地 名 宇津江四十八滝 うつえしじゅうはちたき
  場 所 高山市国府町宇津江  指定等 県指定名勝/全国自然100選/県名水50選/県立自然公園/飛騨・美濃紅葉33選
   概 要
   宮川支流の宇津江川上流に全長約900mにわたり続く滝の総称であり、滝が48筋あるわけではなく、名称が付けられている滝の数は13筋である。ここには“よそ八”伝説があり、「よそはちだき」と呼ぶ場合もあり、仏教の“四十八願(しじゅうはちがん)”に関係付けられた名称とされている。すべて濃飛流紋岩下呂火山灰流シートの中を流れる渓流沿いに作られており、比較的均質で堅硬な岩盤を削っていることから、極端に大きな落差をともなう滝はなく、最大でも約19mであり、多くは3~6mである。ここの下流にある「四十八滝温泉」は、濃飛流紋岩の中を約1,600mも掘削されて得られた単純泉である。
 
国府町宇津江にある宇津江四十八滝の景観
(撮影:下畑五夫)
 
  ジオ点描
【片知渓谷と共通】 削剥への抵抗力がかなり異なる地質体で構成されていると滝が形成される上では好都合である。それに対して抵抗力に差があまりない地質体の中では、高低差で河谷が流れ下ることで削られていくから、そこにはほぼ垂直に落ちるような瀑布は生まれにくい。やや傾斜が強い渓流といった方がよい例もあり、似たような景観は谷の上流部へ行けばどこでも見られるほどである。
 
  文 献 山田直利・小井土由光・原山 智・棚瀬充史・鹿野勘次・田辺元祥・曽根原崇文(2005)濃飛流紋岩の火山層序.地団研専報,53号,29-69頁.
濃飛流紋岩
濃飛流紋岩は、岐阜県の南東端にあたる恵那山(標高2191m)付近から北部の飛騨市古川町付近へかけて、幅約35km、延長約100kmにわたり北西~南東方向にのび、岐阜県の約1/4の面積を占める巨大な岩体である。この岩体を構成する岩石のほとんどは、火砕流として流れ出た火山砕屑物がたまって形成された火砕流堆積物からなり、しかもその大部分は堅硬に固結した溶結凝灰岩になっており、厚さ数百mで、水平方向へ20~60kmの広がりをもち、岩相・岩質が類似した火山灰流シートとして何枚にもわたって重なりあっている。それらは大きく6つの活動期(NOHI-1~NOHI-6)に区分されており、岐阜県内にはNOHI-6だけが分布しない。これらの火山岩類には花崗岩類が密接にともなわれ、それらを含めて大きく2期(第1期火成岩類・第2期火成岩類)に分けられる火山-深成複合岩体を形成している。第1期の活動は白亜紀後期の約8,500万~8,000万年前にあり、NOHI-1とNOHI-2の活動と引き続く花崗岩類の活動があった。第2期の活動は約7,500万~6,800万年前にあり、NOHI-3~NOHI-5(おそらくNOHI-6)の活動と引き続く花崗岩類の活動があった。これらは活動の場所を南部から北部へと移しながら巨大な火山岩体を作り上げた。
下呂火山灰流シート
濃飛流紋岩の岩体南縁部を除くほぼ全域にわたり分布し、NOHI-3の主体をなすとともに濃飛流紋岩の中で最大規模の火山灰流シートであり、最大層厚は1,000m以上もある。下部で流紋岩質の、上部で流紋デイサイト質の溶結凝灰岩からなり、岩体北部ではそのさらに上部に流紋岩質の溶結凝灰岩をともなう。これらの岩相間の関係は漸移的であり、場所によっては繰り返して出現することもある。流紋岩質の溶結凝灰岩は、径4~6mmの粗粒の斜長石・石英・カリ長石を多量に含み、苦鉄質鉱物として黒雲母・角閃石・不透明鉱物をを含む。長径数~十数cmの大型の本質岩片を多量に含む。流紋デイサイト質の溶結凝灰岩は、径3~5mmの粗粒の斜長石・石英を多く含み、苦鉄質鉱物として黒雲母・角閃石・輝石・不透明鉱物を比較的多く含む。いずれの溶結凝灰岩も長径10cmを超える大型の本質岩片を多量に含み、その中に径1cmを超える粗粒斜長石斑晶を多量に含むことを特徴とする。上部の流紋岩質溶結凝灰岩は下部のものに比べて本質岩片が径1cmほどと小型になる。



地質年代