鉱山名 小名田鉱山 おなだこうざん
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所在地 多治見市小名田町
対象資源 耐火粘土 (廃坑)
概要    多治見市の市街地北方に広がる高田・小名田地区は耐火粘土の分布地帯であり、その中で山又鉱山などとともに稼働していた鉱山の一つであったが、2018年4月現在では隣接する高田地区にある鉱山だけで採掘されている。瀬戸層群の下部層をなす土岐口陶土層を露天掘りで採掘しており、その基盤が花崗岩類ではなく美濃帯堆積岩類(および瑞浪層群)であり、ほとんど木節(きぶし)粘土からなる鉱床を作っている。土岐市の中山鉱山や恵那市山岡町の丸原鉱山などと同じ地質対象であり、粘土層がいくつかの小規模な堆積盆地に分かれて分布していることで鉱量に限度がある点も同じ地質環境にある。
ジオ点描    人間は大地を形成している岩石をそのまま利用できるのはせいぜい石材ぐらいに限られる。それは通常の岩石では人間が自由に加工できないからである。自然界に存在する物質として人間が自由に加工できるまで変化してくれたものが地表で安定な物質となった粘土であり、そこまで変化し尽くしてくれたものになってやっと利用できるようになっているということになる。
文献
  • 藤井紀之(1962)岐阜県多治見・土岐地方の耐火粘土鉱床の研究一第1報 小名田木節の産状および組成について一.地質調査所月報,13巻,649-667頁.
  • 写真 多治見市小名田にある小名田鉱山の遠景
    (撮影:鹿野勘次)
    写真 準備中
    瀬戸層群
    東海層群のうち濃尾平野の地下を含めて伊勢湾以東の地域に分布する地層群で、岐阜県地域では東濃地方に分布し、下部層をなす土岐口陶土層と上部層をなす土岐砂礫層からなる。この地域では火山灰層がほとんど含まれないことで、内部層序あるいは地層対比がむずかしく、近接した地域でも堆積物相互の関係が明確にできない。
    土岐口陶土層
    瀬戸層群の下部層を構成し、土岐市土岐津町土岐口周辺から多治見市へかけての地域に分布し、それより東方の瑞浪市・恵那市・中津川市の地域に点在して分布する。層厚は20~30mであり、粘土層を主体とする地層からなる。粘土層は、おもに石英粒を含む粘土(蛙目(がえろめ)粘土)、炭質物を含む粘土(木節(きぶし)粘土)、石英砂(珪砂)に分けられ、それらの層序や層相は場所によりかなり異なり、対比もむずかしい。これらは一辺が数~十数kmの小さい凹地に分かれて分布し、それぞれで耐火粘土鉱床として採掘されていったが、やがて枯渇することで多くの地域で廃鉱となっている。
    中山鉱山
    土岐市西部の神明(しんめい)峠周辺の丘陵地には美濃帯堆積岩類を基盤として瀬戸層群が広く分布しており、その中に国指定の天然記念物「美濃の壷石」を含むことで知られている。その瀬戸層群の上部層をなす土岐砂礫層を剥がして、下部層である土岐口陶土層を露天掘りで採掘している鉱山である。花崗岩が風化して生成されたカオリン鉱物が静穏な湖水環境下に運ばれて形成された木節(きぶし)粘土をおもに稼行対象としている。いくつもの小規模な堆積盆地に分かれて堆積している土岐口陶土層を採掘している点は、多治見市の小名田鉱山や恵那市山岡町の丸原鉱山などと同じである。
    丸原鉱山
    恵那山断層の北側に形成された低地に堆積した瀬戸層群の中で、上部層をなす土岐砂礫層を剥がして、下部層である土岐口陶土層を露天掘りで採掘している。一般に土岐口陶土層はいくつもの小規模な堆積盆地に分かれて堆積しており、鉱量に限度があるため、掘削を続ければ次第に枯渇していく。そうした中で稼働を続けている数少ない鉱山である。
    美濃帯堆積岩類
    美濃帯は、飛騨外縁帯の南側にあってかなり幅広く分布する地質帯で、岐阜県内でも広範囲にわたる地域を占める。そこは、古生代石炭紀から中生代白亜紀最前期にかけての時期にチャート・石灰岩・砂岩・泥岩・礫岩などの海底に堆積した堆積岩類と海底に噴出した緑色岩(玄武岩質火山岩類)でおもに構成されている。下図に示すように、海洋プレートの上に噴出した玄武岩質火山岩類は海底や火山島(海山)を形成して、その上にチャートや石灰岩・珪質泥岩などを徐々に堆積させながら大陸へ向かって年間数cmほどの速さで移動していく。海洋プレートは海溝部で大陸の下へ沈み込んでいくが、堆積物はいっしょに沈み込むことができず、はぎ取られたり、大陸側から運び込まれた砂岩・泥岩などとともに大陸側へ押し付けられ、混じり合って複合体(コンプレックス)を作りあげていく。こうした作用を付加作用といい、それにより形成された堆積物は付加体堆積物と呼ばれ、これまでそれらを総称して「美濃帯中・古生層」、「美濃帯中生層」、「美濃帯堆積岩コンプレックス」などといろいろな表現で呼ばれてきたが、ここではこれらを「美濃帯堆積岩類」と呼ぶ。それらは、それまで順に重なっていた地層が付加作用にともなって低角の断層を境にして屋根瓦のように繰り返して覆うように重なったり、複雑に混じりあったメランジュと呼ばれる地質体を構成し、整然とした地層として順番に連続して重なるようなことがほとんどない。そのため全域にわたり個々の地層名を付して表現することがむずかしいため、ここでは構成岩石の種類(岩相)によって表現する。これらの構成岩石は単独でも複数の組合せでもある程度の大きさを持つ地質体を形成しており、その大きさはcmオーダーの礫からkmオーダーの岩体までさまざまである。これらは岩相、形成時期、形成過程などの類似性から複数の地質ユニットに区分され、ユニット間は衝上断層で接することが多いが、その区分による表現はここでは用いない。
    瑞浪層群
    新第三紀の中新世に西南日本の古瀬戸内海と呼ばれる海に堆積した地層群の一つで、岐阜県の中濃地方から東濃地方へかけての可児・瑞浪・岩村の3地域に分かれて分布する。可児地域では下位から蜂屋累層、中村累層、平牧累層に、瑞浪地域では同じく土岐夾炭累層、本郷累層、明世累層、生俵累層に、岩村地域では同じく阿木累層、遠山累層にそれぞれ区分されている。これらは、大きくみると淡水域から汽水域、海域へと堆積環境が変化していったが、設楽層群などの他地域に分布する地層群に比べると浅海性の傾向がみられる。
    木節粘土
    粘土層中に炭化した植物の破片あるいは亜炭を含み、その模様が木の節に似ていることからこの名がある。おもに花崗岩の風化生成物として堆積したものであるが、流水により比較的長く運搬されて湖沼底に堆積したもので、結晶粒子が細かく可塑性に富むことを特徴としている。
    地質年代