地 名 杖石 つえいし
  場 所 高山市上宝(かみたから)町長倉  指定等
   概 要
   高山市上宝町の中心部から高原川沿いに5kmほどさかのぼった河原にそびえる高さ約70m、周囲約250mの巨岩で、弘法大師や武蔵坊弁慶にまつわる伝説が残されている。大雨見山層群を構成する明ヶ谷溶結凝灰岩層からなる岩山であり、同種の岩石は高原川より南側の山体に広く分布する。比較的堅硬な岩石であることに加えて、高原川の川幅がここで相対的に狭小になっていることもおそらく影響して、高原川による浸食から免れて取り残されたものと考えられる。
 
上宝町長倉の高原川河床にそびえる杖石
(撮影:小井土由光)
 
  ジオ点描
   米国ワイオミング州にあるデビルスタワー(Devils Tower)は円筒状にそそり立つ岩体として有名である。マグマが地表へ流れ出る通路で固まり、その周囲にあった岩石が削られてしまったことで露出した「岩頚」と呼ばれるものである。みかけはこれに似ているが、杖石は既存の岩石が浸食された残骸であり、地中に隠された部分が露わになったものとはまったく異なる反対の形成過程で作られたことになる。
 
  文 献 棚瀬充史・笠原芳雄・原山 智・小井土由光(2005)濃飛流紋岩周辺地域の後期白亜紀~古第三紀火山岩類.地団研専報,53号,159-171頁.
大雨見山層群
飛騨市古川町東部から高山市上宝町東部へかけての地域に飛騨外縁帯構成岩類、美濃帯堆積岩類、手取層群を不整合に覆って約22kmにわたりほぼ東西方向に分布する。流紋岩質の溶結凝灰岩など南隣に約4km隔てて分布する濃飛流紋岩に類似した岩石類からなるが、流紋岩溶岩、玄武岩質安山岩溶岩なども見られる。下位から、宮川谷層、明ヶ谷溶結凝灰岩層、木地屋層の3層に区分され、上部層ほど岩体の東部に分布する。
明ヶ谷溶結凝灰岩層
大雨見山層群の岩体西半部に広く分布し、一部は東半部の国見山(標高1318m)南西部にも分布する。おもに粗粒の結晶片に富む流紋岩質の溶結凝灰岩からなり、層厚は300m以上で、大雨見山層群の中で最大規模をなすユニットである。基底部に黒色、緻密で黒曜石のような光沢をもつ溶結凝灰岩をともなう。



地質年代