温泉名 くるみ温泉 くるみおんせん
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所在地 高山市朝日町胡桃島8
源泉最高温度 7.8℃(平21)
泉質 (中性鉱泉)
pH 6.1
概要    高山市朝日町の秋神ダムから同市高根町の日和田高原へ向かう県道435号御岳山朝日線沿いにあり、濃飛流紋岩のNOHI-3を構成する下呂火山灰流シート中に湧出する温泉のようにみえるが、周囲には花崗閃緑斑岩Ⅱが広い範囲に貫いて分布しており、下呂火山灰流シートも地下でこれに貫かれていると考えてよい。この地質環境はここより南東に2kmほどにおいて花崗閃緑斑岩Ⅱの分布域から湧出している秋神温泉と類似しており、さらに近傍には北東~南西方向に延びる猪之鼻断層が走っていることから、それらにともなわれる破砕帯が湧出に関与している鉱泉である可能性がある。温泉宿が利用できるキャンプ場としても知られている。
ジオ点描
写真 朝日町胡桃島にあるくるみ温泉
(撮影:小井土由光)
写真 準備中
濃飛流紋岩
濃飛流紋岩は、岐阜県の南東端にあたる恵那山(標高2191m)付近から北部の飛騨市古川町付近へかけて、幅約35km、延長約100kmにわたり北西~南東方向にのび、岐阜県の約1/4の面積を占める巨大な岩体である。この岩体を構成する岩石のほとんどは、火砕流として流れ出た火山砕屑物がたまって形成された火砕流堆積物からなり、しかもその大部分は堅硬に固結した溶結凝灰岩になっており、厚さ数百mで、水平方向へ20~60kmの広がりをもち、岩相・岩質が類似した火山灰流シートとして何枚にもわたって重なりあっている。それらは大きく6つの活動期(NOHI-1~NOHI-6)に区分されており、岐阜県内にはNOHI-6だけが分布しない。これらの火山岩類には花崗岩類が密接にともなわれ、それらを含めて大きく2期(第1期火成岩類・第2期火成岩類)に分けられる火山-深成複合岩体を形成している。第1期の活動は白亜紀後期の約8,500万~8,000万年前にあり、NOHI-1とNOHI-2の活動と引き続く花崗岩類の活動があった。第2期の活動は約7,500万~6,800万年前にあり、NOHI-3~NOHI-5(おそらくNOHI-6)の活動と引き続く花崗岩類の活動があった。これらは活動の場所を南部から北部へと移しながら巨大な火山岩体を作り上げた。
下呂火山灰流シート
濃飛流紋岩の岩体南縁部を除くほぼ全域にわたり分布し、NOHI-3の主体をなすとともに濃飛流紋岩の中で最大規模の火山灰流シートであり、最大層厚は1,000m以上もある。下部で流紋岩質の、上部で流紋デイサイト質の溶結凝灰岩からなり、岩体北部ではそのさらに上部に流紋岩質の溶結凝灰岩をともなう。これらの岩相間の関係は漸移的であり、場所によっては繰り返して出現することもある。流紋岩質の溶結凝灰岩は、径4~6mmの粗粒の斜長石・石英・カリ長石を多量に含み、苦鉄質鉱物として黒雲母・角閃石・不透明鉱物をを含む。長径数~十数cmの大型の本質岩片を多量に含む。流紋デイサイト質の溶結凝灰岩は、径3~5mmの粗粒の斜長石・石英を多く含み、苦鉄質鉱物として黒雲母・角閃石・輝石・不透明鉱物を比較的多く含む。いずれの溶結凝灰岩も長径10cmを超える大型の本質岩片を多量に含み、その中に径1cmを超える粗粒斜長石斑晶を多量に含むことを特徴とする。上部の流紋岩質溶結凝灰岩は下部のものに比べて本質岩片が径1cmほどと小型になる。
花崗閃緑斑岩Ⅱ
濃飛流紋岩の岩体南縁部を除くほぼ全域に径1~15㎞の不規則な外形を持つ岩株状の岩体として各地域に広く分布する。岐阜県内に分布する岩体としては、切井(きりい)・岩山・洞山・岩瀬・萩原・黒石谷・オコズリ谷・栃原谷・ソクボ谷・西洞・大沢山・清見(きよみ)の各岩体がある。これらの岩体と濃飛流紋岩との貫入関係はさまざまであるが、NOHI-5およびNOHI-6を貫く岩体はなく、NOHI-4の定置後、NOHI-5の定置以前に貫入したものと考えられている。岩相の特徴は、濃飛流紋岩のNOHI-1およびNOHI-2を貫く花崗閃緑斑岩Ⅰとほぼ同じであり、長径2~3㎝の斜長石やカリ長石の大きな斑晶をともなう花崗閃緑岩質の岩石からなり、微花崗岩質組織あるいは微文象構造の石基からなる。また、細粒周縁相をほとんどともなわず、周囲の濃飛流紋岩に対しても熱変成作用を与えていない。
秋神温泉
高山市朝日町の秋神ダムから同市高根町の日和田高原へ向かう県道435号御岳山朝日線沿いにあり、立地環境は北西に2kmほど離れたくるみ温泉と類似している。濃飛流紋岩にともなわれる花崗閃緑斑岩Ⅱ内に湧出する鉱泉で、鉄分が多く、赤褐色に濁っていることを特徴としている。1971(昭46)年から敷地内で始められ、冬季の厳寒な気候条件を利用して木々に散水することで幻想的な氷の世界を作り上げる『氷点下の森』は冬の風物詩としてよく知られている。
猪之鼻断層
猪之鼻断層は、高山市朝日町の鈴蘭高原の東部から東北東へ向かって乗鞍岳南方の高山市高根町黍生(きびゅう)付近まで、全長約12kmにわたって延びる。断層を横切る河川の流路は、猪之鼻川で約700m、飛騨川で約500m、塩蔵川で約200mの右ずれを示しており、右横ずれ断層の特徴をもつ。また、断層を境に北西側が隆起しており、そこからの崩壊土砂や河川堆積物が断層の南東側の沈降域を埋めて小盆地を作っている。猪之鼻川では猪之鼻、飛騨川では中之宿、塩蔵川では塩沢といった集落が小盆地として猪之鼻断層の上に並んでいる。塩沢の南東方にある池ヶ洞付近では、断層の北西側で地層の分布高度が約50m高くなっていることが確認でき、中之宿では、河岸に幅15~20mの断層破砕帯がみられる。断層の東端部では約176万年前に噴出した丹生川火砕流堆積物をずらしており、少なくともそれ以降から活動してきたことになるが、断層の活動履歴はよくわかっていない。
地質年代