対象物 妙ヶ谷の二枚貝化石 みょうがたにのにまいがいかせき
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場所 揖斐川町春日川合字妙ヶ谷
指定者 揖斐川町
指定年月日 1978(昭53)年12月18日
概要    美濃帯堆積岩類の形成過程として付加体堆積物の考え方が示されるまではその形成時期はおもに古生代と考えられており、その地層群の中に中生代三畳紀後期を示す示準化石であるエントモノチスが存在することはきわめて特異であるとされ、当時としては唯一発見されていた三畳紀の貴重な化石として指定されている。エントモノチスは海中に生息していた斧足類に属する絶滅分類群で、見かけが二枚貝の形をしているために“二枚貝化石”として指定されたが、殻が対称形ではなく、左殻は凸形、右殻は平らで、ホタテ貝のような放射状の肋をもつ。大きさは5~10cmで、殻は0.5mm程度と薄いことを特徴とする。
ジオ点描    地層に示準化石が含まれているとその地層の形成年代に間違いはない。問題はそれを周囲に分布する地層にまで広げて形成時期をあてはめてしまうことである。とりわけ、美濃帯堆積岩類においては付加体堆積物であるから地層が整然と積み重なっているわけではなく、個々の地層の岩塊ごとに形成年代が異なっていても不思議ではない。極端にいえば地層一枚ごとに形成年代が異なっていることもあり得る。
文献
  • 脇水鉄五郎(1920)美濃のシウドモノチス層.地質学雑誌,27巻,1-9頁.
  • 写真 揖斐川町春日川合の妙ヶ谷から産出したエントモノチス
    (撮影:鹿野勘次)
    写真 準備中
    美濃帯堆積岩類
    美濃帯は、飛騨外縁帯の南側にあってかなり幅広く分布する地質帯で、岐阜県内でも広範囲にわたる地域を占める。そこは、古生代石炭紀から中生代白亜紀最前期にかけての時期にチャート・石灰岩・砂岩・泥岩・礫岩などの海底に堆積した堆積岩類と海底に噴出した緑色岩(玄武岩質火山岩類)でおもに構成されている。下図に示すように、海洋プレートの上に噴出した玄武岩質火山岩類は海底や火山島(海山)を形成して、その上にチャートや石灰岩・珪質泥岩などを徐々に堆積させながら大陸へ向かって年間数cmほどの速さで移動していく。海洋プレートは海溝部で大陸の下へ沈み込んでいくが、堆積物はいっしょに沈み込むことができず、はぎ取られたり、大陸側から運び込まれた砂岩・泥岩などとともに大陸側へ押し付けられ、混じり合って複合体(コンプレックス)を作りあげていく。こうした作用を付加作用といい、それにより形成された堆積物は付加体堆積物と呼ばれ、これまでそれらを総称して「美濃帯中・古生層」、「美濃帯中生層」、「美濃帯堆積岩コンプレックス」などといろいろな表現で呼ばれてきたが、ここではこれらを「美濃帯堆積岩類」と呼ぶ。それらは、それまで順に重なっていた地層が付加作用にともなって低角の断層を境にして屋根瓦のように繰り返して覆うように重なったり、複雑に混じりあったメランジュと呼ばれる地質体を構成し、整然とした地層として順番に連続して重なるようなことがほとんどない。そのため全域にわたり個々の地層名を付して表現することがむずかしいため、ここでは構成岩石の種類(岩相)によって表現する。これらの構成岩石は単独でも複数の組合せでもある程度の大きさを持つ地質体を形成しており、その大きさはcmオーダーの礫からkmオーダーの岩体までさまざまである。これらは岩相、形成時期、形成過程などの類似性から複数の地質ユニットに区分され、ユニット間は衝上断層で接することが多いが、その区分による表現はここでは用いない。
    示準化石
    地質時代を特定できる化石のことで、標準化石ともいう。こうした化石となる条件には、個体数が多いこと、地理的な分布が広いこと、特定の形態をもった状態での生存期間が短いことなどが挙げられ、一般には同一系統内では分類単位が大きいほど特定できる時間の幅が長くなる。こうした化石が含まれることで、離れた地域の間で地層の対比と時間の同定が可能となり、「地層同定の法則」が成り立つ。



    地質年代