カール
氷河の浸食で作られた馬蹄形をした凹地形をカールまたは圏谷といい、日本では標高の高い山岳地帯の屋根近くの谷頭に残されていることが多い。カールの典型的な形態は、谷頭と側方が急斜面からなり、谷底は滑らかに削られて盆地状をなしており、その出口付近には弓なりの堤防状に延びる氷河堆積物のモレーンがある。日本では冬の季節風により雪が稜線の東側に多く吹きたまるために、カールは稜線の東側に多くでき、飛騨山脈では長野県側に多くみられる。岐阜県側では、飛騨山脈の主稜から離れた位置にある笠ヶ岳(標高2898m)の東斜面に“杓子平(しゃくしだいら)”と“播隆平(ばんりゅうだいら)”という2つのカール地形が明瞭に残されている。とくに杓子平では、大小2つのカールが複合した地形をなしており、少なくとも2回の氷期があったことを示している。ちなみに笠ヶ岳は県境になっていない峰としては岐阜県内の最高峰である。
U字谷地形
谷氷河の浸食によって形成され、横断面がU字に近い谷地形をU字谷地形という。河川による浸食でつくられるV字谷とは違い、幅広い谷底と急傾斜の谷壁からなることを特徴とする。トラフ谷ともいう。北欧のフィヨルドはそこに海水が浸入した例としてよく知られている。標高の高い飛騨山脈では氷河時代の名残りとしてこのU字谷があるが、その後の浸食作用が激しい地域であるためにU字形を明瞭に残しているわけではない。槍ヶ岳(標高3180m)を挟んで長野県側の槍沢と岐阜県側の飛騨沢はともに谷氷河によって形成されたU字谷地形と考えられており、槍ヶ岳は氷河によって複数方向から削られてできる氷食尖峰の代表例とされている。同じ氷食地形であるカールはU字谷の谷頭にしばしばともなわれるが、稜線の東側に多くあり、稜線の西側にある飛騨沢には明確なものはともなわれていない。
構造土
標高の高い山岳地帯などの寒冷地において土壌の凍結と融解が繰り返されることで、植生が少ない場所で移動しやすい砂礫がふるいわけを受けることでできる。その形態によって多角形土(亀甲礫)、円形土(環状砂礫)、網状土、階段状土、条線土などと呼ばれている。
地質年代