鉱山名 丸原鉱山 まるはらこうざん
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所在地 恵那市山岡町原
対象資源 耐火粘土 (稼働)
概要    恵那市山岡町の中をほぼ東西方向に走る2本の県道のうち南側の県道402号中野方(なかのほう)七宗線沿いの釜屋地区から原地区の間にわたり山麓に広がっている露天掘りの鉱山である。恵那山断層の北側に形成された低地に堆積した瀬戸層群の中で、上部層をなす土岐砂礫層を剥がして、下部層である土岐口陶土層を露天掘りで採掘している。周囲には伊奈川花崗岩が広く分布し、そこから供給される風化物が淘汰される余裕がないまま堆積していくことで木節(きぶし)粘土よりは蛙目(がえろめ)粘土を多く含む粘土鉱床を形成している。採掘している土岐口陶土層がいくつもの小規模な堆積盆地に分かれて堆積している点は多治見市の小名田鉱山や土岐市の中山鉱山などと同じであり、鉱量に限度があるため掘削を続ければ次第に枯渇していく。そうした中で稼働を続けている数少ない鉱山である。
ジオ点描    一般に個々の岩石は安定な条件下で形成され、地下の高温高圧下にあるマグマが固結した花崗岩はそこで安定な条件で生まれた長石類などの鉱物の集合体からなる。それが地表にもたらされると不安定な常温常圧下に置かれることになるから、その条件で安定な粘土鉱物に変化しようとする。それらのうち長石類から変化したカオリナイトなどの粘土鉱物は高熱に耐え,高温でも溶融しにくいことから耐火粘土という。
文献
  • 下坂康哉(1978)東海北陸地方の窯業原料.地質ニュース,283号,50-62頁.
  • 写真 山岡町原にある丸原鉱山の耐火粘土鉱床
    (撮影:木澤慶和)
    写真 丸原鉱山において耐火粘土に含まれる石英粒(白色の粒)と炭化木片
    (撮影:小井土由光)
    恵那山断層
    恵那山断層は、土岐市柿野付近から岐阜・長野県境の富士見台高原付近まで全長約43kmに及ぶ断層である。恵那市岩村町でのトレンチ調査によると、その最新活動は約7,600年~2,200年以前であったと推定されている。東濃地方の地形は、東北東~西南西方向に平行して走る恵那山断層と屏風山(びょうぶさん)断層の影響をおもに受けており、相対的に断層の南側が隆起し、北側が沈降しているため、それぞれの断層の北側には谷や盆地の連なる低地が形成されている。恵那山断層の北側には、中津川市阿木(あぎ)、恵那市岩村町、同山岡町、瑞浪市陶町(すえちょう)、そして土岐市柿野といった地域が低地をなして連なり、そこには瑞浪層群や瀬戸層群が分布し、とりわけ後者を構成する土岐口陶土層は丸原鉱山のような耐火粘土鉱床を断層沿いに形成している。断層南側の隆起山塊との間には断層崖として急峻な地形が作られ、それを巧みに利用した山城が岩村城跡にみられる。
    瀬戸層群
    東海層群のうち濃尾平野の地下を含めて伊勢湾以東の地域に分布する地層群で、岐阜県地域では東濃地方に分布し、下部層をなす土岐口陶土層と上部層をなす土岐砂礫層からなる。この地域では火山灰層がほとんど含まれないことで、内部層序あるいは地層対比がむずかしく、近接した地域でも堆積物相互の関係が明確にできない。
    土岐砂礫層
    瀬戸層群の上部層を構成し、東濃地方の広大な東濃準平原を形成した河川が運び込んだ大量の礫により形成された砂礫層で、かなり広範囲にわたって分布する。層厚は数十~100mである。場所により礫種に差異があり、おもに濃飛流紋岩からなるタイプとおもに美濃帯堆積岩類のチャートからなるタイプがあるが、内部での層序や層相の関係はよくわかっていない。礫径は濃飛流紋岩で10cm前後、美濃帯堆積岩類で数~20cmであり、ほとんどが円磨度の進んだ円礫からなる。最大の特徴は、チャート礫を除いて、含まれている礫が風化してきわめて軟らかくなっていることであり、チャート礫だけが堅固なまま残されているため、それだけを含む礫層のように見える。
