施設名 タラガトンネル たらがとんねる
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場所 関市(いたどり)~郡上市八幡町那比(なび)
形式 -
規模 全長4,571m
設置者 国土交通省中部地方整備局
完成年 2007(平19)年
概要    国道256号は岐阜市と長野県飯田市を結んでおり、途中に飛騨川流域と馬瀬川流域を直線的に結ぶささゆりトンネルのようにバイパスとして幹線道路となっている部分もあるが、とてもそのようにはなっていない山道あるいは農道と思われるような経路もかなりみられ、岐阜県の中央部をかなり無理してつないでいるとの印象をもつ道路である。これも国道の役割であろう。その中で郡上市八幡町相生(あいおい)と関市板取の間は、郡上側も板取側もともにタラガ谷と呼ばれる谷沿いを昇り降りする道路で、幅員が狭く冬期閉鎖となる区間であった。そのためそのバイパスとして2000(平12)年からトンネルで貫く工事が始まり、4,500mを越える長大トンネルを5年かけて貫通させた。すべて美濃帯堆積岩類の中を貫いており、国道トンネルとしてはささゆりトンネルに次いで県内第2位の長さである。
ジオ点描    岐阜県内にはタラガ谷沿いの旧国道256号のようにつづら折の峠道がかなりある。こうした峠道は地質環境とほぼ無関係に登坂勾配を少なくするために当初は敷設されたものであるが、それらは車社会においてはかえって障害となり、解消されなければならない敷設物となる。そのためにはすべて長大トンネルで貫くなり、橋梁をかけることになり、今後もそうした事例は増えていくものと思われる。
写真 関市板取側のトンネル入口
(撮影:棚瀬充史)
写真 タラガトンネルの八幡側入口と旧峠道との分岐
(撮影:小井土由光)
美濃帯堆積岩類
美濃帯は、飛騨外縁帯の南側にあってかなり幅広く分布する地質帯で、岐阜県内でも広範囲にわたる地域を占める。そこは、古生代石炭紀から中生代白亜紀最前期にかけての時期にチャート・石灰岩・砂岩・泥岩・礫岩などの海底に堆積した堆積岩類と海底に噴出した緑色岩(玄武岩質火山岩類)でおもに構成されている。下図に示すように、海洋プレートの上に噴出した玄武岩質火山岩類は海底や火山島(海山)を形成して、その上にチャートや石灰岩・珪質泥岩などを徐々に堆積させながら大陸へ向かって年間数cmほどの速さで移動していく。海洋プレートは海溝部で大陸の下へ沈み込んでいくが、堆積物はいっしょに沈み込むことができず、はぎ取られたり、大陸側から運び込まれた砂岩・泥岩などとともに大陸側へ押し付けられ、混じり合って複合体(コンプレックス)を作りあげていく。こうした作用を付加作用といい、それにより形成された堆積物は付加体堆積物と呼ばれ、これまでそれらを総称して「美濃帯中・古生層」、「美濃帯中生層」、「美濃帯堆積岩コンプレックス」などといろいろな表現で呼ばれてきたが、ここではこれらを「美濃帯堆積岩類」と呼ぶ。それらは、それまで順に重なっていた地層が付加作用にともなって低角の断層を境にして屋根瓦のように繰り返して覆うように重なったり、複雑に混じりあったメランジュと呼ばれる地質体を構成し、整然とした地層として順番に連続して重なるようなことがほとんどない。そのため全域にわたり個々の地層名を付して表現することがむずかしいため、ここでは構成岩石の種類(岩相)によって表現する。これらの構成岩石は単独でも複数の組合せでもある程度の大きさを持つ地質体を形成しており、その大きさはcmオーダーの礫からkmオーダーの岩体までさまざまである。これらは岩相、形成時期、形成過程などの類似性から複数の地質ユニットに区分され、ユニット間は衝上断層で接することが多いが、その区分による表現はここでは用いない。
ささゆりトンネル
東海北陸自動車道の郡上八幡IC(郡上市)から下呂市を経て中央自動車道の中津川IC(中津川市)に至る延長約80kmの地域高規格道路「濃飛横断自動車道」が計画されており、その一部として最初に供用された区間にあるトンネルである。飛騨川流域と馬瀬川流域を直線的につなげる役割をもち、国道トンネルとして県内最長で、国道256号のバイパス道路になっている。トンネルのほぼすべてが濃飛流紋岩のNOHI-4に属する高樽(たかだる)火山灰流シート内を貫いており、顕著な活断層の分布も確認されていないことから、かなり堅硬な岩盤中を貫いていると考えてよい。トンネルの名称は、建設工事中は「金山下呂トンネル」と仮称されていたが、供用とともにトンネルの上を越えている「ささゆり峠」に因んで命名されている。



地質年代