対象物 根尾谷の菊花石 ねおだにのきっかせき
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場所 本巣市根尾松田字初鹿谷(はじかだに)
指定者 国(特別)
指定年月日 1941(昭16)年12月13日
1952(昭27)年3月29日(特天)
概要    美濃帯堆積岩類のおもに緑色岩(玄武岩質火山岩類)を母岩として、内部に径数~数十cmの放射状の模様をもち、それが菊の花に見えることで“菊花石”と呼ばれる鑑賞石として珍重されてきたもので、花の色は白、黄、青などいろいろある。その形成過程については、母岩に放射状の割れ目ができ、その中に方解石や玉髄等が入り込んで成長し、それらが石英等に置き換わったとする説、母岩の中にアラゴナイト(あられ石)の結晶が放射状に現れ、それが方解石、さらに石英に置き換わったとする説などがあるが、定説はない。なお、記念物指定は菊花石そのものにされているのではなく、それを産出する所定の区域に対してされており、その区域での採取はできない。
ジオ点描    鑑賞石は趣味の世界であり、そこに理屈はないから対象となる岩石の形成過程を語ってもあまり意味はなかろう。“枯山水”で使われているチャートの岩塊を眺めて「微細な放散虫の死骸のかたまり」などと言うのは無粋の極みである。とはいえ石は石であるから岩石としてもみてほしいから、岩石に花のような模様が作られる原因を知りたくなってほしいところであるが、回答がすぐ得られるとは限らない。
文献
  • 写真 本巣市根尾の初鹿谷に産する菊花石
    (撮影:鹿野勘次)
    写真 準備中
    美濃帯堆積岩類
    美濃帯は、飛騨外縁帯の南側にあってかなり幅広く分布する地質帯で、岐阜県内でも広範囲にわたる地域を占める。そこは、古生代石炭紀から中生代白亜紀最前期にかけての時期にチャート・石灰岩・砂岩・泥岩・礫岩などの海底に堆積した堆積岩類と海底に噴出した緑色岩(玄武岩質火山岩類)でおもに構成されている。下図に示すように、海洋プレートの上に噴出した玄武岩質火山岩類は海底や火山島(海山)を形成して、その上にチャートや石灰岩・珪質泥岩などを徐々に堆積させながら大陸へ向かって年間数cmほどの速さで移動していく。海洋プレートは海溝部で大陸の下へ沈み込んでいくが、堆積物はいっしょに沈み込むことができず、はぎ取られたり、大陸側から運び込まれた砂岩・泥岩などとともに大陸側へ押し付けられ、混じり合って複合体(コンプレックス)を作りあげていく。こうした作用を付加作用といい、それにより形成された堆積物は付加体堆積物と呼ばれ、これまでそれらを総称して「美濃帯中・古生層」、「美濃帯中生層」、「美濃帯堆積岩コンプレックス」などといろいろな表現で呼ばれてきたが、ここではこれらを「美濃帯堆積岩類」と呼ぶ。それらは、それまで順に重なっていた地層が付加作用にともなって低角の断層を境にして屋根瓦のように繰り返して覆うように重なったり、複雑に混じりあったメランジュと呼ばれる地質体を構成し、整然とした地層として順番に連続して重なるようなことがほとんどない。そのため全域にわたり個々の地層名を付して表現することがむずかしいため、ここでは構成岩石の種類(岩相)によって表現する。これらの構成岩石は単独でも複数の組合せでもある程度の大きさを持つ地質体を形成しており、その大きさはcmオーダーの礫からkmオーダーの岩体までさまざまである。これらは岩相、形成時期、形成過程などの類似性から複数の地質ユニットに区分され、ユニット間は衝上断層で接することが多いが、その区分による表現はここでは用いない。 超丹波帯は、近畿地方において丹波帯(中部地方の美濃帯に相当)とその北側にある舞鶴帯と呼ばれる構造帯との間に存在し、丹波帯が中生代ジュラ紀に付加作用を受けて形成された付加体堆積物で構成されているのに対して、おもに古生代ペルム紀に付加作用を受けて形成された付加体堆積物で構成されている地質帯である。中部地方においては、美濃帯の北縁部で福井県の南条地域と岐阜県の高山市丹生川町地域で分布が確認されているだけである。
    緑色岩(玄武岩質火山岩類)
    美濃帯堆積岩類において、ペルム紀に海底に噴出して形成された火山島を作った岩石であり、枕状溶岩として産することもある。変質して緑色を帯びることが多いためこの名があり、かつては“輝緑凝灰岩”と呼ばれていたこともある。それらが海山を構成し、その上に形成されたサンゴ礁が石灰岩にあたることで、それらと密接にともなって産することが多い。ともに美濃帯堆積岩類において最も古い時期の岩石である。



    地質年代