地名 大窪沼 おおくぼぬま
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場所 白川村大窪
指定等 -
概要    合掌集落で有名な白川村荻町地区の西方に馬狩(まがり)谷と呼ばれている御母衣(みぼろ)断層に沿う細長い盆地状の地形が見られる。この馬狩谷を上流(南)へたどると、御母衣断層から西へ約1kmずれた位置にほぼ平行に南北約520m、東西約140mの細長い形をした谷が延び、そこに形成された湿原である。この谷の集水面積はきわめて狭いにもかかわらず、融雪期になるとミズバショウの群落が見られ、豊富な水の供給が示唆される。御母衣断層に平行に走る副断層がこの谷に沿って走っている可能性が高いこと、東側の小さな尾根が白川花崗岩類(鳩ヶ谷岩体)からなり、地表近くで砂状に風化してマサ化して多量の水を含みやすいことなどがおそらくその原因となっていると推察される。
ジオ点描 【白木峰湿原と共通】 水は“水物(みずもの)”であり、水の出所を正確に決めることはかなりむずかしい。湿原にもたらされる水がどこからもたらされるかはなかなか決めづらい。断層破砕帯や断層粘土に直接関わる地下水位で説明できる場面も多いが、正断層(すべり面)により形成される地すべり冠頂部などの陥没地形の場所に地表水を集めて湖沼が作られるようなこともある。
文献
  • 写真 白川村大窪にある大窪沼
    (撮影:小井土由光)
    写真 大窪沼において初春に咲き始めたミズバショウ
    (撮影:小井土由光)
    御母衣断層
    御母衣断層は、御母衣断層系の中心をなす断層で全長約24kmにわたり延びる。地形からみると左横ずれ断層で、西側が隆起する傾向にある。白川村木谷において庄川東岸にある河岸段丘面を横切っており、その西側(川側)を約3.4m隆起させて低断層崖を形成している。1990(平2)年にこの断層崖においてトレンチ調査が実施され、この断層が逆断層であり、7,700年前以降と約2,500年前以降の少なくとも2回にわたる断層活動の跡が確認された。後者には、約400年前の天正地震(1586年)をもたらした断層の活動が含まれることになるが、時間幅がかなり大きいために特定できるような年代値とはなっていない。とはいえ、全体として現在も活発に活動しており、地震を発生する危険度の高い活断層であることは明確となっている。
    白川花崗岩類(鳩ヶ谷岩体)
    庄川火山-深成複合岩体の花崗岩ユニットの一つをなし、庄川沿いの低地に一連の岩体として分布する。おおよそ南半部に分布する平瀬岩体は約2×4kmの規模で、北半部に分布する鳩ヶ谷岩体は約4×10kmの規模でそれぞれ分布する。平瀬岩体全域と鳩ヶ谷岩体の中央部は中~細粒あるいは中~粗粒の黒雲母花崗岩からなり、鳩ヶ谷岩体の西部はこれに角閃石が含まれるようになり、同岩体の北部は角閃石黒雲母花崗閃緑岩~トーナル岩からなる。コールドロン内ユニットを貫いて強い熱変成作用を与え、その貫入接触面は一般にかなり低角度であり、浅所へ迸入した岩体の天井部分が露出している。
    マサ化
    地下で固結した花崗岩が地表に露出したことで気温の変化により岩石の表面で膨張収縮をわずかながらでも繰り返し、岩石中の鉱物が互いに接している完晶質岩であるために膨張率の違いが鉱物単位で歪みを生じ、ばらばらにされて砂状に破壊されていく現象である。もともとは「真砂土(まさど・まさつち)」という園芸用土壌の用語として使われているが、それをもたらす風化作用に拡大して使われるようになっている。


    地質年代