鉱山名 美濃白川麦飯石 みのしらかわばくはんせき
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所在地 白川町黒川5608
対象資源 麦飯石 (稼働)
概要    麦飯石は、『本草綱目』という中国明代の漢方薬書に記されている豆粒・米粒大の粒状結晶がある岩石で、麦飯に似ていることからその名がある。多孔質で吸着作用があり、ミネラル溶出量の多いことで、脱臭剤・吸着剤・土壌改良材・水質改良剤などに利用されている。これまで採掘されてきた麦飯石はいずれも濃飛流紋岩にとなわれる花崗閃緑斑岩Ⅱあるいは花崗斑岩であり、含まれている比較的大型の長石結晶が適度な風化作用と変質作用を受けていることで効果がもたらされていると考えられている。実際に採掘されている鉱山は白川町黒川の中切地区における県道70号白川福岡線沿いにあり、NOHI-3を構成している下呂火山灰流シートの分布域であるが、花崗閃緑斑岩Ⅱの切井(きりい)岩体あるいは岩山岩体に近い位置にあることから、その枝脈にあたる岩体が小規模に露出し、それを採掘していると思われる。
ジオ点描    鉱物は個々にいろいろな特定の性質をもち、それを利用していろいろな用途に供されている。しかし、鉱物の集合体である岩石においては一つの岩石全体が特定の性質を示すことはあまりない。何か特徴的な現象が見られても、実際には含まれている鉱物のいずれかがそれを示している場合が多い。麦飯石においても風化した長石類が岩石内で大きな割合を占めているために岩石全体の特徴となっているようである。
文献
  • 写真 白川町切井石木において得られる麦飯石
    (撮影:鹿野勘次)
    写真 準備中
    濃飛流紋岩
    濃飛流紋岩は、岐阜県の南東端にあたる恵那山(標高2191m)付近から北部の飛騨市古川町付近へかけて、幅約35km、延長約100kmにわたり北西~南東方向にのび、岐阜県の約1/4の面積を占める巨大な岩体である。この岩体を構成する岩石のほとんどは、火砕流として流れ出た火山砕屑物がたまって形成された火砕流堆積物からなり、しかもその大部分は堅硬に固結した溶結凝灰岩になっており、厚さ数百mで、水平方向へ20~60kmの広がりをもち、岩相・岩質が類似した火山灰流シートとして何枚にもわたって重なりあっている。それらは大きく6つの活動期(NOHI-1~NOHI-6)に区分されており、岐阜県内にはNOHI-6だけが分布しない。これらの火山岩類には花崗岩類が密接にともなわれ、それらを含めて大きく2期(第1期火成岩類・第2期火成岩類)に分けられる火山-深成複合岩体を形成している。第1期の活動は白亜紀後期の約8,500万~8,000万年前にあり、NOHI-1とNOHI-2の活動と引き続く花崗岩類の活動があった。第2期の活動は約7,500万~6,800万年前にあり、NOHI-3~NOHI-5(おそらくNOHI-6)の活動と引き続く花崗岩類の活動があった。これらは活動の場所を南部から北部へと移しながら巨大な火山岩体を作り上げた。
    花崗閃緑斑岩Ⅱ
    濃飛流紋岩の岩体南縁部を除くほぼ全域に径1~15㎞の不規則な外形を持つ岩株状の岩体として各地域に広く分布する。岐阜県内に分布する岩体としては、切井(きりい)・岩山・洞山・岩瀬・萩原・黒石谷・オコズリ谷・栃原谷・ソクボ谷・西洞・大沢山・清見(きよみ)の各岩体がある。これらの岩体と濃飛流紋岩との貫入関係はさまざまであるが、NOHI-5およびNOHI-6を貫く岩体はなく、NOHI-4の定置後、NOHI-5の定置以前に貫入したものと考えられている。岩相の特徴は、濃飛流紋岩のNOHI-1およびNOHI-2を貫く花崗閃緑斑岩Ⅰとほぼ同じであり、長径2~3㎝の斜長石やカリ長石の大きな斑晶をともなう花崗閃緑岩質の岩石からなり、微花崗岩質組織あるいは微文象構造の石基からなる。また、細粒周縁相をほとんどともなわず、周囲の濃飛流紋岩に対しても熱変成作用を与えていない。
    花崗斑岩
    濃飛流紋岩のほぼ岩体全域および岩体周辺の美濃帯堆積岩類の分布地域にわたり小規模な岩脈として分布し、しばしば平行岩脈群をつくる。岐阜県内に分布する代表的なものだけを挙げてると、上之保(かみのほ)-鹿山(かやま)平行岩脈群・東沓部(ひがしくつべ)岩脈群・初納(しょのう)岩脈群・日出雲(ひずも)岩脈群・中之宿岩脈・青屋弧状岩脈のほかに釜戸・大洞谷・門坂(かどさか)・三間山(さんげんやま)・宇津江(うつえ)・黒内の各岩体がある。全体として濃飛流紋岩のどの層準よりも新しい時期に貫入し、濃飛流紋岩を貫く苗木花崗岩などの花崗岩類中にはまったく分布しないことから、花崗岩類の定置以前に貫入したと考えられている。岩相は全体を通じてほとんど一定しており、灰白色の石基中に石英・カリ長石・斜長石・黒雲母およびまれに角閃石の自形斑晶を含む。カリ長石や斜長石の斑晶は長径1~3㎝である。周縁相として斑晶がやや小型化し、石基が隠微晶質となる石英斑岩質を示すものがみられる。
    下呂火山灰流シート
    濃飛流紋岩の岩体南縁部を除くほぼ全域にわたり分布し、NOHI-3の主体をなすとともに濃飛流紋岩の中で最大規模の火山灰流シートであり、最大層厚は1,000m以上もある。下部で流紋岩質の、上部で流紋デイサイト質の溶結凝灰岩からなり、岩体北部ではそのさらに上部に流紋岩質の溶結凝灰岩をともなう。これらの岩相間の関係は漸移的であり、場所によっては繰り返して出現することもある。流紋岩質の溶結凝灰岩は、径4~6mmの粗粒の斜長石・石英・カリ長石を多量に含み、苦鉄質鉱物として黒雲母・角閃石・不透明鉱物をを含む。長径数~十数cmの大型の本質岩片を多量に含む。流紋デイサイト質の溶結凝灰岩は、径3~5mmの粗粒の斜長石・石英を多く含み、苦鉄質鉱物として黒雲母・角閃石・輝石・不透明鉱物を比較的多く含む。いずれの溶結凝灰岩も長径10cmを超える大型の本質岩片を多量に含み、その中に径1cmを超える粗粒斜長石斑晶を多量に含むことを特徴とする。上部の流紋岩質溶結凝灰岩は下部のものに比べて本質岩片が径1cmほどと小型になる。

    地質年代