地名 山中峠湿原 やまなかとうげしつげん
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場所 高山市荘川町寺河戸(てらかわど)
指定等 岐阜県指定天然記念物(植物)
概要    山中峠(標高1375m)は庄川水系の最上流部と長良川支流の吉田川最上流部の分水嶺にあたっており、その北側の庄川源流部に広がっている湿原である。峠付近は烏帽子・鷲ヶ岳火山の噴出物で覆われており、そこに北北西~南南東方向に延びる三尾河(みおご)断層が走り、この湿原の真下を通過している。そのためこの湿原は断層活動によるくぼ地に水が湧き出て形成されていると考えてよい。この湿原にあるミズバショウ群落は日本における分布の南限として知られており、群生密度が高いことも含めて県の天然記念物に指定されている。
ジオ点描 【断層と湿原に共通】 断層は大地が破壊されている部分であり、水を通す地下水脈になりやすい。同時に、断層に沿って形成される断層粘土は水を通しにくくしており、地下水を堰き止める役割を果たしている。地形的低所で地下水脈が地表に達していたり、地下水が堰き止められて地下水位が上昇することで湧水がもたらされる。地下水の湧水位置は断層の存在を決める上での有力な手がかりとなる。
文献
  • 写真 荘川町寺河戸にある山中峠湿原のミズバショウ群落
    (撮影:中田裕一)
    写真 準備中
    烏帽子・鷲ヶ岳火山
    郡上市と高山市の境界にまたがり、南北約33km、東西約18kmの広範囲に広がる火山体であり、復元総体積は約66km³とされている。その中央部に南北に流れる一色川により大きく烏帽子岳(標高1625m)と鷲ヶ岳(標高1671m)の山体に分けられており、多くの谷により開析されているため、火山地形はほとんど残されていない。九頭竜火山列における他の火山が溶岩層を主体とする成層火山を形成しているのに対して、火砕流や岩屑なだれによる堆積物をともなう点がやや異なる。大規模な山体崩壊堆積物と水底堆積物を境に古期火山と新期火山に分けられており、前者はおもに山体の西部から北部にかけて分布し、阿多岐層を覆い、角閃石斑晶に富む安山岩質溶岩と同質の火砕流堆積物などからなる。後者はおもに山体の南部から東部にかけて分布し、前者に比べて角閃石斑晶の少ない安山岩類からなり、複数枚の溶岩層やblock and ash flow堆積物などで構成され、それらを覆う土石流堆積物などが山麓部に分布する。
    三尾河断層
    三尾河断層は、御母衣(みぼろ)断層系の南部において北西~南東方向に全長約18kmにわたって延びる。同じ御母衣断層系の御母衣断層や加須良(かずら)断層と同じように左横ずれ断層である。また、縦ずれ運動もしており、断層の南西側が隆起している。高山市荘川町寺河戸(てらこうど)において1990(平2)年に行われたトレンチ調査によれば、三尾河断層は7,100年前以前、6,300~4,400年前の間、840年前以後の3回にわたり活動しており、最新の活動は天正地震(1586年)を起こした活動にあたる可能性がある。この調査から、最近の活動間隔は3,600~6,300年とされ、約2,000~3,000年とされる跡津川断層や阿寺断層の活動間隔に比べ、三尾河断層のそれはやや長い。こうした繰り返し起こった断層活動により200mほどの幅で形成された断層破砕帯が荘川町三尾河のマトバ橋の下で見られる。



    地質年代