化石名 フズリナ -
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地層名 美濃帯堆積岩類(大垣市赤坂町 金生山
対象時代 石炭紀~ペルム紀
概要    古生代の石炭紀~ペルム紀にいた石灰質の殻をもつ有孔虫であり、温暖な地域の海底付近に棲息し、当時のサンゴ礁と考えられている石灰岩中に多量に含まれる化石として知られる。形がほとんど紡錘形をしていることから「紡錘虫」とも呼ばれる。長さは数mmから約2.5cmで、長径が1cmにもなるものもある。単細胞の原生動物であるが、進化の過程で複雑な殻の形態をもつようになり、それが示準化石として重要な役割を演じている。岐阜県地域では美濃帯堆積岩類の石灰岩中にほぼ普遍的に含まれているが、古生代末に起きた生物大量絶滅(PT境界)にかかわって突然絶滅した化石としても注目される。
ジオ点描    大垣市北西部の金生山はおもに赤坂町地域に広がることから、山体の大部分をつくる石灰岩体は「赤坂石灰岩」と呼ばれる。そこに含まれるフズリナの一種Parafusulina japonica(パラフズリナ・ジャポニカ)は、1874(明7)年にドイツの古生物学者ギュンベルにより日本産化石に関する最初の論文として報告されたものである。そのためここが「日本の古生物学発祥地」とされている。
文献
  • 写真 山県市美山町神崎伊往戸に露出する石灰岩中のフズリナ
    (撮影:小井土由光)
    写真 郡上市八幡町東安久田(ひがしあくた)に露出する石灰岩中のフズリナ
    (撮影:小井土由光)
    示準化石
    地質時代を特定できる化石のことで、標準化石ともいう。こうした化石となる条件には、個体数が多いこと、地理的な分布が広いこと、特定の形態をもった状態での生存期間が短いことなどが挙げられ、一般には同一系統内では分類単位が大きいほど特定できる時間の幅が長くなる。こうした化石が含まれることで、離れた地域の間で地層の対比と時間の同定が可能となり、「地層同定の法則」が成り立つ。
    PT境界
    古生代の最後にあたるペルム紀(Permian)と中生代の最初にあたる三畳紀(Triassic)の境界(約2億5,200万年前)であり、この境界において地球規模で生物の大量絶滅が起きたことで注目されている。大量絶滅は、約1000万年にもわたって海洋酸素が大規模に欠乏したことで起こったと考えられており、多岐にわたる海棲生物種の約95%が絶滅したとされている。2010年に舟伏山北部地域の林道沿いで、美濃帯堆積岩類のペルム紀後期のチャート層の上に重なる粘土岩層がPT境界を示す地層とされる論文が公表された。ちなみに日本ラインに分布するチャート層は酸素欠乏時期が終わり、酸素が徐々に回復していく時期に堆積したものとされている。
    石灰岩
    美濃帯堆積岩類の中には、金生山の赤坂石灰岩、舟伏山地域の舟伏山石灰岩、石山地域の石山石灰岩などと呼ばれる比較的大きな石灰岩の岩体が分布しており、石灰石資源として採掘されていたり、場所によっては鍾乳洞地帯を形成している。古生代のペルム紀に形成された緑色岩(玄武岩質火山岩類)からなる海山を覆うサンゴ礁を構成していた石灰質生物の遺骸が集積して形成されたものであり、一般に緑色岩と密接にともなって美濃帯堆積岩類の中では最も古い時期に形成された岩石である。
    金生山
    伊吹山地の南東端にあり、美濃帯堆積岩類の石灰岩で構成されている標高217mの山である。この石灰岩は古生代ペルム紀に低緯度地方の火山島の上にできたサンゴ礁周辺の環境を表わしていると考えられている。その中からおもに巻貝や二枚貝、ウミユリ、サンゴ、フズリナ、石灰藻などの化石が数多く産出することで知られており、「日本の古生物学発祥の地」と呼ばれることがある。ここから産出した化石は南麓にある金生山化石館に多数展示されている。日本有数の石灰石の産出地であり、平野に近いという立地条件もあり、古くから石灰石や大理石の採掘が盛んに行われ、現在も複数の露天掘り鉱山が稼働している。なお、山の名称は「かなぶやま」と呼ぶのが正しいとされている。

    地質年代
    美濃帯堆積岩類
    美濃帯は、飛騨外縁帯の南側にあってかなり幅広く分布する地質帯で、岐阜県内でも広範囲にわたる地域を占める。そこは、古生代石炭紀から中生代白亜紀最前期にかけての時期にチャート・石灰岩・砂岩・泥岩・礫岩などの海底に堆積した堆積岩類と海底に噴出した緑色岩(玄武岩質火山岩類)でおもに構成されている。下図に示すように、海洋プレートの上に噴出した玄武岩質火山岩類は海底や火山島(海山)を形成して、その上にチャートや石灰岩・珪質泥岩などを徐々に堆積させながら大陸へ向かって年間数cmほどの速さで移動していく。海洋プレートは海溝部で大陸の下へ沈み込んでいくが、堆積物はいっしょに沈み込むことができず、はぎ取られたり、大陸側から運び込まれた砂岩・泥岩などとともに大陸側へ押し付けられ、混じり合って複合体(コンプレックス)を作りあげていく。こうした作用を付加作用といい、それにより形成された堆積物は付加体堆積物と呼ばれ、これまでそれらを総称して「美濃帯中・古生層」、「美濃帯中生層」、「美濃帯堆積岩コンプレックス」などといろいろな表現で呼ばれてきたが、ここではこれらを「美濃帯堆積岩類」と呼ぶ。それらは、それまで順に重なっていた地層が付加作用にともなって低角の断層を境にして屋根瓦のように繰り返して覆うように重なったり、複雑に混じりあったメランジュと呼ばれる地質体を構成し、整然とした地層として順番に連続して重なるようなことがほとんどない。そのため全域にわたり個々の地層名を付して表現することがむずかしいため、ここでは構成岩石の種類(岩相)によって表現する。これらの構成岩石は単独でも複数の組合せでもある程度の大きさを持つ地質体を形成しており、その大きさはcmオーダーの礫からkmオーダーの岩体までさまざまである。これらは岩相、形成時期、形成過程などの類似性から複数の地質ユニットに区分され、ユニット間は衝上断層で接することが多いが、その区分による表現はここでは用いない。