安房トンネル
国道158号の安房峠は交通の要所でありながら難所であったため、トンネルで貫く工事が1983(昭58)年から始められ、12年かけて掘られた。このトンネルの特徴は焼岳火山群の1つであるアカンダナ火山の一角を貫いていることであり、湧水や高温熱水に阻まれながらの掘削工事であった。幸いにもトンネル掘削中は火山活動にかかわるような事故は起こらなかったが、完成直前に長野県側の取付け道路工事現場で水蒸気爆発が起こり、4名の犠牲者が出た。焼岳火山群の火山活動の一端に接近して、かなり危険な状況下でトンネル掘削が行なわれたと考えてよい。
油坂峠道路
郡上市と福井県大野市の境にある油坂峠(標高780m)へ向けて岐阜県側から標高差約420mの急勾配をループ状の高架橋とトンネルを組み合わせることで勾配を緩和しながら登坂していく道路である。高規格幹線道路である中部縦貫自動車道の一部となっており、白鳥町の街を高架橋で跨いで東海北陸自動車道とつながっている。峠への登坂部分はすべて美濃帯堆積岩類の上あるいは中を通っている。峠への道で旅人がだらだらと油汗をかいたことからこの名があるとの説があり、この急勾配は八幡断層の断層崖に相当し、その西側が上昇隆起する運動で形成されたものである。八幡断層はこの道路を横切っている。
濃飛流紋岩
濃飛流紋岩は、岐阜県の南東端にあたる恵那山(標高2191m)付近から北部の飛騨市古川町付近へかけて、幅約35km、延長約100kmにわたり北西~南東方向にのび、岐阜県の約1/4の面積を占める巨大な岩体である。この岩体を構成する岩石のほとんどは、火砕流として流れ出た火山砕屑物がたまって形成された火砕流堆積物からなり、しかもその大部分は堅硬に固結した溶結凝灰岩になっており、厚さ数百mで、水平方向へ20~60kmの広がりをもち、岩相・岩質が類似した火山灰流シートとして何枚にもわたって重なりあっている。それらは大きく6つの活動期(NOHI-1~NOHI-6)に区分されており、岐阜県内にはNOHI-6だけが分布しない。これらの火山岩類には花崗岩類が密接にともなわれ、それらを含めて大きく2期(第1期火成岩類・第2期火成岩類)に分けられる火山-深成複合岩体を形成している。第1期の活動は白亜紀後期の約8,500万~8,000万年前にあり、NOHI-1とNOHI-2の活動と引き続く花崗岩類の活動があった。第2期の活動は約7,500万~6,800万年前にあり、NOHI-3~NOHI-5(おそらくNOHI-6)の活動と引き続く花崗岩類の活動があった。これらは活動の場所を南部から北部へと移しながら巨大な火山岩体を作り上げた。
下呂火山灰流シート
濃飛流紋岩の岩体南縁部を除くほぼ全域にわたり分布し、NOHI-3の主体をなすとともに濃飛流紋岩の中で最大規模の火山灰流シートであり、最大層厚は1,000m以上もある。下部で流紋岩質の、上部で流紋デイサイト質の溶結凝灰岩からなり、岩体北部ではそのさらに上部に流紋岩質の溶結凝灰岩をともなう。これらの岩相間の関係は漸移的であり、場所によっては繰り返して出現することもある。流紋岩質の溶結凝灰岩は、径4~6mmの粗粒の斜長石・石英・カリ長石を多量に含み、苦鉄質鉱物として黒雲母・角閃石・不透明鉱物をを含む。長径数~十数cmの大型の本質岩片を多量に含む。流紋デイサイト質の溶結凝灰岩は、径3~5mmの粗粒の斜長石・石英を多く含み、苦鉄質鉱物として黒雲母・角閃石・輝石・不透明鉱物を比較的多く含む。いずれの溶結凝灰岩も長径10cmを超える大型の本質岩片を多量に含み、その中に径1cmを超える粗粒斜長石斑晶を多量に含むことを特徴とする。上部の流紋岩質溶結凝灰岩は下部のものに比べて本質岩片が径1cmほどと小型になる。
花崗斑岩
濃飛流紋岩のほぼ岩体全域および岩体周辺の美濃帯堆積岩類の分布地域にわたり小規模な岩脈として分布し、しばしば平行岩脈群をつくる。岐阜県内に分布する代表的なものだけを挙げてると、上之保(かみのほ)-鹿山(かやま)平行岩脈群・東沓部(ひがしくつべ)岩脈群・初納(しょのう)岩脈群・日出雲(ひずも)岩脈群・中之宿岩脈・青屋弧状岩脈のほかに釜戸・大洞谷・門坂(かどさか)・三間山(さんげんやま)・宇津江(うつえ)・黒内の各岩体がある。全体として濃飛流紋岩のどの層準よりも新しい時期に貫入し、濃飛流紋岩を貫く苗木花崗岩などの花崗岩類中にはまったく分布しないことから、花崗岩類の定置以前に貫入したと考えられている。岩相は全体を通じてほとんど一定しており、灰白色の石基中に石英・カリ長石・斜長石・黒雲母およびまれに角閃石の自形斑晶を含む。カリ長石や斜長石の斑晶は長径1~3㎝である。周縁相として斑晶がやや小型化し、石基が隠微晶質となる石英斑岩質を示すものがみられる。
三尾断層
三尾断層は、高山市国府町瓜巣(うりす)付近から清見(きよみ)町三尾を経て、国道158号の通る小鳥(おどり)峠付近まで東北東~西南西方向に走り、そこから北東~南西方向に向きを変えて滝ヶ洞山(標高1249m)の南側を通り、清見町隣野付近まで延びる全長17~18kmの右横ずれ断層である。すぐ南東隣をほぼ平行して走る牧ヶ洞断層や同じく北西側を走る夏厩(なつまや)断層などとともに「国府断層帯」と呼ばれる断層群をなし、各所で河谷や尾根の右ずれ屈曲を示す。
地質年代