化石名 恐竜化石 きょうりゅうかせき
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地層名 手取層群
(高山市荘川町 大黒谷(おおぐろだに))
対象時代 白亜紀前期
概要    岐阜県内で恐竜化石と考えられている化石が発見されている場所は、いずれも手取層群が分布する白川村の大白川(おおしらかわ)地域にある白水湖上流の河床と高山市荘川町の尾神郷(おがみごう)川支流の大黒谷流域の2地域である。前者は河床礫の中から発見されたものであるが、後者は赤岩亜層群相当層の最下部にあたるシルト質砂岩層中から発見されている。ここでは獣脚(じゅうきゃく)類と考えられている歯が2点発見されており、そのほかに鳥脚類(イグアナドン)と考えられている歯1点が、分類不明の脊椎動物の骨片2点がそれぞれ発見されている。とりわけ獣脚類と考えられている歯の1点は単体の歯であり、最大長13mm、最大幅4.7mmの大きさで、歯根部は欠けているが、ほぼ完全な形を残している。さらに同じ地層からはカメ類の卵殻化石2点とともに獣脚類トロオドン科の可能性が高い恐竜卵殻化石5点も発見されている。ちなみに獣脚類には鳥類も含まれるが、獣脚類から鳥類を除いた残りのグループを非鳥類型獣脚類と呼び、それらは二足歩行をし、ティラノサウルスのような大型肉食恐竜など肉食のものが多いとされている。
ジオ点描    なぜか恐竜化石が見つかると、他の化石ではあまり起きないような大騒ぎとなる。まったくなぜなのかと思ってしまうが、やはり恐竜そのものにひきつける魅力があるのであろう。巨体となった動物への憧れのようなものがあり、そのように繫栄したにもかかわらず、突然、絶滅してしまったことも何かを意識させているのかもしれない。それだけ恐竜は人間味を備えているように思われる。
文献
  • 岐阜県恐竜化石学術調査推進委員会(1993)恐竜化石学術調査報告書.岐阜県,46P.
  • 写真 高山市荘川町尾神郷の大黒谷において手取層群から産出した獣脚類の歯
    (岐阜県博物館所蔵)
    写真 準備中

    赤岩亜層群相当層
    手取層群を形成時期で区分した場合の上部層にあたり、中生代白亜紀前期の後半にあたる時期に形成された地層群である。ほぼすべてが陸成層からなり、扇状地あるいは蛇行河川をともなう河川平野の環境で形成された地層群からなる。岐阜県内においては、高山市荘川町の尾神郷川上流から白川村の大白川最上流へかけての地域(別山(べっさん)東方地域)に比較的広く分布し、おもに塊状の粗粒砂岩層がかなり厚く分布し、オルソコーツァイトの中~大礫を多量にともなう礫岩層がしばしば挟まれる。



    地質年代
    手取層群
    手取層群は、福井県東部から石川県南東部、岐阜県北部、富山県南部へかけての地域に分かれて分布し、中生代のジュラ紀前期から白亜紀前期にかけての時代に形成された海成~陸成の地層である。おもに砂岩・泥岩・礫岩などの砕屑岩類からなり、恐竜などの爬虫類化石を産出することで知られる。大きくみると浅海成層から陸成層へと移り変わっていることで、これまでは3つの亜層群(九頭竜・石徹白(いとしろ)・赤岩亜層群)に区分されていた。しかし、これら3亜層群の区分に関しては、形成時代の見直しが化石(特にアンモナイト化石)に基づいて進められてきたことで、堆積環境の変遷も含めていくつかの見解が示されており、それにともなっていくつかの層序区分の考えが示されてきた。ここではこれまでに一般的に用いられてきた3亜層群の名称をそのまま用い、形成時期に重点をおいた区分として、九頭竜・石徹白亜層群の境界をほぼ中生代ジュラ紀と白亜紀の境界(約1億4,550万年前)、石徹白・赤岩亜層群の境界をほぼ白亜紀前期の約1億2,500万年前として表現する。ただし、分かれて分布する個々の地域すべてから時代決定に有効な化石が産出するわけではなく、年代測定の問題も含めて課題の残された地域もあるため、ここでは現段階での資料に基づいて区分し、時代不明の未区分層(Tu)として扱う地域もある。岐阜県地域において区分できる地域では、九頭竜亜層群は分布せず、石徹白・赤岩亜層群が分布し、それぞれ石徹白亜層群相当層、赤岩亜層群相当層として記述する。