地名 白木峰湿原 しらきみねしつげん
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場所 岐阜・富山県境 白木峰
指定等 -
概要    岐阜県のほぼ最北端にある白木峰(標高1,596m)から稜線沿いに東へ進んだところにある池塘(ちとう)群で、そこにはワタスゲやイワショウブなどの湿生植物群がみられる。池塘とは高層湿原の泥炭層にできる小規模な湖沼のことで、この場合にはすべて飛騨帯構成岩類の飛騨変成岩類からなる稜線付近に分布することから特別な水の供給源は考えにくく、活断層の牛首断層から離れた位置にあることも考慮すると、冬季の氷結と春の解凍などによって表土が崩された窪地に水がたまったものと考えられる。類似のものは小白木峰(標高1,436m)へかけての稜線付近にもみられる。
ジオ点描 【大窪沼と共通】 水は“水物(みずもの)”であり、水の出所を正確に決めることはかなりむずかしい。湿原にもたらされる水がどこからもたらされるかはなかなか決めづらい。断層破砕帯や断層粘土に直接関わる地下水位で説明できる場面も多いが、正断層(すべり面)により形成される地すべり冠頂部などの陥没地形の場所に地表水を集めて湖沼が作られるようなこともある。
文献
  • 写真 富山県境の白木峰山頂部における白木峰湿原の池塘
    (撮影:中田裕一)
    写真 準備中
    高層湿原
    湿った低温の土壌に形成され、枯死した植物の分解が進まないために泥炭として堆積している草原を湿原といい、周囲に対する高さにより低層・中間・高層湿原の3タイプに区分される。それらは構成植物や生態条件などの違いにより形成されていき、高層湿原は、低温で周囲からの流水が少なく、栄養塩類が少ないことで、ミズゴケなどの植物が泥炭化して中央部に高まりができる。
    飛騨帯構成岩類
    飛騨帯は、岐阜県の北部から北陸地方へかけての地域に広がる変成岩類と花崗岩類からなる地質帯である。ただし、これらの構成岩類がこの地域のどこにでも分布しているわけではなく、それ以降に形成された岩石類に覆われたり貫かれているために、実際にはかなり限られた地域にだけ分布する。変成岩類は総称して「飛騨片麻岩類」と呼ばれ、それらを形成した広域変成作用の時期についてはいくつかの見解があるが、おおよそ3億年~4億5000万年前(古生代石炭紀・シルル紀・デボン紀)と2億4000万年前ごろの少なくとも2回にわたり重複した変成作用で形成されたとされている。花崗岩類はこれまで「船津花崗岩類」と呼ばれ、1億8000万年前(中生代ジュラ紀)に飛騨外縁帯構成岩類の分布域にまで及ぶ範囲に一斉に貫入したことで飛騨片麻岩類に熱変成作用をもたらしたと考えられてきた。しかし、それらの中には古い年代を示す岩体もあり、一律に扱うことができないことがわかってきたため、それらの形成時期を少なくとも2期に分けて区別するようになった。変成岩類も花崗岩類も複数回におよぶ複雑な過程を経て形成されているために、すべての飛騨帯構成岩類を全域にわたって一定の基準で表現することはかなりむずかしいことから、ここではそれらを「飛騨変成岩類」、「飛騨花崗岩類」と呼び、それぞれを6種類と10種類の岩相に区分することで表現する。そのため1つの岩相で示される岩石の中にも別の変成・深成作用で形成された岩石が含まれている場合もある。

    牛首断層
    牛首断層は、富山県との県境に沿うように富山市大山町から岐阜県北西端の白川村まで北東~南西方向に約54kmにわたって延びる。断層の名前となった白川村の牛首谷や富山県側にある水無谷(みずなしだに)では、みごとな直線状の断層谷地形を見ることができる。断層沿いでは河川の屈曲や段丘堆積物のずれが各所に見られ、それらはすぐ南側にほぼ平行して走る大断層である跡津川断層に匹敵する規模をもつ右横ずれ断層であることを示している。しかし、1858(安政5)年の飛越地震による被害は牛首断層沿いではみられず、最近の飛騨地方における微小地震活動をみても牛首断層に沿ってはあまり起きていない。牛首谷の上流部など3地点で2002(平14)年~2003(平15)年に行なわれたトレンチ調査によると、断層の平均活動間隔はおおよそ5,000~7,100年であり、岐阜県下のほかの活断層にくらべて間隔が長い。最新の活動時期は11世紀以後、12世紀以前と推定されており、断層の西端においてそれに直行する方向の庄川流域に沿う御母衣(みぼろ)断層に関係したとされる天正地震(1586年)の際には動いておらず、それより数百年前に最新の活動があったことになる。牛首断層は、活発に活動する大断層を近隣にもちながらも、それらと対照的にほとんど活動していない大断層といえよう。

    地質年代