地 名 八本原 はっぽんばら
  場 所 高山市丹生川町
十二ヶ岳周辺
 指定等
   概 要
   高山市丹生川町の十二ヶ岳(標高1,326m)周辺から東方へかけての広範囲に広がり、きわめて緩やかな傾斜をなして連なる高原の通称であり、約64万年前に噴出した上宝火砕流堆積物が堆積した火砕流台地である。高原の全体を見渡せる十二ヶ岳の展望台からは、視野を妨げるものがほとんどないため高山盆地から御嶽火山乗鞍火山槍・穂高連峰、笠ヶ岳、白山火山などの大パノラマが楽しめる。現在はこの台地を小八賀(こはちが)川や荒城(あらき)川などの大きな谷が削りこんでいるが、火砕流堆積物の堆積当時には平坦な火砕流台地が乗鞍岳周辺から高山市街地に至る広大な地域に広がっていたはずである。
 
丹生川町の十二ヶ岳周辺に広がる八本原火砕流台地
(撮影:鹿野勘次)
 
  ジオ点描
   火砕流は流動性にかなり富む火山噴出物であり、地形の凹凸をすべて埋めるようにして堆積する。そのため火砕流堆積物の下面は凸凹になるが、上面はかなり平坦な地形面を形成する。火砕流堆積物とほぼ同じものが噴煙として空中に噴き上げられ、降雪のように地表を覆って堆積したものは「降下火砕堆積物」と呼ばれる。同じ噴出物であっても噴火様式や移動様式が異なることで最終的な堆積物が異なってくる。
 
  文 献 原山 智(1990)上高地地域の地質.地域地質研究報告(5万分の1地質図幅).地質調査所,175頁.
上宝火砕流堆積物
高原川・宮川流域の500km²にもおよぶ広範囲にわたり分布し、上宝火山の活動において、先行する福地凝灰角礫岩層の形成に引き続いて貝塩給源火道から40km³以上の噴出量でもたらされた流紋岩質の火砕流堆積物である。八本原などに典型的な火砕流台地を形成している。堆積物は1回の冷却単位で形成された溶結凝灰岩からなり、最大層厚が200m以上で、東部では最下部に約30mの厚さで非溶結部をともなう。
御嶽火山
岐阜・長野県境にあって南北約20km、東西約15kmの範囲に広がる山体をなす。それぞれ数万年ほどの活動期間をもつ古期御嶽火山と新期御嶽火山からなり、両者の間に約30万年にわたる静穏期があり、現在も約3万年にわたる静穏期にあたっている。
乗鞍火山
飛騨山脈に沿ってほぼ南北方向に配列する乗鞍火山列あるいは乗鞍火山帯と呼ばれる火山群の一つで、複数の火山体が集まって復元総噴出量約26km³の複合火山を形成している。活動時期から大きく約128万~86万年前に活動した古期乗鞍火山と約32万年前以降に活動した新期乗鞍火山に分けられており、前者には千町火山が、後者には烏帽子火山、高天ヶ原・権現池火山、四ツ岳火山、恵比寿火山がそれぞれ該当している。これらのうち権現池火山だけが最新の活動をしている。全体に火砕流堆積物や降下火砕堆積物などの火砕物が少なく、安山岩質ないしデイサイト質の厚い溶岩流が主体を占めることで特徴付けられ、基盤岩類の分布高度が標高2400mまで確認され、噴出物の厚さは600~700mほどしかない。
槍・穂高連峰
飛騨山脈において北の槍ヶ岳(標高3180m)から南の前穂高岳(同3090m)までの直線距離で約7kmの範囲であり、ここに標高3000m以上の峰々がほぼ南北方向に並ぶ。大岩壁・岩峰などの迫力ある山岳地形に加えて、氷河地形が随所にみられる。この山稜には尾根付近の高所に穂高安山岩類、山腹の低所に滝谷花崗閃緑岩がそれぞれ分布し、ともに176万年前から80万年前というきわめて新しい時代に形成された槍-穂高火山を構成する岩石である。滝谷花崗閃緑岩が上昇しながら貫入し、山塊が西側を高くして東側を低くするような傾動隆起を起こしたことで3000m級の峰々がもたらされた。その時期は約130万年前以降のごく最近のことである。

白山火山
最高峰の御前峰(ごぜんがみね)(標高2702m)と剣ヶ峰(標高2677m)、大汝峰(おおなんじみね)(標高2684m)をあわせて「白山三峰」といい、それらを中心とする安山岩質の溶岩、火砕流堆積物などからなる火山体である。ただし、山頂部付近でも標高2400m付近まで基盤岩類が分布しており、それらの上にきわめて薄く噴出物が覆っているに過ぎない。加賀室火山(約42万~32万年前)、古白山火山(約13万~6万年前)、新白山火山(約4万年前以降)の3つの活動時期に分けられるが、前二者は現在の主峰から離れた周囲の尾根上に残っているだけで、ほとんどが削剥されてしまっている。とりわけ古白山火山は、現在の大汝峰の北側にあたる石川県側の地獄谷付近にあたる位置に標高3000mに達する山頂をもつ成層火山体を形成していたと考えられている。新白山火山は現在の主峰を中心とした火山体を形成しており、岐阜県側では、約4400年前に山頂付近の東側が大規模に崩落したことで馬蹄形の凹地が形成され、その崩落で発生した岩屑なだれによる堆積物が大白川岩屑流堆積物を形成し、約2200年前には山頂部付近から溶岩が東方へ流下して白水滝溶岩を形成し、その末端付近に白水滝がある。最新の活動については事項解説『災害』の項目「白山火山噴火」を参照のこと。
火砕流
火山噴火において噴煙と同じものが溶岩のように地面に沿って流れる現象である。噴煙の中には火山灰(ガラス片)のほかにマグマのかけらに相当する軽石や噴火の際に取り込まれる既存の岩石などが入っており、それらの固体をまとめて火山砕屑物といい、それらが火山ガス(ほとんど水蒸気)と混ざった状態で地表面に沿って流れる現象である。これによってもたらされた堆積物を火砕流堆積物という。火砕流はきわめて流動性に富む状態で運ばれるために、高温状態のまま高速で運ばれることになり、溶岩流などの噴火現象に比べるとはるかに危険な現象と理解しておかなければならない。
地質年代