庄川火山-深成複合岩体
岐阜県北西部の庄川上流域に約40km×25kmの規模で分布する火山岩類と花崗岩類は、濃飛流紋岩および関連する花崗岩類よりも新しい時期に形成されたものであることが明らかにされ、それらを庄川火山-深成複合岩体と命名して濃飛流紋岩と区別して扱うようになった。ただし、まだ全体にわたる詳細な調査・検討がなされていないため、とくに火山岩類についてはおもに分布域の南部において層序区分がなされているだけであり、それ以外の地域では「未区分火山岩類(S0)」としてある。区分された火山岩類は、下位から、六厩川層、大原谷溶結凝灰岩層、シツ谷層、金谷溶結凝灰岩層、なお谷層、宮谷溶結凝灰岩層に分けられており、前三者が「庄川コールドロン」と呼ばれるコールドロンの外側ユニット(コールドロン外ユニット)を、後三者がコールドロンの内側ユニット(コールドロン内ユニット)をそれぞれ構成している。貫入岩類は、花崗岩ユニットとしてコールドロンの内部および縁辺部を貫いており、それらの産状や岩相上の特徴などから、落部川文象斑岩、白川花崗岩類(鳩ヶ谷・平瀬・森茂岩体)、御母衣環状岩脈の3種類に分けられる。
シツ谷層
庄川火山-深成複合岩体のコールドロン外ユニットの上部層をなし、御母衣湖東岸地域からその北方の森茂(もりも)川流域や御前岳(標高1816m)周辺地域、御母衣湖西岸地域からその北方の大白川下流域へかけての地域に広く分布する。最大層厚が1,000m以上あり、下部は流紋岩質の火山礫凝灰岩や結晶凝灰岩などの火山砕屑岩層からなり、上部は火山礫凝灰岩を主体として、高マグネシウム安山岩の溶岩や砕屑岩類を挟み、下位層である大原谷溶結凝灰岩層の巨大ブロックを多量に含むとともに、石英斑岩や文象斑岩がシート状に貫いている。北俣谷閃緑岩、福島谷・秋町花崗岩、大原谷溶結凝灰岩層を覆い、白川花崗岩類(御母衣岩体)に貫かれる。
溶結凝灰岩
火砕流によりもたらされた堆積物が溶結作用を受けると、その程度により強溶結、弱溶結、非溶結凝灰岩となり、一般には強溶結凝灰岩をさしていう。おもに火山灰が集まって形成された岩石ではあるが、強く圧密化した岩石となり、きわめて堅硬な岩石となる。
御母衣環状岩脈
庄川火山-深成複合岩体の花崗岩ユニットの一つをなし、大白川下流域から庄川東岸域を経て、御前岳(標高1816m)周辺地域へかけて、庄川コールドロンを縁どるように南へ膨らんだ半円弧状をなして最大幅約1.5kmで断続的に分布し、さらにその北方延長上の猿ヶ野馬場山(さるがばんばやま)(標高1827m)から木滝谷へかけての地域や大白川下流域から北方へかけて庄川西岸域の山腹にも岩脈として分布する。岩体の中心部は完晶質の角閃石黒雲母花崗閃緑岩からなり、周縁部では斑岩状となる。周囲の火山岩類へは高角度で貫入しており、熱変成作用の及んでいる範囲は狭い。
白川花崗岩類(鳩ヶ谷・平瀬岩体)
庄川火山-深成複合岩体の花崗岩ユニットの一つをなし、庄川沿いの低地に一連の岩体として分布する。おおよそ南半部に分布する平瀬岩体は約2×4kmの規模で、北半部に分布する鳩ヶ谷岩体は約4×10kmの規模でそれぞれ分布する。平瀬岩体全域と鳩ヶ谷岩体の中央部は中~細粒あるいは中~粗粒の黒雲母花崗岩からなり、鳩ヶ谷岩体の西部はこれに角閃石が含まれるようになり、同岩体の北部は角閃石黒雲母花崗閃緑岩~トーナル岩からなる。コールドロン内ユニットを貫いて強い熱変成作用を与え、その貫入接触面は一般にかなり低角度であり、浅所へ迸入した岩体の天井部分が露出している。
熱変成作用
既存の岩石が熱いマグマと接触して岩石組織や組成を変えられてしまう現象で、接触変成作用ともいう。この作用で形成された岩石を熱変成岩あるいは接触変成岩といい、これを「ホルンフェルス」と呼ぶこともある。これはドイツ語で、ホルン=角のように固くなったフェルス=様子を意味しており、もともとは泥岩を源岩とする熱変成岩に用いられた用語であるが、すべての熱変成岩に用いられることが多い。熱をもたらすマグマは接触した岩石に熱を奪われて冷却していくから、熱変成作用は花崗岩体を形成するような大きな容量をもつマグマの周辺で起こりやすい。
コールドロン
火山活動に関係して形成される凹地をカルデラというが、もともとは地形として認識できる場合に使われる用語であった。そのため、古い時代に形成された火山体で地形上の特徴が削剥されてわからなくなってしまった火山性陥没構造をコールドロンという。最近ではこれらの区別を厳密にしない傾向があり、すべて「カルデラ」と表現されている場合がしばしばみられる。
地質年代