飛騨外縁帯構成岩類
飛騨外縁帯は、飛騨帯の南側を取りまくように幅数~30kmほどで細長く分布する地質帯である。岐阜県地域では飛騨山脈の槍ヶ岳(標高3180m)付近から高山市の奥飛騨温泉郷、丹生川町北部~国府町地域、清見町楢谷(ならだに)、郡上市白鳥町石徹白(いとしろ)などに断片的に配列して露出している。そこを構成している岩石はかなり変化に富み、古生代に形成された非変成の砕屑岩類や火山岩類、結晶片岩などからなる変成岩類、超苦鉄質岩(U)から変化した蛇紋岩と呼ばれる岩石などである。これらの岩石は、飛騨帯構成岩類を一部に含めた当時の大陸(中朝地塊と呼ばれる)の東縁で形成された陸棚や浅海性の堆積物および火山砕屑物が中生代ジュラ紀中ごろまでに大規模な横ずれ運動をともなって飛騨帯構成岩類と接するようになり、その過程でもたらされた変成岩類や超苦鉄質岩を断片的にともなって形成されたと考えられている。ただし、飛騨外縁帯と飛騨帯との間には、富山県地域や新潟県地域などにおいて宇奈月帯あるいは蓮華帯と呼ばれる変成岩類で構成された地帯が分布しており、岐阜県地域においてもそれらとよく似た性質の岩石が断片的に分布するが、よくわかっていない点もあるため、ここではすべて飛騨外縁帯の構成岩類として扱う。
新平湯温泉
飛騨外縁帯構成岩類を基盤とし、それらを覆って焼岳火山群から流れ出た泥流堆積物や火砕流堆積物が分布し、そこに湧出している。焼岳火山の西麓に位置することから、高原川対岸にある福地(ふくじ)温泉とともにそれを熱源としていると考えられる。かつては「一重ヶ根温泉」と呼ばれ、奥飛騨温泉郷の中では平湯温泉に次ぐ規模をもち、歴史も古い。
焼岳火山
焼岳火山群の新期焼岳火山群に属する火山体で、その中で最も新しく、現在も活動中の火山である。焼岳(標高2455m)を中心として、いくつかの溶岩、溶岩ドームとそれらにともなわれる火砕岩類からなる。現在の山頂部を作る溶岩ドームは約2,300年前に形成されたものである。歴史時代に入ってからの活動としては、1907(明40)年から1939(昭14)年まで水蒸気爆発が活発に繰り返され、特に1915(大4)年に水蒸気爆発にともない発生した泥流が梓川をせき止めて大正池を作ったことは有名である。最新の活動については事項解説『災害』の項目「焼岳火山噴火」を参照のこと。
下呂温泉
江戸時代初期に儒学者林 羅山が有馬温泉、草津温泉とともに日本三名泉に数えたことで知られる温泉であり、そのおもな泉源が濃飛流紋岩の中を通るが阿寺断層系の下呂断層に沿って分布している。下呂断層や湯ヶ峰断層などの阿寺断層系の断層沿いに形成された破砕帯などから地下へしみ込んだ地下水が、湯ヶ峰火山のマグマ溜りで温められ、下呂断層の破砕帯に沿って形成された飛騨川の低所に湧き出していると考えられている。
福地の化石産地
福地地域は古生代の化石産地としてよく知られており、とりわけ高原川(平湯川)支流のオソブ谷に注ぐ“一の谷”に分布する福地層は飛騨外縁帯を構成する古生代デボン紀の地層として知られている。同層はおもに石灰岩からなり、これらの中から床板サンゴ、四射サンゴ、層孔虫、ハチノスサンゴ、三葉虫、腕足類など、極めて豊富な化石を産する。これらの多くの貴重な化石が得られることで、この谷一帯が記念物として地域指定されている。そのためここへの入山は禁止されており、これらの化石は福知山トレッキングコース入口にある「化石遊歩道」で観察できる。
福地化石標本
福地在住の故山腰 悟氏が福地周辺に分布する飛騨外縁帯を構成する古生代デボン紀・石炭紀・ペルム紀の地層から収集した海生動物化石標本のうち、典型的な化石100点を選び指定してある。以前は同氏が開設した「ひだ自然館」にこれらの化石が展示されていたが、同館が閉鎖されたため、それらが当時の上宝(かみたから)村に寄付されて、地元の協力を得て、福地にある「昔ばなしの里」の2階にある福地化石館に移されて収められている。
地質年代