断層名 手賀野断層(概説) てがのだんそう
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場所 中津川市手賀野
概要    中津川市街地にある手賀野付近から中央自動車道の中津川IC付近を通り、中津川市東美濃ふれあいセンター西方の津戸井(つどい)付近まで全長約4.8kmで延びる短い縦ずれ断層である。屏風山(びょうぶさん)断層と平行にその北側に走り、それと同じような特徴を示し、断層の南側が隆起している。全体が平坦な丘陵地あるいは段丘面を横切っており、とりわけ手賀野付近においては北側低下の撓曲も確認でき、上位(変位量23m)、中位(同12m)、下位(同5m)の段丘面それぞれで低断層崖を作っている。中津川IC西方の中津川市中垣外(なかがいと)において2000(平12)年に行われたトレンチ調査によれば、トレンチ壁面に液状化現象が認められたほか、1回の断層活動による縦ずれの移動量が1m程度であることも確かめられ、上位段丘面でみられる20m以上の縦ずれ移動量は20回以上の活動が繰り返されてきたことを示している。
ジオ点描    東濃地方においては東北東~西南西方向に延びる恵那山断層と屏風山断層が南から北へ順に並んでおり、いずれも南側が隆起して逆断層で北側へ乗り上げている。それらの北側において蕨平断層や手賀野断層が同じ方向に延び、短いがまったく同じ傾向の運動をしている。すなわち、この地域の地形はいろいろな規模の逆断層が階段状に南側を上昇させていったことで作られていることになる。
文献
  • 写真 中津川市手賀野における手賀野断層の断層崖
    (撮影:木澤慶和)
    写真 準備中
    屏風山断層
    屏風山断層は、阿寺断層系の南東端にあたる中津川市馬籠(まごめ)付近から、それに直交する東北東~西南西方向に瑞浪市南西部にかけて全長約32kmにわたり延びる。断層の南側には屏風山(標高794m)を最高峰とする標高750mほどの屏風山山塊が続き、その北側の急斜面が断層崖に相当しており、この壁が大地に作られた巨大な屏風のように見えることからその名がある。屏風山山塊を隆起させる縦ずれ運動は、南側の山塊が北側へ乗り上げる逆断層として起こり、そのため断層は山塊側から崩れてくる堆積物の下に埋もれてしまい、断層自体は限られた地点でしか観察できない。観察できる場所では、断層面が水平面から約60°の傾斜角で南へ向かって傾いており、その上側にある基盤の伊奈川花崗岩が下側にある瀬戸層群の土岐砂礫層の上に乗り上げている。なお、横ずれ運動もしており、断層を横切る河川流路に折れ曲がりがみられる。
    撓曲
    軟らかい地層が厚く地表面を覆っている場合に、その下位にある基盤が断層によりずれても、そのずれが地表まで達せず、撓(たわ)むことでそれを反映させる現象である。
    恵那山断層
    恵那山断層は、土岐市柿野付近から岐阜・長野県境の富士見台高原付近まで全長約43kmに及ぶ断層である。恵那市岩村町でのトレンチ調査によると、その最新活動は約7,600年~2,200年以前であったと推定されている。東濃地方の地形は、東北東~西南西方向に平行して走る恵那山断層と屏風山(びょうぶさん)断層の影響をおもに受けており、相対的に断層の南側が隆起し、北側が沈降しているため、それぞれの断層の北側には谷や盆地の連なる低地が形成されている。恵那山断層の北側には、中津川市阿木(あぎ)、恵那市岩村町、同山岡町、瑞浪市陶町(すえちょう)、そして土岐市柿野といった地域が低地をなして連なり、そこには瑞浪層群や瀬戸層群が分布し、とりわけ後者を構成する土岐口陶土層は丸原鉱山のような耐火粘土鉱床を断層沿いに形成している。断層南側の隆起山塊との間には断層崖として急峻な地形が作られ、それを巧みに利用した山城が岩村城跡にみられる。
    蕨平断層
    中津川市街地の南東にあたる落合川流域にある釜沢地区より1.5kmほど南方の地点付近で屏風山(びょうぶさん)断層から枝分かれし、その北側をそれとほぼ平行に延びて釜沢地区を通り、蕨平地区の「中津川市ふれあい牧場」を通る長さ4kmほどの短い縦ずれ断層である。「ふれあい牧場」には2つの平坦面が広がっており、それらを分けている20~25mの高度差をもつ急斜面が断層崖にあたり、その南側が繰り返し隆起していったことで作られたものである。その東方にあたる温川(ぬるまがわ)の河岸にはこの断層が露出しており、幅約1mの断層粘土をはさんで南側にある伊奈川花崗岩が北側にある瀬戸層群の土岐砂礫層に乗り上げている逆断層として接している。この露出地点の少し下流に中津川温泉「クリアリゾート湯舟沢」の源泉があり、ここはボーリングで掘削して得られた泉温32~33°の温泉であり、その掘削に際して蕨平断層の断層破砕帯を通る地下水脈の位置を参考にしたと考えられる。

    地質年代