地 名 双六渓谷 すごろくけいこく
  場 所 高山市上宝(かみたから)町双六  指定等
   概 要
   飛騨山脈の双六岳(標高2,860m)から西へ向かって流れ下る金木戸(かなきど)川は高山市上宝町本郷で高原川へ合流する。そのほぼ全流域が飛騨帯構成岩類の飛騨花崗岩類によって占められ、全体として深いV字谷をなして流れる。そのうちの下流部のおおよそ10kmほどは双六川と呼ばれ、上流部にくらべると緩やかな流れとなっており、巨石が転がる壮観な景観が楽しめる渓谷を作っており、夏のキャンプや秋の紅葉で賑わう。
 
上宝町尻高(しったか)付近における双六渓谷
(撮影:小井土由光)
 
  ジオ点描
【達原渓谷と共通】 花崗岩の分布地帯においては、恵那峡鬼岩公園のように顕著なマサ化を経て残った岩芯(コアストン)や方状節理などの花崗岩ならではの素材が用意されていることで景勝地となっていることが多い。ところがそうした素材が顕著でないと単に岩盤が露出しているだけで、とりたてて特定の素材による光景が広がっているとはいえず、あまり特徴的な景観として取り上げるほどにはなりにくい。
 
  文 献
飛騨帯構成岩類
飛騨帯は、岐阜県の北部から北陸地方へかけての地域に広がる変成岩類と花崗岩類からなる地質帯である。ただし、これらの構成岩類がこの地域のどこにでも分布しているわけではなく、それ以降に形成された岩石類に覆われたり貫かれているために、実際にはかなり限られた地域にだけ分布する。変成岩類は総称して「飛騨片麻岩類」と呼ばれ、それらを形成した広域変成作用の時期についてはいくつかの見解があるが、おおよそ3億年~4億5000万年前(古生代石炭紀・シルル紀・デボン紀)と2億4000万年前ごろの少なくとも2回にわたり重複した変成作用で形成されたとされている。花崗岩類はこれまで「船津花崗岩類」と呼ばれ、1億8000万年前(中生代ジュラ紀)に飛騨外縁帯構成岩類の分布域にまで及ぶ範囲に一斉に貫入したことで飛騨片麻岩類に熱変成作用をもたらしたと考えられてきた。しかし、それらの中には古い年代を示す岩体もあり、一律に扱うことができないことがわかってきたため、それらの形成時期を少なくとも2期に分けて区別するようになった。変成岩類も花崗岩類も複数回におよぶ複雑な過程を経て形成されているために、すべての飛騨帯構成岩類を全域にわたって一定の基準で表現することはかなりむずかしいことから、ここではそれらを「飛騨変成岩類」、「飛騨花崗岩類」と呼び、それぞれを6種類と10種類の岩相に区分することで表現する。そのため1つの岩相で示される岩石の中にも別の変成・深成作用で形成された岩石が含まれている場合もある。
恵那峡
1924(大13)年に木曽川水系で最初に作られた大井ダムが木曽川を堰き止めて作った人造湖を利用した峡谷であり、ダム湖百選にも選ばれている。約12kmにわたる湛水域の両岸に露出する岩盤は苗木花崗岩であり、花崗岩の方状節理と適度な風化作用によりもたらされた奇岩に、屏風岩、軍艦岩、獅子岩、鏡岩などいろいろな名称がつけられている。それらと湖面がつくりだす景観を遊覧船から眺められることで人気が高い。
鬼岩公園
木曽川支流の可児川源流付近一帯にあり、土岐花崗岩が作り出した巨岩・奇岩からなる国指定の天然記念物「鬼岩」にまつわる公園である。人造湖の松野湖へ至る“渓流コース”や“岩屋くぐりコース”などのハイキングコースがあり、花崗岩が作る岩壁と周囲の緑あるいは秋の紅葉が織りなすコントラストなど、四季を通じて展開される自然の絶景が満喫できる。また公園内には、土岐花崗岩に比較的多く含まれる放射性元素に起因する放射能泉が湧出する鬼岩温泉がある。
マサ化
地下で固結した花崗岩が地表に露出したことで気温の変化により岩石の表面で膨張収縮をわずかながらでも繰り返し、岩石中の鉱物が互いに接している完晶質岩であるために膨張率の違いが鉱物単位で歪みを生じ、ばらばらにされて砂状に破壊されていく現象である。もともとは「真砂土(まさど・まさつち)」という園芸用土壌の用語として使われているが、それをもたらす風化作用に拡大して使われるようになっている。
方状節理
花崗岩は規模の大きなマグマ溜りが地下に長い時間にわたりとどまり、きわめてゆっくり冷却していく。冷却にともない体積が収縮することで、大きな直方体の箱を積み重ねたように形成される規則的な割れ目のことで、一般にはその間隔は数~数十mと幅広いものとなる。
地質年代