災害名 白山火山1659年噴火(災害) -
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発生年月日 1659(万冶2)年
主要被災地 山頂付近
災害要因 噴火内容(降下火砕物(ペレーの毛))/噴火地点(山頂 紺屋ヶ池火口?)
概要    白山火山において歴史時代になってからの噴火記録は10回ほどあり、1042(長久3)年、1239(延応元)年、1547(天文16)年に噴火記録があったようであるが、最初の確実な噴火記録は1554(天文23)年のもので、小規模な火砕流が翠ヶ池(みどりがいけ)火口から噴出し、それにともなわれる大小さまざまなパン皮状火山弾などがその周囲に散在している。1579(天正7)年、1640(寛永17)年にそれぞれ降下火砕物の噴出があったようであるが、詳細は不明である。最新の活動は1659(万冶2)年の噴火で、“馬の毛”が降ったとの記録があり、これは現在のペレーの毛を指しているようであるが、大きな被害をもたらしたものではなかった。この噴火を最後に静穏な状態が続いているが、2005年以降に6回にわたり山頂直下で群発地震の活動がみられ、火山体直下での何らかの応力状態の変化があるようで、長期的には噴火の前兆である可能性も指摘されている。
ジオ点描    火山災害に関わる記録は、地震災害の場合と同様に発生時期が古くなるほど残されにくくなり、記述されている内容も不正確になる。とりわけ火山活動は山頂付近などの限られた場所で発生することが多いため、人目に触れる機会が限られる傾向にある。だだ火山噴火ではその痕跡にあたる噴出物などが残されていることが多く、その点は地震活動そのものの痕跡が残らない地震災害と異なる。
文献
  • 産業技術総合研究所HP(2013)日本の火山データベース.
  • 気象庁 Web掲載版(2013)日本活火山総覧(第4版).
  • 平松良浩・和田博夫(2008)白山の火山活動と2005年群発地震.月刊地球,30巻,423-430頁.
  • 写真 白山山頂部の景観(手前:翠ヶ池,左峰:剣ヶ峰,右奥峰:御前峰)
    (撮影:鹿野勘次)
    写真 翠ヶ池火口の西方に散在しているパン皮状火山弾
    (撮影:鹿野勘次)
    白山火山
    最高峰の御前峰(ごぜんがみね)(標高2702m)と剣ヶ峰(標高2677m)、大汝峰(おおなんじみね)(標高2684m)をあわせて「白山三峰」といい、それらを中心とする安山岩質の溶岩、火砕流堆積物などからなる火山体である。ただし、山頂部付近でも標高2400m付近まで基盤岩類が分布しており、それらの上にきわめて薄く噴出物が覆っているに過ぎない。加賀室火山(約42万~32万年前)、古白山火山(約13万~6万年前)、新白山火山(約4万年前以降)の3つの活動時期に分けられるが、前二者は現在の主峰から離れた周囲の尾根上に残っているだけで、ほとんどが削剥されてしまっている。とりわけ古白山火山は、現在の大汝峰の北側にあたる石川県側の地獄谷付近にあたる位置に標高3000mに達する山頂をもつ成層火山体を形成していたと考えられている。新白山火山は現在の主峰を中心とした火山体を形成しており、岐阜県側では、約4400年前に山頂付近の東側が大規模に崩落したことで馬蹄形の凹地が形成され、その崩落で発生した岩屑なだれによる堆積物が大白川岩屑流堆積物を形成し、約2200年前には山頂部付近から溶岩が東方へ流下して白水滝溶岩を形成し、その末端付近に白水滝がある。最新の活動については事項解説『災害』の項目「白山火山噴火」を参照のこと。
    火砕流
    火山噴火において噴煙と同じものが溶岩のように地面に沿って流れる現象である。噴煙の中には火山灰(ガラス片)のほかにマグマのかけらに相当する軽石や噴火の際に取り込まれる既存の岩石などが入っており、それらの固体をまとめて火山砕屑物といい、それらが火山ガス(ほとんど水蒸気)と混ざった状態で地表面に沿って流れる現象である。これによってもたらされた堆積物を火砕流堆積物という。火砕流はきわめて流動性に富む状態で運ばれるために、高温状態のまま高速で運ばれることになり、溶岩流などの噴火現象に比べるとはるかに危険な現象と理解しておかなければならない。
    ペレーの毛
    爆発的な火山噴火によりマグマ(液体)が糸状に引き伸ばされた状態で急冷固化した細長いガラス片のことで、粘性の低い玄武岩質マグマの噴出において特徴的に見られる。



    地質年代