名称 高山軽石層 たかやまかるいしそう
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場所 高山市上野(うわの)町上野平/郡上市高鷲町上野(うえの)高原
形成時期 更新世中期(30万~35万年前)
概要    飛騨山脈の西鎌(にしかま)尾根から樅沢岳(もみさわだけ;標高2,755m)周辺に至る長野県境となる山稜部には樅沢岳火山奥飛騨火砕流堆積物が分布している。飛騨山脈が激しい隆起運動の場にあることでこの堆積物はかなり削剥されてしまっているが、その噴出口は西蒲尾根の南方にあたる蒲田(がまた)川左俣谷最上流部の水鉛谷(すいえんだに)にある水鉛谷給源火道として残されている。ここからもたらされた火山灰層(降下火砕堆積物)がこの軽石層であり、キラキラと輝く黒雲母を多量に含み、奥飛騨火砕流堆積物と同じ含有鉱物の特徴をもち、厚さ50cmほどで飛騨地方各地の古い河岸段丘の上や緩やかな山麓に分布している。一般に日本列島では空中へ噴き上げられた火山灰は東方へ向かって飛ばされるため、この火山灰層は長野県側にも分布し、「大町テフラ(クリスタルアッシュ)」と呼ばれている。ところがそれとは大きく異なる南西へ向かっても飛んでおり、80km以上も離れた郡上市の上野高原にも分布しており、それだけかなり大規模な噴火活動でもたらされた火山灰と考えられている。
ジオ点描    火山活動で空中に噴き上げられる火山灰は、風に乗って空中を移動して風下側に降下し、地表を覆って降下火砕堆積物を形成していく。その出発地点である噴火口は地下からの出口にあたるから、別のものに貫かれて置き換えられることがなければ、地表へもたらされた火山噴出物が削られて無くなっても、あるいは火山体そのものが削剥されてしまっても必ず残されているはずである。
文献
  • 岩田 修(1996)飛騨テフラの噴出源を求めて(2)-特に磁鉄鉱からみて,高山軽石層は奥飛騨火砕流堆積物と対比できるか?.岐阜県地学教育,33号,33-52頁.
  • 写真 郡上市高鷲町上野高原でみられる高山軽石層の露頭(崖中央の赤茶色部)
    (撮影:小井土由光)
    写真 上野高原における高山軽石層の近接写真
    (撮影:小井土由光)
    樅沢火山
    飛騨山脈の西鎌(にしかま)尾根から樅沢岳(標高2755m)周辺の山稜部に分布する奥飛騨火砕流堆積物がその南方で発見された水鉛谷給源火道から噴出したことが明らかにされ、この地域周辺に想定された火山体に対して命名されたものである。飛騨山脈が激しい隆起運動の場にあることで、その山体はほとんど削剥されてしまっているが、そこからは奥飛騨火砕流堆積物だけではなく、広範囲に降下火砕堆積物を飛ばしており、岐阜県側では高山軽石層、長野県側では「大町テフラ(クリスタルアッシュ)」と呼ばれる。
    奥飛騨火砕流堆積物
    飛騨山脈の樅沢(もみさわ)岳(標高2755m)周辺から南方へ蒲田(がまた)川流域や笠谷流域の山腹に分布し、水鉛谷給源火道から噴出して現在の地形に近い河谷に沿って流れた火砕流によりもたらされた堆積物である。推定分布面積70km²以上、推定総噴出量10km³以上、最大層厚約200mで、おもに流紋岩質の溶結凝灰岩からなり、含まれる結晶片は斜長石・石英・黒雲母に富み、柱状の角閃石や輝石をともなう。
    水鉛谷給源火道
    蒲田川左俣谷支流の水鉛谷の南側において奥丸沢花崗岩の中に径約600×500mの規模で楕円形をなして尖塔状の形態をとってそびえ立つ。おもに多斑晶質の花崗斑岩からなり、周縁部に流紋岩質凝灰岩、デイサイト質ないし安山岩質凝灰岩などが分布し、珪長質岩と苦鉄質岩が混ざって縞模様をなす部分も認められる。火山岩類については構成鉱物の化学組成などから奥飛騨火砕流堆積物と同源の産物であることが明らかにされている。


    地質年代