名称 コランダム こらんだむ
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場所 飛騨市河合町羽根 羽根谷上流
形成時期 不詳(約2億4000万年前以前)
概要    自然界で最も硬い鉱物はダイヤモンドであり、それに次いで硬い鉱物として知られており、日本名では鋼玉と言う。純粋なものではアルミニウム(Al)と酸素(O)が強く結合してできた酸化アルミニウム(Al₂O₃)という組成をもち、無色透明の結晶になる。このうちAlの一部がクロム(Cr)に置き換わったものは赤色透明の結晶となり、これが“ルビー”である。同じように鉄(Fe)に置き換わると青色透明の結晶となり、これが“サファイア”である。これらのうち美しいものは無色透明のものも含めて宝石となる。また人造結晶として合成宝石のほかに硬度が高いことを利用して精密機器の軸受、研磨剤などに使われ、かつてはレコードの針にも使われていた。岐阜県においては飛騨市河合町の羽根谷上流に露出する飛騨帯構成岩類縞状片麻岩中において最大で4cmにも達する紅色を帯びたルビーとして含まれている。この片麻岩は玄武岩質の火山岩が高温の変成作用を受けて形成されたもので、ルビーは既存の白雲母という鉱物が分解されてできたと考えられている。なお、ルビーを含む片麻岩の標本は岐阜県博物館に展示されている。
ジオ点描    「色をつける」という言葉がある。あることに追加して価値を高める(付加価値をつける)といった意味であり、そのままジオの世界にもあてはめられ、鉱物(結晶)は色がついて宝石に化ける。色のつけ方には、微量元素の添加や陰イオンの欠損による発色、放射線の影響による光の吸収、微粒子不純物の混入による着色、といったいろいろな“手法”がある。
文献
  • Suzuki M. and Kojima J.(1970) On the Association of Potassium Feldsper and Corundum Found in the Hida Metamorphic Belt.Jour. Mineralogy, Petrology and Economic Geology, vol.63, p.266-274.
  • 写真 飛騨市河合町の羽根谷に分布する縞状片麻岩中に含まれる赤紫色のコランダム
    (岐阜県博物館所蔵,撮影:棚瀬充史)
    写真 準備中
    縞状片麻岩
    おもに岐阜県最北部にあたる宮川以西の万波川から小鳥(おどり)川以北の地域に広く分布し、花崗岩質片麻岩の分布域にほぼ重なる地域に分布する。細粒の黒雲母片麻岩・角閃石片麻岩・単斜輝石片麻岩が厚さ数cmの互層をなし、それらが縞状をなす岩石である。野外では、しばしば花崗岩質片麻岩などの脈状岩を密接にともない、その中に岩片として包有されるが、それらは地質図上で区別して表現できないため省略してある。また、これらの中にはアルミナ成分に富む泥質岩起源の片麻岩も含まれており、コランダム(ルビー)を含む片麻岩も見られる。
    飛騨帯構成岩類
    美濃帯は、飛騨外縁帯の南側にあってかなり幅広く分布する地質帯で、岐阜県内でも広範囲にわたる地域を占める。そこは、古生代石炭紀から中生代白亜紀最前期にかけての時期にチャート・石灰岩・砂岩・泥岩・礫岩などの海底に堆積した堆積岩類と海底に噴出した緑色岩(玄武岩質火山岩類)でおもに構成されている。下図に示すように、海洋プレートの上に噴出した玄武岩質火山岩類は海底や火山島(海山)を形成して、その上にチャートや石灰岩・珪質泥岩などを徐々に堆積させながら大陸へ向かって年間数cmほどの速さで移動していく。海洋プレートは海溝部で大陸の下へ沈み込んでいくが、堆積物はいっしょに沈み込むことができず、はぎ取られたり、大陸側から運び込まれた砂岩・泥岩などとともに大陸側へ押し付けられ、混じり合って複合体(コンプレックス)を作りあげていく。こうした作用を付加作用といい、それにより形成された堆積物は付加体堆積物と呼ばれ、これまでそれらを総称して「美濃帯中・古生層」、「美濃帯中生層」、「美濃帯堆積岩コンプレックス」などといろいろな表現で呼ばれてきたが、ここではこれらを「美濃帯堆積岩類」と呼ぶ。それらは、それまで順に重なっていた地層が付加作用にともなって低角の断層を境にして屋根瓦のように繰り返して覆うように重なったり、複雑に混じりあったメランジュと呼ばれる地質体を構成し、整然とした地層として順番に連続して重なるようなことがほとんどない。そのため全域にわたり個々の地層名を付して表現することがむずかしいため、ここでは構成岩石の種類(岩相)によって表現する。これらの構成岩石は単独でも複数の組合せでもある程度の大きさを持つ地質体を形成しており、その大きさはcmオーダーの礫からkmオーダーの岩体までさまざまである。これらは岩相、形成時期、形成過程などの類似性から複数の地質ユニットに区分され、ユニット間は衝上断層で接することが多いが、その区分による表現はここでは用いない。
    岐阜県博物館
    岐阜県置県100周年記念事業として建設され、岐阜県の姿を自然・人文両分野の諸資料によって紹介する総合博物館である。自然分野では岐阜県内の地質、化石、動植物について「自然の生い立ち」、「自然のすがた」、「自然とひと」という3つのテーマで常設展示がなされているほか、各種の企画展や出前授業、講演会等のイベントなど多方面にわたる博物館活動が展開されている。


    地質年代