地 名 五色ヶ原 ごしきがはら
  場 所 高山市丹生川町日面1147(ツアーセンター)  指定等
   概 要
   乗鞍岳(標高3,026m)の北西山麓において乗鞍火山を構成する噴出物が標高1,300~1,600mの台地をつくって高原状に広がっている地域である。その中に溶岩流などの噴出物に関わって形成されている布引の滝・青垂(あおだれ)滝・御越(みこし)滝といった瀑布や、火山噴出物の境界部やその基盤にある美濃帯堆積岩類との境界部にあたる位置に分布する雄池・雌池・澄池などの湖沼が数多くみられ、高原一帯にほとんど手つかずの状態で豊かな自然が残されている。認定ガイド同行での2コースに限っての入山許可や入山者の人数制限など、生態系維持や自然保護をかなり意識したシステムで運用されている景勝地である。
 
五色ヶ原内にある布引の滝
(撮影:清水辰弥)
 
  ジオ点描
   1回の噴火活動だけで形成された火山体を“単成火山”といい、休止期をはさんで噴火活動が繰り返されて形成された火山体を“複成火山”という。ほとんどの火山体は複成火山であり、頂上に火口をもつ円錐形といった単純な形態の火山体であっても単成火山ということはほとんどない。それだけ火山体は複雑な形成過程を経て作られ、さまざまな顔つきをもつ地質体であることを意味している。
 
  文 献 中野 俊・大塚 勉・足立 守・原山 智・吉岡敏和(1995)乗鞍岳地域の地質.地域地質研究報告(5万分の1地質図幅),地質調査所,139頁.
乗鞍火山
飛騨山脈に沿ってほぼ南北方向に配列する乗鞍火山列あるいは乗鞍火山帯と呼ばれる火山群の一つで、複数の火山体が集まって復元総噴出量約26km³の複合火山を形成している。活動時期から大きく約128万~86万年前に活動した古期乗鞍火山と約32万年前以降に活動した新期乗鞍火山に分けられており、前者には千町火山が、後者には烏帽子火山、高天ヶ原・権現池火山、四ツ岳火山、恵比寿火山がそれぞれ該当している。これらのうち権現池火山だけが最新の活動をしている。全体に火砕流堆積物や降下火砕堆積物などの火砕物が少なく、安山岩質ないしデイサイト質の厚い溶岩流が主体を占めることで特徴付けられ、基盤岩類の分布高度が標高2400mまで確認され、噴出物の厚さは600~700mほどしかない。
美濃帯堆積岩類
美濃帯は、飛騨外縁帯の南側にあってかなり幅広く分布する地質帯で、岐阜県内でも広範囲にわたる地域を占める。そこは、古生代石炭紀から中生代白亜紀最前期にかけての時期にチャート・石灰岩・砂岩・泥岩・礫岩などの海底に堆積した堆積岩類と海底に噴出した緑色岩(玄武岩質火山岩類)でおもに構成されている。下図に示すように、海洋プレートの上に噴出した玄武岩質火山岩類は海底や火山島(海山)を形成して、その上にチャートや石灰岩・珪質泥岩などを徐々に堆積させながら大陸へ向かって年間数cmほどの速さで移動していく。海洋プレートは海溝部で大陸の下へ沈み込んでいくが、堆積物はいっしょに沈み込むことができず、はぎ取られたり、大陸側から運び込まれた砂岩・泥岩などとともに大陸側へ押し付けられ、混じり合って複合体(コンプレックス)を作りあげていく。こうした作用を付加作用といい、それにより形成された堆積物は付加体堆積物と呼ばれ、これまでそれらを総称して「美濃帯中・古生層」、「美濃帯中生層」、「美濃帯堆積岩コンプレックス」などといろいろな表現で呼ばれてきたが、ここではこれらを「美濃帯堆積岩類」と呼ぶ。それらは、それまで順に重なっていた地層が付加作用にともなって低角の断層を境にして屋根瓦のように繰り返して覆うように重なったり、複雑に混じりあったメランジュと呼ばれる地質体を構成し、整然とした地層として順番に連続して重なるようなことがほとんどない。そのため全域にわたり個々の地層名を付して表現することがむずかしいため、ここでは構成岩石の種類(岩相)によって表現する。これらの構成岩石は単独でも複数の組合せでもある程度の大きさを持つ地質体を形成しており、その大きさはcmオーダーの礫からkmオーダーの岩体までさまざまである。これらは岩相、形成時期、形成過程などの類似性から複数の地質ユニットに区分され、ユニット間は衝上断層で接することが多いが、その区分による表現はここでは用いない。



地質年代