地名 片知渓谷 かたじけいこく
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場所 美濃市片知
指定等 県立自然公園/県名水50選
概要    片知川は瓢ヶ岳(ふくべがたけ;標高1,163m)に源を発し、長良川支流の板取川に合流する全長6km足らずの河川である。その上流部には、7つの岩体に分かれて分布している奥美濃酸性岩類のうち最南部にある「洞戸(ほらど)岩体」を構成する片知山層が分布しており、そこを下刻した渓谷である。片知山層はおもに堅硬な溶結凝灰岩からなり、それらが作り出す“夫婦滝”などの大小多数の滝や“千畳岩”などの巨岩・奇岩を配して、春には新緑、秋には紅葉などの渓谷美が提供され、それらが約2kmの遊歩道に沿って楽しめる。
ジオ点描 【宇津江四十八滝と共通】 削剥への抵抗力がかなり異なる地質体で構成されていると滝が形成される上では好都合である。それに対して抵抗力に差があまりない地質体の中では、高低差で河谷が流れ下ることで削られていくから、そこにはほぼ垂直に落ちるような瀑布は生まれにくい。やや傾斜が強い渓流といった方がよい例もあり、似たような景観は谷の上流部へ行けばどこでも見られるほどである。
文献
  • 棚瀬充史・笠原芳雄・原山 智・小井土由光(2005)濃飛流紋岩周辺地域の後期白亜紀~古第三紀火山岩類.地団研専報,53号,159-171頁.
  • 写真 美濃市片知の片知川沿いにある片知渓谷の千畳岩と岳水橋
    (撮影:小井土由光)
    写真 準備中
    奥美濃酸性岩類
    奥美濃酸性岩類は,岐阜県北西部の奥美濃地方から福井県東部の奥越地方にかけて分布する火山岩類およびそれに密接に付随する貫入岩類の総称である。火山岩類は、おもに流紋岩~流紋デイサイト質の溶結~非溶結凝灰岩からなり、流紋岩質の溶岩や凝灰角礫岩、デイサイト~安山岩質の溶岩や火砕岩のほか、一部で玄武岩質安山岩の溶岩や湖成堆積物をともなう。貫入岩類は、火山岩類と複合岩体を形成して個々の岩体の給源域を埋めるように、あるいはコールドロンの縁に沿って分布し、花崗岩、トーナル岩、花崗閃緑斑岩、石英斑岩などからなる。見かけ上、7つの岩体(洞戸(ほらど)・板取(いたどり)・明石谷(あけしだに)・面谷(おもだに)・入谷(にゅうだに)・八幡(はちまん)・柳島山(やなぎしまやま)岩体)に分かれて分布し、それぞれ独立した活動史をもつように見えるが、全体に火山体の深部が露出しており、洞戸・柳島山岩体は「洞戸コールドロン」と呼ばれる陥没体内に埋積した火山岩であり、板取岩体はコールドロンの外に溢流した火山岩であると考えられている。八幡岩体を構成する火山岩類は、東隣に分布する濃飛流紋岩のNOHI-3あるいはNOHI-4に相当していると考えられているため、『濃飛期火成岩類』の項目で扱う。
    片知山層
    奥美濃酸性岩類のうち、板取川下流域の東側一帯に約10km×5kmの規模で北西~南東方向に伸びた形をなして分布する洞戸岩体(洞戸コールドロン)を構成する火山岩類の一つであり、層厚650m以上で高賀山層を覆う。おもに流紋岩質の溶結凝灰岩からなり、その下位に礫岩や凝灰質砂岩、軽石凝灰岩、デイサイト質溶岩などをともなう。
    溶結凝灰岩
    火砕流によりもたらされた堆積物が溶結作用を受けると、その程度により強溶結、弱溶結、非溶結凝灰岩となり、一般には強溶結凝灰岩をさしていう。おもに火山灰が集まって形成された岩石ではあるが、強く圧密化した岩石となり、きわめて堅硬な岩石となる。


    地質年代