    土岐口陶土層
    瀬戸層群の下部層を構成し、土岐市土岐津町土岐口周辺から多治見市へかけての地域に分布し、それより東方の瑞浪市・恵那市・中津川市の地域に点在して分布する。層厚は20~30mであり、粘土層を主体とする地層からなる。粘土層は、おもに石英粒を含む粘土(蛙目(がえろめ)粘土)、炭質物を含む粘土(木節(きぶし)粘土)、石英砂(珪砂)に分けられ、それらの層序や層相は場所によりかなり異なり、対比もむずかしい。これらは一辺が数~十数kmの小さい凹地に分かれて分布し、それぞれで耐火粘土鉱床として採掘されていったが、やがて枯渇することで多くの地域で廃鉱となっている。
    伊奈川花崗岩
    中部地方の領家帯を中心に美濃帯南部も含めてきわめて広い範囲に分布する巨大な花崗岩体であり、そのうち岐阜県内には濃飛流紋岩の南縁部においてそれとの接触部にあたる浅部相が広く分布し、多くの地域でNOHI-1およびNOHI-2を貫いており、それらと火山-深成複合岩体を形成していると考えられている。ただし、県南東縁の上村(かみむら)川流域では領家帯構成岩類の天竜峡花崗岩の周辺において三都橋花崗岩と呼ばれている深部相が分布するが、ここでは区別せずに扱っている。斑状あるいは塊状の粗粒角閃石黒雲母トーナル岩~花崗岩からなる。この花崗岩は、古典的な「地向斜-造山運動」論において造山帯中核部の地下深部で形成された花崗岩体の典型例と考えられていたが、1960年代に地表に噴出・堆積した濃飛流紋岩を貫いていることが発見され、地表近くのきわめて浅所までマグマとして上昇してきたことになり、それまでの火成活動史の考えを根底から覆えし、塗り替えることとなった。
    木節粘土
    粘土層中に炭化した植物の破片あるいは亜炭を含み、その模様が木の節に似ていることからこの名がある。おもに花崗岩の風化生成物として堆積したものであるが、流水により比較的長く運搬されて湖沼底に堆積したもので、結晶粒子が細かく可塑性に富むことを特徴としている。
    蛙目粘土
    おもに花崗岩を母材として、その風化生成物となるカオリンなどの粘土鉱物を主成分とする粘土で、その中に含まれる石英粒子が雨に濡れるとカエルの目のように光ることからこの名前が付けられている。 これらを水に懸濁させて水簸(すいひ)して石英などの不純物を除いておもに窯業原料として用いられる。
    小名田鉱山
    多治見市の市街地北方に広がる高田・小名田地区は耐火粘土鉱床地帯であり、その中で山又鉱山などとともに稼働している鉱山の一つである。瀬戸層群の下部層をなす土岐口陶土層を露天掘りで採掘しており、土岐市の中山鉱山や恵那市山岡町の丸原鉱山などと同じ地質対象であり、粘土層がいくつかの小規模な堆積盆地に分かれて堆積していることで鉱量に限度がある点も同じ地質環境にある。
    中山鉱山
    土岐市西部の神明(しんめい)峠周辺の丘陵地には美濃帯堆積岩類を基盤として瀬戸層群が広く分布しており、その中に国指定の天然記念物「美濃の壷石」を含むことで知られている。その瀬戸層群の上部層をなす土岐砂礫層を剥がして、下部層である土岐口陶土層を露天掘りで採掘している鉱山である。花崗岩が風化して生成されたカオリン鉱物が静穏な湖水環境下に運ばれて形成された木節(きぶし)粘土をおもに稼行対象としている。いくつもの小規模な堆積盆地に分かれて堆積している土岐口陶土層を採掘している点は、多治見市の小名田鉱山や恵那市山岡町の丸原鉱山などと同じである。
    地質年代