施設名 安房トンネル あぼうとんねる
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場所 高山市奥飛騨温泉郷平湯~長野県松本市安曇中の湯(あずみなかのゆ)
形式 -
規模 全長4,370m
設置者 (株)中日本高速道路
完成年 1997(平9)年
概要    高山市と長野県松本市を結ぶ国道158号が通る県境の安房峠(標高1,790m)は、交通の要所でありながら行楽シーズンにはかなり深刻な交通渋滞がおこり、冬季には積雪により通行止めとなる難所として知られていた。その難所解消を目的に高規格幹線道路「中部縦貫自動車道」の一部として峠の真下を貫いたトンネルである。その工事は1983(昭58)年から始められ、12年かけて掘られた。このトンネルは焼岳火山群の1つであるアカンダナ火山の一角を貫いており、活火山の内部を通るトンネルという特徴をもつ。実際に湧水や高温熱水に阻まれながらの掘削工事であったが、幸いにもトンネル掘削中には火山活動にかかわるようなトラブルは起こらなかった。しかし、完成直前の1995(平7)年2月11日に長野県側の取付け道路工事現場で水蒸気爆発が起こり、4名の犠牲者が出た。それは焼岳火山群の火山活動の一端に接近して、かなり危険な状況下でトンネル掘削が行なわれたことを示していると考えてよい。これによりトンネルを含む安房峠道路の供用はさらに2年後となった。
ジオ点描    現在のトンネル掘削技術からすればどのような地質体も容易にトンネルを貫くことができそうであるが、火山体ではそれほど簡単ではなく、いくつかの問題がつきまとう。いろいろな性質の岩石がかなり不規則に分布していること、それにともなって地下水脈の分布がかなり変化に富むこと、さらに活火山であればそれらに“熱”あるいは“熱水”の問題が加わる。
写真 安房トンネルの掘削中に湧出した温泉
(撮影:下畑五夫)
写真 安房トンネルの平湯側掘削坑道入口
(撮影:下畑五夫)
焼岳火山群
飛騨山脈の南部にあって、焼岳火山を主峰とする複数の火山体の集まりであり、乗鞍火山帯の中で最近1万年間では最も活発な活動を続けている。形成時期により約12万~7万年前の旧期焼岳火山群と約3万年前以降の新期焼岳火山群に大別され、前者には岩坪山・大棚火山、割谷山火山が、後者には白谷山火山、アカンダナ火山、焼岳火山がそれぞれ該当する。全体に斜長石と角閃石の斑晶が目立つ安山岩質~デイサイト質の溶岩ドーム、厚い溶岩流、泥流堆積物、火砕流堆積物からなり、火砕流堆積物はすべて溶岩ドームの破壊によってできたblock and ash flow堆積物であり、激しい爆発的な噴火活動をほとんど行なっていない。
アカンダナ火山
焼岳火山群の最南端にあり、白谷山火山の南側に噴出し、アカンダナ山(標高2109m)を中心として新期焼岳火山群に属する火山体である。溶岩ドーム、溶岩、火砕岩類からなる。火山体のうち、頂上部を含めた岐阜県側で地すべり崩壊した崖がみられる。形成時期が約1万年前とされたことで、新たに定められた活火山の仲間入りをした火山でもある。



地質年代