美濃帯堆積岩類
飛騨帯は、岐阜県の北部から北陸地方へかけての地域に広がる変成岩類と花崗岩類からなる地質帯である。ただし、これらの構成岩類がこの地域のどこにでも分布しているわけではなく、それ以降に形成された岩石類に覆われたり貫かれているために、実際にはかなり限られた地域にだけ分布する。変成岩類は総称して「飛騨片麻岩類」と呼ばれ、それらを形成した広域変成作用の時期についてはいくつかの見解があるが、おおよそ3億年~4億5000万年前(古生代石炭紀・シルル紀・デボン紀)と2億4000万年前ごろの少なくとも2回にわたり重複した変成作用で形成されたとされている。花崗岩類はこれまで「船津花崗岩類」と呼ばれ、1億8000万年前(中生代ジュラ紀)に飛騨外縁帯構成岩類の分布域にまで及ぶ範囲に一斉に貫入したことで飛騨片麻岩類に熱変成作用をもたらしたと考えられてきた。しかし、それらの中には古い年代を示す岩体もあり、一律に扱うことができないことがわかってきたため、それらの形成時期を少なくとも2期に分けて区別するようになった。変成岩類も花崗岩類も複数回におよぶ複雑な過程を経て形成されているために、すべての飛騨帯構成岩類を全域にわたって一定の基準で表現することはかなりむずかしいことから、ここではそれらを「飛騨変成岩類」、「飛騨花崗岩類」と呼び、それぞれを6種類と10種類の岩相に区分することで表現する。そのため1つの岩相で示される岩石の中にも別の変成・深成作用で形成された岩石が含まれている場合もある。
猪之鼻断層
猪之鼻断層は、高山市朝日町の鈴蘭高原の東部から東北東へ向かって乗鞍岳南方の高山市高根町黍生(きびゅう)付近まで、全長約12kmにわたって延びる。断層を横切る河川の流路は、猪之鼻川で約700m、飛騨川で約500m、塩蔵川で約200mの右ずれを示しており、右横ずれ断層の特徴をもつ。また、断層を境に北西側が隆起しており、そこからの崩壊土砂や河川堆積物が断層の南東側の沈降域を埋めて小盆地を作っている。猪之鼻川では猪之鼻、飛騨川では中之宿、塩蔵川では塩沢といった集落が小盆地として猪之鼻断層の上に並んでいる。塩沢の南東方にある池ヶ洞付近では、断層の北西側で地層の分布高度が約50m高くなっていることが確認でき、中之宿では、河岸に幅15~20mの断層破砕帯がみられる。断層の東端部では約176万年前に噴出した丹生川火砕流堆積物をずらしており、少なくともそれ以降から活動してきたことになるが、断層の活動履歴はよくわかっていない。
地質年代