化石名 珪藻 けいそう
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地層名 阿多岐層
対象時代 新第三紀鮮新世~第四紀更新世前期
概要    単細胞の藻類(植物プランクトン)の仲間で、淡水から海水まで広く分布し、現生のものでも多様な環境下で生息している。細胞が珪酸(SiO₂)でできた殻に覆われており、弁当箱のように外殻と内殻が組み合わされた構造をしている。海や湖などで大量に増殖して死滅すると、その材質から殻だけからなる化石として残りやすく、その生育環境をかなり有効に示す示相化石としての役割をもつ。岐阜県地域では烏帽子・鷲ヶ岳火山大日ヶ岳火山の基底部付近に分布する阿多岐層の中に珪藻土として多く含まれる。
ジオ点描    珪藻は大量に増殖して死滅することでほぼ珪藻の殻だけからなる堆積物として出土することが多く、そうした堆積物を珪藻土という。珪藻の殻が多孔質で、吸水性や吸着性に優れているという特性を持つことから、珪藻土は吸湿性の良い住宅用壁材やろ過材、火に強い土として七輪やコンロなど多方面に使われている。能登の輪島地域では近隣で産出する珪藻土が輪島塗の漆器堅牢化の下塗材として用いられている。
文献
  • 写真 白鳥町阿多岐における阿多岐層にみられる珪藻土層(白色層部)
    (撮影:小井土由光)
    写真 阿多岐層に含まれるケイソウ化石の顕微鏡写真
    (10μm=0.01mm)(撮影:酒向光隆)
    示相化石
    すべての生物は環境に適応して生活していたはずであるから、すべての化石はその生息環境を示すが、それらの中で生息条件が限定されていること、現生種との関係から生息環境の推察が可能であること、現地性のものであることなどの条件を持ち、それが含まれる地層の堆積環境を明確に示す化石を指す。
    烏帽子・鷲ヶ岳火山
    郡上市と高山市の境界にまたがり、南北約33km、東西約18kmの広範囲に広がる火山体であり、復元総体積は約66km³とされている。その中央部に南北に流れる一色川により大きく烏帽子岳(標高1625m)と鷲ヶ岳(標高1671m)の山体に分けられており、多くの谷により開析されているため、火山地形はほとんど残されていない。九頭竜火山列における他の火山が溶岩層を主体とする成層火山を形成しているのに対して、火砕流や岩屑なだれによる堆積物をともなう点がやや異なる。大規模な山体崩壊堆積物と水底堆積物を境に古期火山と新期火山に分けられており、前者はおもに山体の西部から北部にかけて分布し、阿多岐層を覆い、角閃石斑晶に富む安山岩質溶岩と同質の火砕流堆積物などからなる。後者はおもに山体の南部から東部にかけて分布し、前者に比べて角閃石斑晶の少ない安山岩類からなり、複数枚の溶岩層やblock and ash flow堆積物などで構成され、それらを覆う土石流堆積物などが山麓部に分布する。
    大日ヶ岳火山
    長良川の最上流部域にあって、大日ヶ岳(標高1709m)を中心に南北約8km、東西約10kmに広がる火山体であり、復元総体積は約16km³とされている。おもに比較的小規模な安山岩質の溶岩層からなることを特徴としている。山頂部付近の2ヶ所に火口跡と推定されている凹地があり、すべてそれらから噴出したと考えられている。火砕流堆積物や火山角礫岩などの火砕岩は少ない。九頭竜火山列の火山体の中では比較的若い時期に活動した火山である。


    地質年代
    阿多岐層
    長良川の最上流部にあたる烏帽子・鷲ヶ岳火山および大日ヶ岳火山の山麓において、見かけ上は両火山体を構成する火山岩類の基底層のように点在して分布する。層厚は最大で40mほどであり、凝灰質砂岩・シルト岩などの湖沼成の堆積物からなり、場所により珪藻土をともなう。ただし、すべてほぼ同じ時期に形成された地層であるかは不明であり、両火山の活動に関連した堆積物であるかも明確でない。