化石名 恐竜の足跡化石 きょうりゅうのあしあとかせき
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地層名 手取層群
(白川村大白川(おおしらかわ))
対象時代 白亜紀前期
概要    1989(平成元)年に白川村大白川の白水湖上流に分布する手取層群の細粒砂岩層の表面に35個に及ぶ多数の凹型の足跡化石が発見された。いずれも3本の指が明瞭に残ることからイグアノドン型の草食恐竜の足跡化石と認定され、これが岐阜県内で初めて発見された恐竜の化石である。足跡の残る地層の表面には漣痕(れんこん)と呼ばれるさざ波の痕跡がついており、これは静かな内湾や湖岸において水の流れや波がつくったもので、それを踏みつけるような形で残されていたことは恐竜が岸辺を歩いていたことを示している。多くの足跡の中には、連続する5個と3個の足跡が連れ立って歩いたようにつけられており、その方向が漣痕の向きとほぼ平行することから2頭の恐竜が湖岸に沿って平行に歩いたのであろうと考えられている。
ジオ点描    足跡化石はその形が残されることで意味があり、踏まれた場所の状態や踏まれた直後の状況などの多くの条件が揃っていないと残らない。足跡化石が印された地層面が露出しなければ確認できず、露出してしまうとすぐに削られたり風化していくために保存がむずかしく、露出してから時間が経っていないことも確認できる条件となる。こうしたかなり限られた条件が揃っていないと発見されないことになる。
文献
  • 鹿野勘次・國光正宏・杉山政広 (2001) 岐阜県白川村の下部白亜系手取層群から産出した恐竜の足跡化石群.地球科学,55巻,329–338頁.
  • 写真 白川村大白川上流で発見された恐竜の足跡化石(レプリカ)
    (岐阜県博物館所蔵)
    写真 白川村大白川上流で発見された恐竜の足跡化石の1つ
    (撮影:鹿野勘次)
    手取層群
    手取層群は、福井県東部から石川県南東部、岐阜県北部、富山県南部へかけての地域に分かれて分布し、中生代のジュラ紀前期から白亜紀前期にかけての時代に形成された海成~陸成の地層である。おもに砂岩・泥岩・礫岩などの砕屑岩類からなり、恐竜などの爬虫類化石を産出することで知られる。大きくみると浅海成層から陸成層へと移り変わっていることで、これまでは3つの亜層群(九頭竜・石徹白(いとしろ)・赤岩亜層群)に区分されていた。しかし、これら3亜層群の区分に関しては、形成時代の見直しが化石(特にアンモナイト化石)に基づいて進められてきたことで、堆積環境の変遷も含めていくつかの見解が示されており、それにともなっていくつかの層序区分の考えが示されてきた。ここではこれまでに一般的に用いられてきた3亜層群の名称をそのまま用い、形成時期に重点をおいた区分として、九頭竜・石徹白亜層群の境界をほぼ中生代ジュラ紀と白亜紀の境界(約1億4,550万年前)、石徹白・赤岩亜層群の境界をほぼ白亜紀前期の約1億2,500万年前として表現する。ただし、分かれて分布する個々の地域すべてから時代決定に有効な化石が産出するわけではなく、年代測定の問題も含めて課題の残された地域もあるため、ここでは現段階での資料に基づいて区分し、時代不明の未区分層(Tu)として扱う地域もある。岐阜県地域において区分できる地域では、九頭竜亜層群は分布せず、石徹白・赤岩亜層群が分布し、それぞれ石徹白亜層群相当層、赤岩亜層群相当層として記述する。
    恐竜の足跡化石
    飛騨市神岡町横山の高原川沿いの両岸に分布する手取層群の砂岩泥岩互層から1999(平11)年に4個の凸型の恐竜の足跡化石が発見された。砂岩層は泥岩層にくらべて固いために庇(ひさし)のように突き出ており、その底面から発見された足跡化石は、3本指で丸い形態をなすことから、イグアノドン型の草食恐竜の足跡化石と考えられている。軟らかい状態の砂や泥が動物に押しつけられ、そこがすみやかに埋められることで地層の表面に凹型の形として足跡が残される。その上を埋めた砂や泥が固まると、その地層の底面には下位の地層にある凹型の足跡が凸型に映されて残される。恐竜が足跡を残すような環境は陸域に限られ、しかも砂と泥が明瞭にわけられて堆積するような広がりをもった場所になる。そこは当時の大陸の東端にあった大きな盆地内を流れる網状河川沿いの後背湿地のような場所と考えられている。なお、この足跡化石のある砂岩層はそのまま採取され、同時に付近に転がっていた砂岩層から得られた1個の足跡化石とともに、岐阜県博物館に保管されている。



    地質年代
    手取層群
    手取層群は、福井県東部から石川県南東部、岐阜県北部、富山県南部へかけての地域に分かれて分布し、中生代のジュラ紀前期から白亜紀前期にかけての時代に形成された海成~陸成の地層である。おもに砂岩・泥岩・礫岩などの砕屑岩類からなり、恐竜などの爬虫類化石を産出することで知られる。大きくみると浅海成層から陸成層へと移り変わっていることで、これまでは3つの亜層群(九頭竜・石徹白(いとしろ)・赤岩亜層群)に区分されていた。しかし、これら3亜層群の区分に関しては、形成時代の見直しが化石(特にアンモナイト化石)に基づいて進められてきたことで、堆積環境の変遷も含めていくつかの見解が示されており、それにともなっていくつかの層序区分の考えが示されてきた。ここではこれまでに一般的に用いられてきた3亜層群の名称をそのまま用い、形成時期に重点をおいた区分として、九頭竜・石徹白亜層群の境界をほぼ中生代ジュラ紀と白亜紀の境界(約1億4,550万年前)、石徹白・赤岩亜層群の境界をほぼ白亜紀前期の約1億2,500万年前として表現する。ただし、分かれて分布する個々の地域すべてから時代決定に有効な化石が産出するわけではなく、年代測定の問題も含めて課題の残された地域もあるため、ここでは現段階での資料に基づいて区分し、時代不明の未区分層(Tu)として扱う地域もある。岐阜県地域において区分できる地域では、九頭竜亜層群は分布せず、石徹白・赤岩亜層群が分布し、それぞれ石徹白亜層群相当層、赤岩亜層群相当層として記述する。