地層名 笠谷層 かさだにそう K2
  代表地点 高山市奥飛騨温泉郷
錫杖岳(しゃくじょうだけ)
 形成時期 白亜紀最後期~古第三紀
   概 要
   笠ヶ岳コールドロンを構成する火山岩類のうち第2期に形成されたもので、岩体の西部にあたる錫杖岳(標高2,168m),大木場の辻(おおきばのつじ;標高2232m)から笠谷流域へかけての地域に分布する。外側コールドロンを層厚約1,600mで厚く埋積し、おもに斑晶の乏しい流紋岩溶岩からなり、凝灰質の砕屑岩層や溶結凝灰岩層をともない、ほぼ水平な構造を示す。分布域の西部ではコールドロンの床をなす飛騨帯構成岩類の飛騨花崗岩類を不整合に覆う。
 
高山市上宝町下佐谷における笠谷層の流理構造をもつ流紋岩溶岩の研磨面
(提供:原山 智,撮影:棚瀬充史)
 
  文 献 棚瀬充史・笠原芳雄・原山 智・小井土由光(2005)濃飛流紋岩周辺地域の後期白亜紀~古第三紀火山岩類.地団研専報,53号,159-171頁.  
笠ヶ岳コールドロン
飛騨山脈の笠ヶ岳(標高2898m)周辺に分布し、これまで「笠ヶ岳流紋岩類」と呼ばれてきた火山岩類に対して、それらの形成過程を強調して与えられている名称である。もともとの岩体はほぼ完全な楕円形状をしていたらしく、引き続く深成活動や後からの火成活動により現在はその東半分が失われており、東西約12km×南北約11kmの規模で分布している。二重の環状断層で区切られた二重陥没構造をもつコールドロンからなり、隆起量の大きい地域に分布しているためにその内部がよく観察できる。おもに流紋岩質~流紋デイサイト質の溶岩・溶結凝灰岩からなり、成層した砕屑岩やごく少量の安山岩質火砕岩をともなう。下位から、中尾層、笠谷層、穴毛谷層、笠ヶ岳山頂溶結凝灰岩層に区分され、これらはほぼ水平な堆積構造を示し、積算層厚3,000m以上、総体積400km³以上の岩体を形成している。環状断層に沿って花崗斑岩の岩脈が貫入し、とりわけ外側コールドロンの縁の岩脈は連続性がきわめて良く、典型的な環状岩脈をなしている。岩体北東部で奥丸沢花崗岩に貫入され,熱変成作用を受けている.
コールドロン
火山活動に関係して形成される凹地をカルデラというが、もともとは地形として認識できる場合に使われる用語であった。そのため、古い時代に形成された火山体で地形上の特徴が削剥されてわからなくなってしまった火山性陥没構造をコールドロンという。最近ではこれらの区別を厳密にしない傾向があり、すべて「カルデラ」と表現されている場合がしばしばみられる。
飛騨帯構成岩類
飛騨帯は、岐阜県の北部から北陸地方へかけての地域に広がる変成岩類と花崗岩類からなる地質帯である。ただし、これらの構成岩類がこの地域のどこにでも分布しているわけではなく、それ以降に形成された岩石類に覆われたり貫かれているために、実際にはかなり限られた地域にだけ分布する。変成岩類は総称して「飛騨片麻岩類」と呼ばれ、それらを形成した広域変成作用の時期についてはいくつかの見解があるが、おおよそ3億年~4億5000万年前(古生代石炭紀・シルル紀・デボン紀)と2億4000万年前ごろの少なくとも2回にわたり重複した変成作用で形成されたとされている。花崗岩類はこれまで「船津花崗岩類」と呼ばれ、1億8000万年前(中生代ジュラ紀)に飛騨外縁帯構成岩類の分布域にまで及ぶ範囲に一斉に貫入したことで飛騨片麻岩類に熱変成作用をもたらしたと考えられてきた。しかし、それらの中には古い年代を示す岩体もあり、一律に扱うことができないことがわかってきたため、それらの形成時期を少なくとも2期に分けて区別するようになった。変成岩類も花崗岩類も複数回におよぶ複雑な過程を経て形成されているために、すべての飛騨帯構成岩類を全域にわたって一定の基準で表現することはかなりむずかしいことから、ここではそれらを「飛騨変成岩類」、「飛騨花崗岩類」と呼び、それぞれを6種類と10種類の岩相に区分することで表現する。そのため1つの岩相で示される岩石の中にも別の変成・深成作用で形成された岩石が含まれている場合もある。

不整合
重なった地層の間において著しい堆積間隙のある状態で堆積している場合をいい、実際にはその間に隆起・削剥や深成岩類の貫入、構造運動などの事象が起こっていることに着目して用いられることが多い。整合の対語である。
溶結凝灰岩
火砕流によりもたらされた堆積物が溶結作用を受けると、その程度により強溶結、弱溶結、非溶結凝灰岩となり、一般には強溶結凝灰岩をさしていう。おもに火山灰が集まって形成された岩石ではあるが、強く圧密化した岩石となり、きわめて堅硬な岩石となる。
地質年代