断層名 数河断層(概説) すごうだんそう
  場所 飛騨市神岡町伏方
   概 要
   神岡町中心部の西方にあたる寺林付近から西南西へ向かって神岡町の伏方(ふせがた)、流葉(ながれは)、数河峠を経て、古川町数河付近まで約8kmにわたって延びる活断層である。系統的な右横ずれ変位が確認されているが、あまり明確な断層地形として示されているわけではない。それはこの断層において北側の流葉山(標高1,423m)の山塊を隆起させる縦ずれ運動が顕著であるために、隆起するとともにその南側斜面が削られながら崩れていき、断層がそれに埋もれてしまっているためである。また、断層に向かって北流する山田川は伏方において上昇する山塊に行く手を阻まれ、そこから向きを東に直角に変えて断層に沿って急傾斜の谷を作って神岡町中心部方面へ向かって流れるようになり、運ばれてきた土砂が堰き止められる形になることで勾配の緩やか平坦な地形を作っている。なお、この断層を数河付近からさらに宮川沿いの古川町野口付近まで延ばして全長約15kmの活断層を指す場合もあるが、ここでは延長部分を戸市川断層として別に扱う。
 
神岡町山田から見た流葉山(山麓の流葉スキー場の位置に山体とほぼ平行な方向に断層が走り、山体側が上昇した)
(撮影:小井土由光)
 
  ジオ点描
   「流葉スキー場」は、数河断層の北側が隆起して作られた流葉山の南斜面が崩れて山麓にもたらされた崩壊物によって作られた緩斜面を利用したものである。その地下には数河断層が埋もれて隠されており、そこへ向けてボーリングで1,500mほど掘削されて破砕帯の地下水脈に達したことで掘り当てられたのがスキー場の一画にある「流葉温泉」である。どちらも断層がもたらした恩恵ということになる。
 
  文 献  
戸市川断層
飛騨市古川町下数河(しもすごう)より南西へ向かって同町戸市を経て、宮川を横切って同町信包(のぶか)へ至り、そこから同町黒内、河合町舟原を経て高山市清見町の森茂(もりも)峠付近まで全長22㎞に及ぶとされるが、分布域西部の小鳥(おどり)川流域周辺については不明確になる。また信包から西方へ湯峰峠を越えて稲越(いなごえ)川沿いに延び、保峠(ほうとうげ)を越えて延びる「稲越断層」と呼ばれる断層につながるとする考えもある。断層鞍部の連なりや河谷と尾根の右ずれ屈曲などによる直線的な線状地形模様(リニアメント)も認められる。古川盆地周辺に分布する活断層のほとんどは盆地の南西側にあって、盆地の延びの方向に直交する北東~南西方向に長さ数kmに及ぶ谷に沿って分布しており、いずれも右横ずれ断層である。ところが盆地の北西縁にあるこの断層だけは盆地の南西側から北東側へつながる断層で、断層の北西側が隆起することで盆地北西縁の出口に壁をつくる形となり、この壁により宮川の土砂がせき止められることで盆地に厚い堆積層をためている。なお、古川町黒内の「桃源郷温泉」は戸市川断層をめがけてボーリングして得られたものである。




地質年代