鉱山名 天生鉱山 あもうこうざん
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所在地 飛騨市河合町天生
対象資源 黒鉛・金・銀 (廃鉱)
概要    飛騨市河合町天生の集落から天生峠へ向かう金山谷をさかのぼり、標高900~950m付近にある鉱山であった。鉱床は1892(明25)年に発見され、その5年後に採掘が開始され、当初は銀鉱床を中心として採掘していた鉱山であったが、第二次大戦後に黒鉛を中心に採掘がなされるようになった。黒鉛は飛騨帯構成岩類の飛騨変成岩類に濃集して形成されたもので、構造運動を受けて破砕された割れ目を埋めるように幅0.5~1.5m、長さ15~30mのレンズ状・層状の黒鉛鉱体が作られている。黒鉛の品位は3~10%、鉱量約200トンといわれている。
ジオ点描    黒鉛の鉱物名は石墨(せきぼく)であり、ダイヤモンドと同じ炭素(C)だけからなる元素鉱物である。六角板状の結晶で、亀の甲状に連なったものが層状に重なる結晶構造をなし、層の間が弱い結合をしているために層状に剥離し、硬度がダイヤモンドと正反対にかなり軟らかい鉱物である。耐熱物質、耐火物質、原子炉の減速材などいろいろな用途があり、身近なところでは鉛筆の芯に用いられている。
文献
  • 安齋俊男(1951)岐阜県・富山県下黒鉛鉱山の鉱床調査報告.地質調査所月報,2巻,96-101頁.
  • 写真 河合町元田の天生鉱山から産出した黒鉛
    (岐阜県博物館所蔵,撮影:棚瀬充史)
    写真 準備中
    飛騨帯構成岩類
    飛騨帯は、岐阜県の北部から北陸地方へかけての地域に広がる変成岩類と花崗岩類からなる地質帯である。ただし、これらの構成岩類がこの地域のどこにでも分布しているわけではなく、それ以降に形成された岩石類に覆われたり貫かれているために、実際にはかなり限られた地域にだけ分布する。変成岩類は総称して「飛騨片麻岩類」と呼ばれ、それらを形成した広域変成作用の時期についてはいくつかの見解があるが、おおよそ3億年~4億5000万年前(古生代石炭紀・シルル紀・デボン紀)と2億4000万年前ごろの少なくとも2回にわたり重複した変成作用で形成されたとされている。花崗岩類はこれまで「船津花崗岩類」と呼ばれ、1億8000万年前(中生代ジュラ紀)に飛騨外縁帯構成岩類の分布域にまで及ぶ範囲に一斉に貫入したことで飛騨片麻岩類に熱変成作用をもたらしたと考えられてきた。しかし、それらの中には古い年代を示す岩体もあり、一律に扱うことができないことがわかってきたため、それらの形成時期を少なくとも2期に分けて区別するようになった。変成岩類も花崗岩類も複数回におよぶ複雑な過程を経て形成されているために、すべての飛騨帯構成岩類を全域にわたって一定の基準で表現することはかなりむずかしいことから、ここではそれらを「飛騨変成岩類」、「飛騨花崗岩類」と呼び、それぞれを6種類と10種類の岩相に区分することで表現する。そのため1つの岩相で示される岩石の中にも別の変成・深成作用で形成された岩石が含まれている場合もある。




    地質年代