地 名 霞間ヶ渓 かまがたに
  場 所 池田町藤代(ふじしろ)  指定等 日本さくら名所百選/国指定名勝
   概 要
   池田山(標高924m)は池田山断層により濃尾平野と画されて隆起した山塊であり、そこを削り込んで流れ出る谷とそこから流れ出た土砂が裾野に形成した扇状地をあわせて一続きの渓谷と見立てたものである。この渓谷はかつては“鎌ヶ谷”と呼ばれ、谷沿いにサクラが自生していたが、治山目的などで植樹が続けられ、一帯の全長約2kmにわたり約1,500~2,000本のサクラで埋められるようになった。これを遠望すると霞がかかったように見えることから現在のように呼称されるようになった。この渓谷周辺の扇状地一帯では寒暖差のある気候条件を生かして銘茶“美濃いび茶”が栽培されている。
 
桜が咲きはじめた時期の霞間ヶ渓(奥の雪山は御獄山)
(撮影:小井土由光)
 
  ジオ点描
   隆起する山地とそこが激しく浸食されることで作られる大量の土砂がもたらす山麓の扇状地という組合せは、大地の運動とその産物が作り出した一組の作品ともいえる。こうした場所は各所でみられ、その扇状地は生活の場として居住地や畑地に利用されていることが多いが、常に治山事業の欠かせない立地でもある。それを巧みに利用して植樹とからめた景勝地となっている例は意外に少ない。
 
  文 献
池田山断層
池田山断層は、伊吹山地の東端にある池田山(標高924m)の東麓を旧揖斐川町西部から大垣市北部へかけて北北西~南南東方向に約16kmにわたり延びている。濃尾平野の平坦地から比高約700mの急崖が形成され、この直線的に延びる急崖を池田山断層崖と呼ぶ。池田山の山塊は隆起していくにつれて削られ、大量の土砂が平野部へ流出することで山麓には霞間ヶ渓(かまがたに)のような扇状地が形成された。こうした扇状地堆積物は断層の位置をわかりにくくしているが、そのほぼ真上にあたる扇状地の上では落差2~3mの撓曲崖が形成されている。1998(平10)年にこの撓曲崖を掘削してトレンチ調査が行なわれ、山地側が平地側の上に乗り上げている逆断層であり、約1,300年前の地層を変形させており、断層の活動間隔は少なくとも870年以上であることが明らかにされている。こうした活動の繰り返しにより池田山の山塊が形成されていった。
池田山
伊吹山地の東端にあり、すべて美濃帯堆積岩類からなる山塊である。比較的なだらかな山頂部(標高924m)付近は「池田の森」として整備され、そこから東方の濃尾平野への展望がきわめてよいために、広大なパノラマ夜景が楽しめる場所になっていたり、山麓から吹き上げる上昇気流を利用したハンググライダー、パラグライダーのスカイスポーツが楽しめる山としても知られている。これらは東斜面がかなり急斜面となって濃尾平野と接していることから生まれるものであり、この急崖は池田山断層の断層崖にあたっている。



地質年代