施設名 猪臥山トンネル いぶしやまとんねる
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場所 高山市清見町彦谷~飛騨市古川町畦畑(うねばた)
形式 -
規模 全長4,475m
設置者 岐阜県
完成年 2002(平14)年
概要    東海北陸自動車道の飛騨清見ICがある高山市清見町夏厩(なつまや)から飛騨市古川町へ向かう道路は、かつては小鳥(おどり)川沿いに下って飛騨市河合町の南部へ向かい、そこからソウツイ谷を東へさかのぼり、猪臥山(標高1,519m)の2kmほど北方にある小鳥峠(標高1,119m)を越えてから畦畑を経て飛騨古川にたどり着く。このルートのうち畦畑までをほぼ直線的に結ぶために猪臥山の直下に掘られたトンネルである。2000(平12)年10月に飛騨清見ICが供用されたことを受けて2002(平14)年7月に林道畦畑彦谷線の一部として開通し、それにより移動時間が30分ほど短縮された。さらに同年12月には県道90号古川清見線(通称「飛騨卯の花街道」)として昇格したことにともない、このトンネルは都道府県道として日本最長となった。すべて濃飛流紋岩のNOHI-3に属する下呂火山灰流シートおよび花崗閃緑斑岩Ⅱという堅硬な岩盤中を貫いている。畦畑側から入ると、入口の左カーブを過ぎて直線になった途端に、対向車がいないとはるかかなたに出口の光が点として見え、それが徐々に大きくなっていく印象的な走行が楽しめる。
ジオ点描    現在のトンネル掘削技術からすると軟弱地盤よりはかえって堅硬な岩盤の方が容易に掘削が進むようであり、大規模なトンネル掘削では硬さよりも崩壊しないことの方が重要のようである。実際に濃飛流紋岩の溶結凝灰岩を岩石カッターで切断するときわめて硬いことが実感され、猪臥山トンネルではかなり堅硬な岩盤であったであろうから、それだけスムースに掘削がなされたのであろう。
写真 猪伏山トンネルの清見町彦谷側入口
(撮影:小井土由光)
写真 準備中
濃飛流紋岩
濃飛流紋岩は、岐阜県の南東端にあたる恵那山(標高2191m)付近から北部の飛騨市古川町付近へかけて、幅約35km、延長約100kmにわたり北西~南東方向にのび、岐阜県の約1/4の面積を占める巨大な岩体である。この岩体を構成する岩石のほとんどは、火砕流として流れ出た火山砕屑物がたまって形成された火砕流堆積物からなり、しかもその大部分は堅硬に固結した溶結凝灰岩になっており、厚さ数百mで、水平方向へ20~60kmの広がりをもち、岩相・岩質が類似した火山灰流シートとして何枚にもわたって重なりあっている。それらは大きく6つの活動期(NOHI-1~NOHI-6)に区分されており、岐阜県内にはNOHI-6だけが分布しない。これらの火山岩類には花崗岩類が密接にともなわれ、それらを含めて大きく2期(第1期火成岩類・第2期火成岩類)に分けられる火山-深成複合岩体を形成している。第1期の活動は白亜紀後期の約8,500万~8,000万年前にあり、NOHI-1とNOHI-2の活動と引き続く花崗岩類の活動があった。第2期の活動は約7,500万~6,800万年前にあり、NOHI-3~NOHI-5(おそらくNOHI-6)の活動と引き続く花崗岩類の活動があった。これらは活動の場所を南部から北部へと移しながら巨大な火山岩体を作り上げた。
下呂火山灰流シート
濃飛流紋岩の岩体南縁部を除くほぼ全域にわたり分布し、NOHI-3の主体をなすとともに濃飛流紋岩の中で最大規模の火山灰流シートであり、最大層厚は1,000m以上もある。下部で流紋岩質の、上部で流紋デイサイト質の溶結凝灰岩からなり、岩体北部ではそのさらに上部に流紋岩質の溶結凝灰岩をともなう。これらの岩相間の関係は漸移的であり、場所によっては繰り返して出現することもある。流紋岩質の溶結凝灰岩は、径4~6mmの粗粒の斜長石・石英・カリ長石を多量に含み、苦鉄質鉱物として黒雲母・角閃石・不透明鉱物をを含む。長径数~十数cmの大型の本質岩片を多量に含む。流紋デイサイト質の溶結凝灰岩は、径3~5mmの粗粒の斜長石・石英を多く含み、苦鉄質鉱物として黒雲母・角閃石・輝石・不透明鉱物を比較的多く含む。いずれの溶結凝灰岩も長径10cmを超える大型の本質岩片を多量に含み、その中に径1cmを超える粗粒斜長石斑晶を多量に含むことを特徴とする。上部の流紋岩質溶結凝灰岩は下部のものに比べて本質岩片が径1cmほどと小型になる。
花崗閃緑斑岩Ⅱ
濃飛流紋岩の岩体南縁部を除くほぼ全域に径1~15㎞の不規則な外形を持つ岩株状の岩体として各地域に広く分布する。岐阜県内に分布する岩体としては、切井(きりい)・岩山・洞山・岩瀬・萩原・黒石谷・オコズリ谷・栃原谷・ソクボ谷・西洞・大沢山・清見(きよみ)の各岩体がある。これらの岩体と濃飛流紋岩との貫入関係はさまざまであるが、NOHI-5およびNOHI-6を貫く岩体はなく、NOHI-4の定置後、NOHI-5の定置以前に貫入したものと考えられている。岩相の特徴は、濃飛流紋岩のNOHI-1およびNOHI-2を貫く花崗閃緑斑岩Ⅰとほぼ同じであり、長径2~3㎝の斜長石やカリ長石の大きな斑晶をともなう花崗閃緑岩質の岩石からなり、微花崗岩質組織あるいは微文象構造の石基からなる。また、細粒周縁相をほとんどともなわず、周囲の濃飛流紋岩に対しても熱変成作用を与えていない。
溶結凝灰岩
火砕流によりもたらされた堆積物が溶結作用を受けると、その程度により強溶結、弱溶結、非溶結凝灰岩となり、一般には強溶結凝灰岩をさしていう。おもに火山灰が集まって形成された岩石ではあるが、強く圧密化した岩石となり、きわめて堅硬な岩石となる。

地質年代