間の同定が可能となり、「地層同定の法則」が成り立つ。
コノドント
古生代カンブリア紀から中生代三畳紀まで生存した海生の化石動物のなんらかの器官を代表する部分化石とされ、その正体は長らく謎のままであった。1983(昭58)年にスコットランドで「歯」の持ち主の全体の化石としてウナギのような細長い体をもつ動物化石が発見され、その口から奥まったところに規則正しく並んでいる「歯」が捕食や消化にかかわる器官の機能を果たしていたという考えが出され、有力な説となっている。主成分はリン酸カルシウムからなり、0.2~1mm程度の大きさで、円錐状の形をしたものや縦長の“土台”の上にとがった突起が並ぶものなどいろいろ形状を持つ。形態が多様化するオルドビス紀から三畳紀までの約三億年の期間で最も精度の高い示準化石として利用されている。岐阜県内では、飛騨外縁帯構成岩類の一重ヶ根層から日本最古の化石として古生代オルドビス紀後期を示すものが見出されている。
示準化石
地質時代を特定できる化石のことで、標準化石ともいう。こうした化石となる条件には、個体数が多いこと、地理的な分布が広いこと、特定の形態をもった状態での生存期間が短いことなどが挙げられ、一般には同一系統内では分類単位が大きいほど特定できる時間の幅が長くなる。こうした化石が含まれることで、離れた地域の間で地層の対比と時間の同定が可能となり、「地層同定の法則」が成り立つ。
地質年代
福地層
奥飛騨温泉郷地域に分布する飛騨外縁帯構成岩類の一つで、福地地区のオソブ谷支谷一の谷下流部を中心に一の谷層の南東側に北東~南西方向に断層に囲まれて帯状に分布する。おもに石灰岩あるいは石灰質泥岩を主体とする浅海成の堆積物からなリ、層厚は270m以上である。ファボシテス(ハチノスサンゴ)をはじめとしてサンゴ類、腕足類、三葉虫、貝形虫、コノドント、放散虫などきわめて多くの化石を産し、福地層を中心に分布一帯が国指定の天然記念物「福地の化石産地」となっている。時代決定できる化石はすべてデボン紀のものであり、日本におけるデボン紀層を代表する地層となっている。