対象物 巌立 がんたて
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場所 下呂市小坂町落合
指定者 岐阜県
指定年月日 1957(昭32)年12月19日
概要    御嶽山(標高3,067m)の西側斜面を流れ下る濁河(にごりご)川とその支流にあたる椹(さわら)谷の合流点にある高さ約72m、幅約120mの大岩壁が指定されている。この岩壁は、御嶽火山噴出物の中で新期御嶽火山を構成する摩利支天火山群に属する噴出物にあたり、約54,000年前に形成された溶岩流の末端部付近にあたる。この溶岩はそれほど流動性に富んでいるとは思えない安山岩質の組成であるにもかかわらず、約17kmという長大な距離を流れ下っており、やや特異な性状をもつ溶岩である。この岩壁には溶岩が冷えて固まったときにできる柱状節理が形成され、太さ数十cmの柱が並んでいるように見える。付近一帯は巌立峡と呼ばれ、三ツ滝など数多くの滝をもつ峡谷として知られている。
ジオ点描    溶岩流はその表面と内部では冷却過程の違いにより様相がまったく異なる。表面においては、急冷しながら流動していくことで破砕された表面形態を残して固結していく。それに対して内部では表面形態にあたるものがない代わりに、徐冷却にともなう形態として柱状節理あるいは板状節理が形成されるようになる。それが巌立において大規模に見えている。
文献
  • 山田直利・小林武彦(1988)御嶽山地域の地質.地域地質研究報告(5万分の1地質図幅),地質調査所,136頁.
  • 写真 巌立
    (撮影:棚瀬充史)
    写真 準備中
    新期御嶽火山
    御嶽火山において古期御嶽火山の活動終了後に約30万年にわたる長い静穏期を経て始まった活動で、現在の御嶽火山の中央部を構成する火山体を形成した。それらは活動の前半に形成された継母岳火山群と後半に形成された摩利支天火山群に分けられ、両者はほぼ連続的に起こったようであるが、噴出物の性質は明瞭に異なる。これらの活動では新期御嶽テフラ層と呼ばれる大量の降下火砕堆積物を噴出しており、有効な指標となる広域テフラとして中部・関東地方に広く火山灰層を飛ばしており、隣接する乗鞍火山がおもに溶岩を流出させていることと対照的な活動をしている。なお、その活動経過については、山麓部での降下火砕堆積物の層序解析などから異なる見解も出されている。
    摩利支天火山群
    新期御嶽火山の後半に活動した火山群で、前半の継母岳火山群の活動に引き続いて始まり、約10km³の安山岩質の噴出物を噴出して8つの成層火山をほぼ南北に重複するように形成し、現在の御嶽山頂上付近の地形をつくった。それらのうち末期の火山体が火口を明瞭に残している。この時期に発生した大規模な岩屑なだれ-泥流堆積物が木曽川泥流堆積物であり、山体の北東山麓から各務原市付近まで約200kmを流下している。最近の約2~3万年間は静穏期にあたっているが、その中でも最近の約6000年間に少なくとも5回の水蒸気爆発を起こしており、最新の爆発が1979年のものである(事項解説『災害』の項目「御嶽火山噴火」を参照)。
    巌立峡
    岐阜県指定の天然記念物「巌立」を中心に、その付近一帯の濁河(にごりご)川あるいは椹(さわら)谷に沿う峡谷である。滝めぐりが楽しめ、そのための遊歩道が整備されており、秋には紅葉の名所としても知られる。巌立も含めて、その景観の主人公となる滝は、新期御嶽火山を構成する摩利支天火山群(約6万~2万年前)に属する溶岩流あるいはその基盤をなす濃飛流紋岩の溶結凝灰岩にかかるものである。
    御嶽火山
    岐阜・長野県境にあって南北約20km、東西約15kmの範囲に広がる山体をなす。それぞれ数万年ほどの活動期間をもつ古期御嶽火山と新期御嶽火山からなり、両者の間に約30万年にわたる静穏期があり、現在も約3万年にわたる静穏期にあたっている。

    地質年代