地名 根の上高原 ねのうえこうげん
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場所 中津川市/恵那市
指定等 県立自然公園/飛騨・美濃紅葉33選
概要    保古山(ほこやま;標高930m)を最高峰とする標高900mほどのなだらかな起伏を持つ高原である。灌漑用に3つの人造湖が設けられ、とくに「根の上湖」と「保古の湖」の周辺は紅葉の名所となっている。この高原が広がる山塊は、その北縁に沿ってほぼ東西方向に走る屏風山断層によりその南側が上昇したことで形成された上昇地塊であり、山塊と北側の中津川市街地周辺の低地との間にある急斜面がその断層崖にあたる。おもに苗木花崗岩伊奈川花崗岩がつくる山塊であり、その頂部をなす平坦面上に瀬戸層群土岐砂礫層が分布する。同層は北側の低地にも分布し、両地域での分布高度の差が屏風山断層による移動量(上昇量)を表している。
ジオ点描 【池田山と共通】 仮に5,000年に1回起こる断層運動で5mずれて高くなるとすると、100万年で1,000mの高さを生じる。これは1年に1mmの割合で連続して100万年間上昇し続けた場合とまったく同じになる。大地のきわめてわずかな変化はまったく気の付かないことであり、活動間隔が大きく開いた変化にもまったく遭遇しないまま推移していく。どちらも知らぬ間に大地の変化が起きてしまったことになる。
文献
  • 山田直利・小井土由光・原山 智・棚瀬充史・鹿野勘次・田辺元祥・曽根原崇文(2005)濃飛流紋岩の火山層序.地団研専報,53号,29-69頁.
  • 写真 根の上高原にある「保古の湖」(撮影時には水面が結氷していた)
    (撮影:小井土由光)
    写真 根の上高原にある「根の上湖」(撮影時には改修工事のため水が抜かれていた)
    (撮影:小井土由光)
    屏風山断層
    屏風山断層は、阿寺断層系の南東端にあたる中津川市馬籠(まごめ)付近から、それに直交する東北東~西南西方向に瑞浪市南西部にかけて全長約32kmにわたり延びる。断層の南側には屏風山(標高794m)を最高峰とする標高750mほどの屏風山山塊が続き、その北側の急斜面が断層崖に相当しており、この壁が大地に作られた巨大な屏風のように見えることからその名がある。屏風山山塊を隆起させる縦ずれ運動は、南側の山塊が北側へ乗り上げる逆断層として起こり、そのため断層は山塊側から崩れてくる堆積物の下に埋もれてしまい、断層自体は限られた地点でしか観察できない。観察できる場所では、断層面が水平面から約60°の傾斜角で南へ向かって傾いており、その上側にある基盤の伊奈川花崗岩が下側にある瀬戸層群の土岐砂礫層の上に乗り上げている。なお、横ずれ運動もしており、断層を横切る河川流路に折れ曲がりがみられる。
    苗木花崗岩
    中津川市苗木付近を中心に濃飛流紋岩の分布域の南部に広く分布し、中央部においても濃飛流紋岩の地下に広く伏在して分布する。濃飛流紋岩の少なくともNOHI-5までを貫き、NOHI-3、NOHI-4およびNOHI-5と火山-深成複合岩体を形成していると考えられている。塊状で、一部斑状の細粒~粗粒黒雲母花崗岩および角閃石含有黒雲母花崗岩からなり、放射線で黒~暗灰色になった石英を多く含み、脈状ないし晶洞状のペグマタイトに富むことを特徴とする。
    伊奈川花崗岩
    中部地方の領家帯を中心に美濃帯南部も含めてきわめて広い範囲に分布する巨大な花崗岩体であり、そのうち岐阜県内には濃飛流紋岩の南縁部においてそれとの接触部にあたる浅部相が広く分布し、多くの地域でNOHI-1およびNOHI-2を貫いており、それらと火山-深成複合岩体を形成していると考えられている。ただし、県南東縁の上村(かみむら)川流域では領家帯構成岩類の天竜峡花崗岩の周辺において三都橋花崗岩と呼ばれている深部相が分布するが、ここでは区別せずに扱っている。斑状あるいは塊状の粗粒角閃石黒雲母トーナル岩~花崗岩からなる。この花崗岩は、古典的な「地向斜-造山運動」論において造山帯中核部の地下深部で形成された花崗岩体の典型例と考えられていたが、1960年代に地表に噴出・堆積した濃飛流紋岩を貫いていることが発見され、地表近くのきわめて浅所までマグマとして上昇してきたことになり、それまでの火成活動史の考えを根底から覆えし、塗り替えることとなった。
    土岐砂礫層
    瀬戸層群の上部層を構成し、東濃地方の広大な東濃準平原を形成した河川が運び込んだ大量の礫により形成された砂礫層で、かなり広範囲にわたって分布する。層厚は数十~100mである。場所により礫種に差異があり、おもに濃飛流紋岩からなるタイプとおもに美濃帯堆積岩類のチャートからなるタイプがあるが、内部での層序や層相の関係はよくわかっていない。礫径は濃飛流紋岩で10cm前後、美濃帯堆積岩類で数~20cmであり、ほとんどが円磨度の進んだ円礫からなる。最大の特徴は、チャート礫を除いて、含まれている礫が風化してきわめて軟らかくなっていることであり、チャート礫だけが堅固なまま残されているため、それだけを含む礫層のように見える。
    瀬戸層群
    東海層群のうち濃尾平野の地下を含めて伊勢湾以東の地域に分布する地層群で、岐阜県地域では東濃地方に分布し、下部層をなす土岐口陶土層と上部層をなす土岐砂礫層からなる。この地域では火山灰層がほとんど含まれないことで、内部層序あるいは地層対比がむずかしく、近接した地域でも堆積物相互の関係が明確にできない。
    地質年代