地名 川浦渓谷 かおれけいこく
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場所 関市板取(いたどり)川浦
指定等 飛騨・美濃紅葉33選
概要    奥美濃酸性岩類の「明石谷(あけしだに)岩体」を構成する川浦谷花崗岩を深く下刻して形成された渓谷で、高さ約30mの断崖にはさまれた渓流が全長約7kmにわたり回廊状に流れている。渓谷がこの花崗岩体の分布域にほぼ限られることから、花崗岩体の冷却にともない形成された方状節理と北西~南東方向に延びる断層に沿って浸食作用が進んだことで形成されたと考えられ、風化作用をあまり受けていない堅硬な岩体深部が露出していることも反映している。
ジオ点描    マグマが地下深部で固結した花崗岩は、いろいろな原因で地表に露出してしまったことで風化作用を受け、本来は堅硬な岩石がマサ化などにより脆弱な岩石となる。それだけでなく地下で圧力を受けていた状態から解放されるために、全体が膨張することで岩体中に割れ目が作られていく。方状節理の中にはこうした割れ目もあると考えられ、それらは脆弱部よりさらに深部の堅硬な部分にみられるはずである。
文献
  • 棚瀬充史・笠原芳雄・原山 智・小井土由光(2005)濃飛流紋岩周辺地域の後期白亜紀~古第三紀火山岩類.地団研専報,53号,159-171頁.
  • 写真 板取川浦における川浦渓谷の景観
    (撮影:小井土由光)
    写真 準備中
    奥美濃酸性岩類
    奥美濃酸性岩類は,岐阜県北西部の奥美濃地方から福井県東部の奥越地方にかけて分布する火山岩類およびそれに密接に付随する貫入岩類の総称である。火山岩類は、おもに流紋岩~流紋デイサイト質の溶結~非溶結凝灰岩からなり、流紋岩質の溶岩や凝灰角礫岩、デイサイト~安山岩質の溶岩や火砕岩のほか、一部で玄武岩質安山岩の溶岩や湖成堆積物をともなう。貫入岩類は、火山岩類と複合岩体を形成して個々の岩体の給源域を埋めるように、あるいはコールドロンの縁に沿って分布し、花崗岩、トーナル岩、花崗閃緑斑岩、石英斑岩などからなる。見かけ上、7つの岩体(洞戸(ほらど)・板取(いたどり)・明石谷(あけしだに)・面谷(おもだに)・入谷(にゅうだに)・八幡(はちまん)・柳島山(やなぎしまやま)岩体)に分かれて分布し、それぞれ独立した活動史をもつように見えるが、全体に火山体の深部が露出しており、洞戸・柳島山岩体は「洞戸コールドロン」と呼ばれる陥没体内に埋積した火山岩であり、板取岩体はコールドロンの外に溢流した火山岩であると考えられている。八幡岩体を構成する火山岩類は、東隣に分布する濃飛流紋岩のNOHI-3あるいはNOHI-4に相当していると考えられているため、『濃飛期火成岩類』の項目で扱う。
    川浦谷花崗岩
    奥美濃酸性岩類のうち、板取川上流域の川浦谷流域に沿って明石谷岩体の北部に長径約5km×短径約2.5kmの規模で北西~南東方向に伸張した形で岩株状岩体をなして分布するほか、明石谷岩体内にいくつかの小岩体として分布する。優白質で斑状組織をもつ中粒角閃石黒雲母花崗岩からなり、しばしば細粒花崗岩に移化する。この岩体を深く削りこんだ川浦谷では川浦渓谷として景勝地となっている。明石谷岩体を構成する明石谷火山岩類とともに火山-深成複合岩体を形成していると考えられているが、詳細は不明である。
    方状節理
    花崗岩は規模の大きなマグマ溜りが地下に長い時間にわたりとどまり、きわめてゆっくり冷却していく。冷却にともない体積が収縮することで、大きな直方体の箱を積み重ねたように形成される規則的な割れ目のことで、一般にはその間隔は数~数十mと幅広いものとなる。
    マサ化
    地下で固結した花崗岩が地表に露出したことで気温の変化により岩石の表面で膨張収縮をわずかながらでも繰り返し、岩石中の鉱物が互いに接している完晶質岩であるために膨張率の違いが鉱物単位で歪みを生じ、ばらばらにされて砂状に破壊されていく現象である。もともとは「真砂土(まさど・まさつち)」という園芸用土壌の用語として使われているが、それをもたらす風化作用に拡大して使われるようになっている。

    地質年代