災害名 焼岳火山1962年噴火(災害)
発生年月日 1962~63(昭37~38)年 主要被災地 山頂周辺
 災害要因 噴火内容(降灰・泥流発生)/噴火地点(中尾峠爆裂火口ほか)
概 要
   歴史時代になってからの焼岳火山における噴火記録は1907(明40)年以降の活動について詳細に残されており、1935(昭10)年までは毎年のように水蒸気噴火を中心とした噴火活動が繰り返されている。それらの中で1915(大4)年6月6日の大爆発で泥流が長野県側へ流れ下り、梓川を堰きとめて“大正池”が形成されたことはよく知られている。最新の活動は1962(昭37)年6月17日の水蒸気爆発で始まるもので、山頂北側の長さ500mほどの割れ目噴火口から起こった。そのすぐ北側にあった旧焼岳小屋が火山灰に押しつぶされ、2名の負傷者が出ている。松本市やさらに火口から60kmも離れた上田市や小諸市にも降灰した。なお、1995(平7)年2月11日14時25分に焼岳火山群の1つであるアカンダナ火山を貫いている安房トンネルの取付け道路工事現場において火山性ガスによる水蒸気爆発が起こり、工事関係者4名が死亡した。
焼岳山頂付近の1962年噴火口の1つ
(撮影:鹿野勘次)
 
ジオ点描
   火山噴火の中でも水蒸気爆発は意外に多い噴火様式である。地下深部からマグマが供給されても地表にまで達せずに火山噴火とはならず、熱だけが供給されることがある。その量がたとえわずかであっても、その温度は水が沸騰する100℃よりもはるかに高いから、地表付近にある地下水を簡単に水蒸気に変えてしまう。それが地下で蓄積されればそれが容易に爆発することになる。
 
文 献 産業技術総合研究所HP(2013)日本の火山データベース
気象庁 Web掲載版(2013)日本活火山総覧(第4版)
三宅康幸・小坂丈予(1998)長野県安曇村中ノ湯における1995年2月11日の水蒸気爆発.火山,43巻,113-121頁.
焼岳火山
焼岳火山群の新期焼岳火山群に属する火山体で、その中で最も新しく、現在も活動中の火山である。焼岳(標高2455m)を中心として、いくつかの溶岩、溶岩ドームとそれらにともなわれる火砕岩類からなる。現在の山頂部を作る溶岩ドームは約2,300年前に形成されたものである。歴史時代に入ってからの活動としては、1907(明40)年から1939(昭14)年まで水蒸気爆発が活発に繰り返され、特に1915(大4)年に水蒸気爆発にともない発生した泥流が梓川をせき止めて大正池を作ったことは有名である。最新の活動については事項解説『災害』の項目「焼岳火山噴火」を参照のこと。
焼岳火山群
飛騨山脈の南部にあって、焼岳火山を主峰とする複数の火山体の集まりであり、乗鞍火山帯の中で最近1万年間では最も活発な活動を続けている。形成時期により約12万~7万年前の旧期焼岳火山群と約3万年前以降の新期焼岳火山群に大別され、前者には岩坪山・大棚火山、割谷山火山が、後者には白谷山火山、アカンダナ火山、焼岳火山がそれぞれ該当する。全体に斜長石と角閃石の斑晶が目立つ安山岩質~デイサイト質の溶岩ドーム、厚い溶岩流、泥流堆積物、火砕流堆積物からなり、火砕流堆積物はすべて溶岩ドームの破壊によってできたblock and ash flow堆積物であり、激しい爆発的な噴火活動をほとんど行なっていない。
アカンダナ火山
焼岳火山群の最南端にあり、白谷山火山の南側に噴出し、アカンダナ山(標高2109m)を中心として新期焼岳火山群に属する火山体である。溶岩ドーム、溶岩、火砕岩類からなる。火山体のうち、頂上部を含めた岐阜県側で地すべり崩壊した崖がみられる。形成時期が約1万年前とされたことで、新たに定められた活火山の仲間入りをした火山でもある。



地質年代