宮川断層
宮川断層は、飛騨一之宮から南西に向かい、位山(くらいやま)(標高1529m)から川上岳(かおれだけ)(標高1525m)へ続く山嶺の北西斜面において直線状に並ぶ断層鞍部をつなげるように通過し、ツメタ谷から峠を越えて郡上市側へ延び、そのまま大原(おっぱら)断層につながる。そこには幾本かの断層が平行して並んでおり、場所によっては幅数百mの断層破砕帯を形成している。宮川支流の流路は宮川断層にぶつかった所で右横ずれの屈曲をしており、断層に沿う谷に入ると、硬くて暗青色をした基盤の濃飛流紋岩がもろく粉々になり、断層粘土をともなった破砕帯となっている。そこから流れ出した岩石は、下流の飛騨一之宮盆地の東端にある水無神社付近に堆積して、そこに広い河原をつくった。その堆積物には多くの隙間があるために水はけがよく、河原の水は伏流水となって河床にしみ込んでしまうために河原は水無川となっている。高山市の上水道の一部もこの伏流水を利用している。
濃飛流紋岩
濃飛流紋岩は、岐阜県の南東端にあたる恵那山(標高2191m)付近から北部の飛騨市古川町付近へかけて、幅約35km、延長約100kmにわたり北西~南東方向にのび、岐阜県の約1/4の面積を占める巨大な岩体である。この岩体を構成する岩石のほとんどは、火砕流として流れ出た火山砕屑物がたまって形成された火砕流堆積物からなり、しかもその大部分は堅硬に固結した溶結凝灰岩になっており、厚さ数百mで、水平方向へ20~60kmの広がりをもち、岩相・岩質が類似した火山灰流シートとして何枚にもわたって重なりあっている。それらは大きく6つの活動期(NOHI-1~NOHI-6)に区分されており、岐阜県内にはNOHI-6だけが分布しない。これらの火山岩類には花崗岩類が密接にともなわれ、それらを含めて大きく2期(第1期火成岩類・第2期火成岩類)に分けられる火山-深成複合岩体を形成している。第1期の活動は白亜紀後期の約8,500万~8,000万年前にあり、NOHI-1とNOHI-2の活動と引き続く花崗岩類の活動があった。第2期の活動は約7,500万~6,800万年前にあり、NOHI-3~NOHI-5(おそらくNOHI-6)の活動と引き続く花崗岩類の活動があった。これらは活動の場所を南部から北部へと移しながら巨大な火山岩体を作り上げた。
源氏岳断層
源氏岳断層は、高山盆地の南部から西南西に向かい、源氏岳(標高1143m)の南麓を経て、小井戸谷や川上(かわかみ)川の最上流部へかけて全長約17kmにわたり延びる。大楢谷(おおならだに)川の谷は断層を境に約300mの右横ずれを起こしており、ほかに断層鞍部などの断層地形も明瞭にみられるが、断層の活動履歴等はわかっていない。この断層に沿う谷は比較的平らな緩斜面を作っている場合が多く、断層破砕帯から供給された崖錐堆積層に埋もれているためで、ゴルフ場やマツ林となっている。北西側の巣野俣断層、南東側のヌクイ断層・宮川断層(大原(おっぱら)断層)と並走し、これらを含めた「江名子・大原断層帯」と呼ばれる北東~南西方向に延びる断層群の一つである。
地質年代